| 第4回/「新聞にいいニュースが出たから買う」のは間違い |
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株式投資ファンのみなさんこんにちは、勝間和代です。
みなさん、新聞やテレビにいいニュースが出たから買ったのに、少しももうからず、株価が上がるどころか下がってしまった、そんな経験があるのではないでしょうか?
今月は、なぜそうなってしまうのか、そして、ニュースはどう使えばいいのか、一緒に考えていきましょう。
ではなぜ、いいニュースが出て買っても、株価が上がらないのでしょうか。それは、大きく分けて、以下の2つの要因があります。
1. タイミングの問題
新聞に報道されて個人が知る頃には、プロにはもうすでに伝わっていて、株価に織り込み済みである
2. 内容の判断の問題
個人がいいニュースと感じても、プロから見ると、実は大きく利益につながらないと判断されることがある
そして、1と2の結果、いいニュースが出ても、株価は上がらないどころか、下がってしまうことがあるのです。すなわち、プロより遅いタイミングで個人がニュースを知って、とっくに株価が上がったあと買ってしまっているか、あるいは勝手に株が上がると勘違いをしたけれども、それはプロの視点とは違っていた、ということになります。
このタイミングのズレ、判断のズレは、特にプロが手厚く見ている大型株に顕著に生じやすくなります。だからこそ、私は、訓練を受けていない個人が新聞のニュースだけで大型株について判断して買うのは、危険だと考えています。
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割高な好業績株は
ニュースに反応しにくい
具体的な銘柄で見ていきましょう。要因1についての事例は資生堂です。
資生堂は、中国での拡販が順調で、08年3月期の売上は昨年比2桁増ペース、利益の伸びもきわめて順調でした。07年末にできたS&P/TOPIX150シャリア指数にも採用されています。
* S&P/TOPIX150シャリア指数=「S&P/TOPIX150」で採用されている150銘柄のうち、イスラム教における宗教に基づく法体系(シャリア)を遵守する日本の銘柄で構成され、現在で79銘柄あります
しかし、株価を見ますと、’07年末の2800円前後をピークに、現在は戻り基調とはいえ2400円台まで下落しており、ニュースの内容に比してはさえない展開が続いています。では、なぜ、いいニュースが続いていても、資生堂の株価は下落するのでしょうか。
理由は単純です。「現在も資生堂は十分に成長を織り込んだ株価水準にあるため」です。PER(株価収益率)は会社予想業績で27倍と、花王の22倍やコーセーの21倍に比べて割高な水準にあります。
さらに、’09年3月期の会社の予想もたいへん保守的で、’08年3月期の高成長に比べて、当期は売上高、利益とも、ほぼ、横ばいレベルとなっています。これをうけ、アナリスト・コンセンサスも弱含みで推移しています。
アナリストになりたての頃、私はこのことを「木はどんなに成長しても空まで届かない」という表現で習ってきました。すなわち、優良といわれる会社や銘柄であっても、自ずと成長には限界があるということです。
まして、資生堂の時価総額はすでに1兆円近く、仮に株価が20%上昇するとしたら、2000億円の資金が新たに資生堂に向かわないといけないのです。すでに中国での成長分が株価に織り込み済みの中、大きな新しい材料を会社が提示できない限り、これだけの資金は集まりません。つまり、ちょっとしたニュースではなかなか株価は上がりにくいということがわかります。
すなわち、業績が上向いてきた企業は、すでにそのことが市場に広く知られ、PERが十分に割高になった段階でいいニュースが出ても、上がりにくいのです。
ましてや、今回のように当期の会社予想がマーケット予想よりも保守的であったという悪いニュースが出ると、業績好調でも株価は弱含みになってしまいます。高PER銘柄の良いニュースには飛びつく前に織り込み済みかどうか、考える習慣をつけることをお薦めします
利益を底上げする
力のあるニュースか否か
要因2についての事例は、ソフトバンクを見ていきましょう。
’07年末~’08年も新聞ではソフトバンクに関するいいニュースが数多く発表されています。例えば、下記のようなものでした。
・携帯電話の月間契約数(純増数)で連続トップ
・アリババドットコムの香港市場上場
・ディズニーモバイル携帯の発表
・i-Phone(アイフォン)発売
好材料に対し、年初には’07年3月の年初来高値3190円の奪回間近などという声も上がりながら、フタをあけてみたら、’08年3月期の増収増益幅は大きく縮小、純利益はプラスに転じるも微妙な決算で、8月上旬現在の株価は1900円台とニュースの華やかさほどにはさえません。
なぜこのようになっているのでしょうか。ソフトバンクがまだ赤字、あるいは、小さな黒字の時代には、「将来の黒字」を期待させるいろいろな好材料に反応しやすい地合がありました。まだ、現実に上がるかどうかは問題でなく、上がるだろという期待を投資家は買っていたのです。
ところが、’08年3月期の当期利益が1086億円の黒字となり、PER(株価収益率)も18倍となると、企業評価が利益やキャッシュフローをもとに評価する、普通の株式になってしまったのです。すなわち、新しいニュースが出たとしても、それが年間1000億円レベルの最終損益をどれだけ底上げする力があるのかということが問われます。
例えば、通信会社が利益を上げるためには契約数の純増が増えるだけでは不十分で、ARPU(顧客平均単価)が上がり、顧客獲得手数料が下がっていくことが必要です。ところが、ソフトバンクの携帯電話事業の内訳を見ると、ARPUは’08年3月期で第1四半期が5000 円、第2四半期が4800 円、第3四半期が4520 円、第4四半期が4310 円と右肩下がりです。
一方、顧客獲得手数料は第1四半期が3万700 円、第2四半期が3万1400 円、第3四半期が3万3900 円、第4四半期が3万3200 円と増加傾向にあるわけです。これでは、プロは顧客数が増えただけで将来の業績予想に強気になることはできません。
ニュースに、逆張りでのぞめ
飛びつく前に決算書を読め
それでは、こういったニュースを私たちはどのように活用すればいいのでしょうか。
私のお薦めは、「逆張り」です。すなわち、事前に買っておいた株が、十分に業績が良くなり、逆にそういうことが頻繁に報道されても株価が上がらなくなってきた。これは明らかに「利食い」「売り」のサインになります。
あるいは、自分が業績面から目をつけていた株について、悪いニュースが出てたまたま大きく下落することがあった場合に、そのニュースの質を見極めて一時的、あるいは影響なしだと判断したら、そのタイミングで買っていくのです。
まとめますと、市場評価が高い株に対して、例え新聞やテレビで良いニュースが出たとしても、飛びつくな、ということです。株価でより大きな値上がり益を得るためには、良質な情報による優位性が不可欠でが、それは残念ながら、新聞やテレビの企業ニュースではないということです。
なぜなら、そうした情報はあまねく知られるため希少性に劣り、かつ、企業業績に与える影響を分析するには、情報が不十分だからです。飛びつく前に、本当にそれで株価が上がるほどのインパクトある修正(ポジティブ・サプライズという表現を使います)なのかどうか、せめて決算書と照らし合わせて考えたり、企業のIRに電話をして影響を尋ねるなど、下調べをすることをお薦めします。