そして最終回は、サブプライムローンの問題、そしてリーマン・ショックを投資家としてどう乗りきるべきかを考えていくための特別レッスンです。
日経平均株価は
年初から4割の下落
サブプライムローン問題でただでさえ不安定だった市場が、リーマンブラザーズ証券の破綻を経てさらに乱高下しています。「これからどうなるのだろう」と不安になっている方も多いと思います。
今月号で日経マネーが個人投資家に行ったアンケート調査では、「サブプライムローン問題を契機に資産運用に対する考え方が変わったか」という質問に対して、41.2%の人が変わった、と答えています。
具体的には「銀行預金の方が安心だ」「株式投資では10~20%の利益が出たら売却した方がいいと感じた」「401kの日本株の比率をもっと抑えるべきだった」などの意見が多数出ています。
同アンケートで「どの程度の資産の目減りに耐えられるか?」を聞いたところ、30%以上の目減りに耐えられると答えた人はわずか23.7%です。
※クリックで拡大9割の人は、30%未満の目減りにしか耐えられないわけです。しかし、'07年末に1万5308円だった日経平均株価は、'08年10月8日時点では9203円。ざっと40%も値下がりをしています。つまり、9割方の人にとって不安でしかたがない状況ということになります。
今、起こっているのは
40年に1度の事態
ここでもう一度思い返して欲しいのは、リスクとリターンの関係です。例えば、国内株式の平均年リターンはおおむね4%ですが、標準偏差は20%もあります。標準偏差が20%とはすなわち、1年後にリターンがマイナス16%(平均リターン4%から標準偏差20%を引いたもの)から、プラス24%(平均リターン4%から標準偏差20%を足したもの)の範囲に収まる確率が7割程度だということです。
※クリックで拡大
つまり毎年約3分の1の確率で、日本株のリターンはそれよりも高かったり、低かったりするわけです。さらに標準偏差で計算すれば、日本株の年リターンは最悪でマイナス36%、最大でプラス44%の範囲に収まる確率が約95%です。ところが今回はこの95%の範囲を超えそうな下落ぶりを示しているので、これは
((100%-95%)÷2)=2.5%
くらいしかおきないこと、すなわち、40年に1度のたいへんな事態だと大騒ぎとなっているのです。
よって、20%の下落で不安になってしまう人は、積極運用資産として日本株式だけを持つことはできないのです。ましてや、新興国の株式は平均年リターンが12%ですが、標準偏差が30%を越える国も珍しくなく、倍近くなる年もあれば、半減してしまう年もあるということになります。
一方、国内債券の平均年リターンは2%ですが、標準偏差は4%しかありません。したがって、1年に10%以上下落する確率は小さいのです。そのかわり、すごくく調子がいいときにでも、10%以上上昇することもまれだということです。
| リスクとリターンは 双子の兄弟 私はこれまで、この連載で増収増益だから買うとか、ニュースがいいから買うといったことは株式投資の初心者が陥りがちな罠だと説明してきました。しかし、その前に、すべての個人投資家にとって最も大事なことは、「自分がどのくらいのリスク量をとることができるのか、理解をしておくこと」なのです。 |
損が限定されれば
怖くなくなる
サブプライムローンの問題やリーマンの破綻は、私たちにどんな教訓を残したのでしょう。まとめると、下記の3つになると考えます。
1. 投資をするときには、自分が耐えうる最大損失割合を規定してから、対象商品を選ぶこと
1年に20%の値下がりで耐えきれないと思う人は、変動幅がマイナス10%程度までになるような資産配分を意識する必要があります。例えば、資産の全部を日本株で運用したら年に20%目減りしてしまう可能性があります。リスク耐性の弱い人は、株だけの投資をしてはいけないのです。
そういう人への解として、低コストのバランス型の投信があります。
※クリックで拡大
例えば、SBI証券の資産設計オープンは投資先を国内・国外に分け、債券と株式にそれぞれ20%ずつ、REITを10%ずつ持ちます。このようなポートフォリオでは標準偏差は10%程度になります。
一方、同じバランス型ファンドでも、マネックスの資産設計ファンドは標準偏差を8%目標として年に1回、リバランスをしています。いずれにしても、このようにぶれ幅を抑えたバランス型ファンドであれば、年に20%以上の下落はめったにないと言うことになります。
実際、1月末の基準価額と9月26日時点での非分配型の基準価額を比べると、住信-SBI資産設計オープンが8.3%、マネックス資産設計ファンドが8.0%の下落となっており、同時期の日経平均の下落幅12.5%よりも緩やかであることがわかります。
2.投資に明確なロスカットルールを持つこと
それでも、標準偏差はあくまで標準偏差であり、4%を超える確率で、標準偏差の2倍以上の変動がありえます。それが耐えきれないリスクとならないよう、個別株でも、投資信託でも、そこに損切りルールを設けるのです。
例えば、20%以上の下落が耐えられない人は、標準偏差を10%で抑える一方、逆指し値を使って下落幅が20%を超えるところに損切りラインを置いてしまうのです。そうすれば、最悪のケースでも20%までしか損失を被らないということがわかりますので、気持ちが穏やかになれます。
投資の最大のポイントは「一番大きな損失の可能性」を確定してしまうことです。そうすることで、それ以上は悪くならないのですから、投資に対する恐怖感や不安感は軽減すると考えています。
3.過去の歴史を存分に学ぶこと
市場価格はフェアバリューに比べて、常に行きすぎ、上がりすぎたり、下がりすぎたりします。
