1) 世間の噂
1 Every day I hear a different story
(直訳)毎日私は別の話を聞きます。
まず、この文の主語は、この歌の主人公である「彼」です。この彼自身が、「I」という一人称で、この物語をスタートします。
Hear は通常「聞く」という日本語訳が当てられますが、厳密には「聞こえる」が正しい訳となります。こちらから能動的に耳を傾けて聞こうとするのではなく、耳に入ってくる、というのがHearです。ProactiveではなくReactiveな知覚動詞です。ちなみに、能動的に聞く場合は Listenを使います。ここではHearが使われており、かつその後の展開から、「嫌でも耳に入ってくる」感じです。
Storyの訳は、「話」です。真偽は問いません。FactでもFictionでも使えます。ここで彼の耳に入ってくるのは、その後の文脈から、噂ばなしになります。
以上から、この文の和訳は以下のようになります。
「毎日別の噂ばなしを聞かされるんだ」
2 People saying that you're no good for me
(直訳)「君は僕にとってよくない」と人々が言っている(のを僕は聞かされる)
文頭でI hearが省略されています。前文の中でI hear と書かれており、その続きなので、繰り返す煩わしさを避けています。省略を補って完全な文にすると以下の通りです。
I hear people saying that you're no good for me
これは、第5文型(SVOC)の文で、Vは知覚動詞です。この場合、「Sは、OがCするのをVする」なので、「私は、人々が、あなたは私にとってよくないと言っているのを耳にする」という意味になります。
No goodについてですが、NoはNotよりも強い否定を表します。ここでNotを用いてYou are not good for me. とすると、「君は僕にとってよくない」という、淡々とした事実の描写となります。一方で、Noが使われるとどうなるか。このNoは、「全然ダメ」という強い否定のニュアンスが出ます。「君は僕に全然ふさわしくない」という感じです。ここで、これは彼の友達によるおせっかいな忠告の言葉なので、そのニュアンスを出すと、「あの子は絶対やめておいた方がいい」となります。
主語のPeopleは、人一般、不特定の多くの人を指しているので、「みんな」という日本語が適切です。
以上を総合すると、試訳は以下のようになります。
「あの子は絶対やめとけ」とみんな言うんだ
3 Saw your lover with another
(直訳)あなたの恋人が別の人と一緒にいるのを見た
これ、いきなり動詞の過去形で始まっていますね。文字を見ずに音だけ聞いていると、文頭に来る単語なのでSo(だから)と聞こえてしまいます。ここはSoではなくてSawであることがわかると、文頭にI が省略されていることがわかります。省略を補うと、以下の通りとなります。
I saw your lover with another
このIは一体誰でしょうか?これはPeopleの中の一人です。前の文の続きで容易に連想されます。
Your loverは直訳すると「あなたの恋人」となりますが、Loveは日本語では「大好き」くらいの軽い意味で使われることがほとんどです。よってここは、「お前の彼女」くらいが適切のように思います。
With anotherについでですが、anotherの後にboyが省略されています。これは文脈から補うことが可能です。
なお、この文は直接話法なので、“ ”を補って解釈する必要があります。
以上を整理し、省略を補うと、この文は以下のようになります。
“I saw your lover with another boy.”
これを試訳すると、以下の通りです。
「お前の彼女が別の男と一緒にいるのを見たよ」
4 She's making a fool of you
(直訳)彼女はあなたを笑いものにしている。
これは③の直接話法の続きです。よって、“”を補うと、“She's making a fool of you”となります。
Make a fool of~ は、「人が見ている前で~を笑いものにする」というイディオムです。Sheが主語、目的語がYouなので、「彼女がお前を笑いものにしている」が直訳です。
ただ、ここでは、彼女のせいで笑いものになっている彼に主眼が置かれています。彼女が別の男と一緒にいるのは、彼女が「浮気している」という証拠であり、そんな彼女を「自分の彼女だ」と言っていることで、彼はみんなに笑いものにされている、というのが、ここでの台詞の真意です。
よって、この文は以下のように訳してみました。
「お前、みんなの笑いものになってるよ」