地上での人生を終え
いのちの源へと還って行ったSさん
人生は
TVのスイッチをプツンと切った時のように
一瞬でジ・エンドになっちゃうものなのね
あまりに突然で
あまりにあっけないから
ああ、地上での人生って
やっぱり夢なのか…
という思いがふつふつと湧いてくる
私たちの日常にいた人が
ある日突然フッといなくなってしまう
それは
あり得ない出来事だったはず...
なのに
彼女のいない日常が
当たり前になっていく不思議さ
何だか時の流れが早送りになっていない?
駅の人ごみの中で
近所のスーパーで
Sさんが何度となく通ったであろう道を
歩きながら
当たり前に毎日が
繰り返される気がしていても
いつまでもこの日常が続く気がしていても
自らの筋書きを演じ切ったら
自分もまたこの地上を離れていく
それだけは唯一確実な未来
自分がこうして肉体を持って
存在していること
物質世界で生活していること
その不思議さを
Sさんが亡くなった今
あらためて噛みしめている
じっとわたしを見つめるSさんの
細く弓状に描かれた眉
その下にある曇った小さな目は
子供のようにどこか頼りな気で
不安、だったのかな
部屋を訪れるたびに
子ども用の小さな椅子に
ふわふわのクッションを乗せて
座るようにすすめてくれたね
几帳面にクリップで束ねられ
ベットの上に整然と並べられた薬の空袋
「今年は8つも花をつけたよ」
と嬉しそうに教えてくれた胡蝶蘭の鉢植え
その部屋はもう空っぽで
Sさんが愛用していた物は跡形もないけれど
彼女が使っていた洗剤の残り香は
今も、しっかりと部屋に残っている