オプション価格を算定する数式であるブラック・ショールズ・モデルを作ったことで知られるフィッシャー・ブラック教授の名台詞があります。それは、「市場では、理論価格に対して倍または半分くらいまでは、おおむね適正価格である」ということです。実際、私の体感上も、それくらい市場は行きすぎたり、下がりすぎたりします。
しかし、どこかのタイミングではバブルも弾けますし、下がりすぎた価格は戻ります。これは17世紀にオランダで起こった世界初のバブル崩壊といわれるチューリップ・バブルの頃から変わらない歴史です。
私自身は'95年にドル円が80円を切った時や、'97年のアジア通貨危機の時にもディーリングルームの中で、当時の狂乱状況をつぶさに観察しており、相場なんてそんなものだ、という達観ができたような気がします。とはいえ、誰もが20年も相場をやっているわけでもないので、まずは歴史から学び、そして、自身も市場に関与し続けることで、どこまでの変動があり得ることなのか、体感を得て、規律を作っていくのです。
私たちが投資で得るものは、労働収入に頼らない手段を作ることであり、経済に受け身ではなく積極的に関わっていこうという姿勢であり、そして、リスクとリターンの関係を学ぶことです。
市場が不安定な今こそ、生きた教科書としてリスク管理を学び、変動幅狙いの投機的な投資家から、しっかりと変動リスクと期待リターンをコントロールした、上級の投資家に進化していくことを目指しましょう。
それが、金融リテラシーであり、リスク・リテラシーであると考えます。
損が限定されれば
怖くなくなる
サブプライムローンの問題やリーマンの破綻は、私たちにどんな教訓を残したのでしょう。まとめると、下記の3つになると考えます。
1. 投資をするときには、自分が耐えうる最大損失割合を規定してから、対象商品を選ぶこと
1年に20%の値下がりで耐えきれないと思う人は、変動幅がマイナス10%程度までになるような資産配分を意識する必要があります。例えば、資産の全部を日本株で運用したら年に20%目減りしてしまう可能性があります。リスク耐性の弱い人は、株だけの投資をしてはいけないのです。
そういう人への解として、低コストのバランス型の投信があります。
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例えば、SBI証券の資産設計オープンは投資先を国内・国外に分け、債券と株式にそれぞれ20%ずつ、REITを10%ずつ持ちます。このようなポートフォリオでは標準偏差は10%程度になります。
一方、同じバランス型ファンドでも、マネックスの資産設計ファンドは標準偏差を8%目標として年に1回、リバランスをしています。いずれにしても、このようにぶれ幅を抑えたバランス型ファンドであれば、年に20%以上の下落はめったにないと言うことになります。
実際、1月末の基準価額と9月26日時点での非分配型の基準価額を比べると、住信-SBI資産設計オープンが8.3%、マネックス資産設計ファンドが8.0%の下落となっており、同時期の日経平均の下落幅12.5%よりも緩やかであることがわかります。
2.投資に明確なロスカットルールを持つこと
それでも、標準偏差はあくまで標準偏差であり、4%を超える確率で、標準偏差の2倍以上の変動がありえます。それが耐えきれないリスクとならないよう、個別株でも、投資信託でも、そこに損切りルールを設けるのです。
例えば、20%以上の下落が耐えられない人は、標準偏差を10%で抑える一方、逆指し値を使って下落幅が20%を超えるところに損切りラインを置いてしまうのです。そうすれば、最悪のケースでも20%までしか損失を被らないということがわかりますので、気持ちが穏やかになれます。
投資の最大のポイントは「一番大きな損失の可能性」を確定してしまうことです。そうすることで、それ以上は悪くならないのですから、投資に対する恐怖感や不安感は軽減すると考えています。
3.過去の歴史を存分に学ぶこと
市場価格はフェアバリューに比べて、常に行きすぎ、上がりすぎたり、下がりすぎたりします。
オプション価格を算定する数式であるブラック・ショールズ・モデルを作ったことで知られるフィッシャー・ブラック教授の名台詞があります。それは、「市場では、理論価格に対して倍または半分くらいまでは、おおむね適正価格である」ということです。実際、私の体感上も、それくらい市場は行きすぎたり、下がりすぎたりします。
しかし、どこかのタイミングではバブルも弾けますし、下がりすぎた価格は戻ります。これは17世紀にオランダで起こった世界初のバブル崩壊といわれるチューリップ・バブルの頃から変わらない歴史です。
私自身は'95年にドル円が80円を切った時や、'97年のアジア通貨危機の時にもディーリングルームの中で、当時の狂乱状況をつぶさに観察しており、相場なんてそんなものだ、という達観ができたような気がします。とはいえ、誰もが20年も相場をやっているわけでもないので、まずは歴史から学び、そして、自身も市場に関与し続けることで、どこまでの変動があり得ることなのか、体感を得て、規律を作っていくのです。
私たちが投資で得るものは、労働収入に頼らない手段を作ることであり、経済に受け身ではなく積極的に関わっていこうという姿勢であり、そして、リスクとリターンの関係を学ぶことです。
市場が不安定な今こそ、生きた教科書としてリスク管理を学び、変動幅狙いの投機的な投資家から、しっかりと変動リスクと期待リターンをコントロールした、上級の投資家に進化していくことを目指しましょう。
それが、金融リテラシーであり、リスク・リテラシーであると考えます。