前回書いたと同じ、ビルディングというプロモーター主催の長澤さん回顧展ですが、同時期に他のスペースでも行われておりました。何が何でも見に行こうと思っていたわけではなかったのですが、たまたま近所に行く機会があり、のぞくことができたのは、とてもラッキーでした。

こちらの会場は、長澤さん本人が、アトリエとして使っていたスペースということで、実は、アーティストゆかりの場所。ファンであれば、いわゆる聖地です、笑。
今年の、フオリサローネで、展示会場として使われていたスペースでもあり、その際に、それまで未知であった会場が気になったので、初めて足を運んだのですが、長澤さんゆかりの建物であることなど、つゆほども知りませんでした。



Casa degli Artisti(芸術家の家)

もしかすると、今でもグーグルマップのストリートビューでは、改築前の廃墟のような建物の姿が見られるかもしれません。結構最近になって、現在の姿に美しくなって、イベントスペースその他に使われるようになったようですが、どうやら、ビルディングさんが関係しているのでしょう。

この建物、長澤さんが、イタリア人など当時の仲間たちとグループを組んで色々活動をしていた当時、使われていなかったようなのですが、もともと、市民のための文化センターをコンセプトに、1900年代早々に作られた建物だったそうなんです。それを、竣工当時のコンセプトを再現して、現代アートのプロモーション・センターとして、町に戻そう、ということで、彼らグループが住み着いた、ということらしいです。

この建物の一階、日本で言うところの二階になりますけれども、そこに長澤さん始め仲間のアーティストたちはアトリエを構えて、30年ほども使っていたそうです。


(左が、道に面した窓ガラスで、右側に、教室のようにアトリエが並んでいたらしい。)



この、一番手前のお部屋に、長澤さんのプレートが付けられています。展覧会の会場もこことなっていました。

私は、特別なファンじゃないから、聖地というほどのことではないにしても、なんだか、実際に何かを生み出していた現場と考えると、ただそれだけで、ちょっとうっとりしちゃうような気持ちにはなります。
当時は廃屋状態だったわけだから、今のこのピカピカ感とは全然違うんだろうけれど、仕事しながらみんなでDIYなんかもしちゃったんだろうなぁ、とか。



おお、すごいアトリエ感!
最初に彷彿としたのが、随分昔になるけど、フランスはエクス・オ・プロヴァンスで訪ねたセザンヌのアトリエです。
セザンヌ、好きなわけじゃないけど、アトリエに興味があって訪ねてみて、なんだかあの人がちょっと好きになったと感じるくらいに素敵なアトリエでした。
一面が全面窓になっていて、天井が高くて、こんなアパートに住んでみたい、と思わされたんですけど、時代が違っても、ここもそういうスペース。
自然光がすごいし、建物が古いだけにレンガ積みの美しさもあり、とっても好き。
他の部屋とは違って、ここには大きな、室内と同じくらいの広さのバルコニーがあるのも素敵。
きっと夏の暑い夜なんか、みんなこのバルコニーに押し寄せて、宴会でもやってたかもしれない。

そして、このバルコニーには、この会場唯一の大きな作品が置かれていました。



Compasso di Archimedeアルキメデスのコンパス
なんだか分からないけど、素敵。展示場所にもピッタリだよね。



黒いアイアンと、光り輝く太陽光でまぶしい白と、なんかさ、まるでこの場所に展示されるために作られた作品みたい。
他の会場にあった御輿みたいなやつと同じで、浮遊感があるのがいいのかも。ぶらぶらしてるわけじゃないけど、ぶらぶらするよね?っという感じがうっすらあるっていうのか。



手稿も展示されていました。
緻密だよね。さすがインダストリアル・デザインとかやってた人感強いし、下記文字が美しいわぁ。

あとは小品です。



こういうのは、おそらく大きな作品を作る前の試作品というかプロトタイプ的なものなんだろうな。こういう試行錯誤中のものって、結構面白い。最終形態が、同じ場所にあったら、もっと面白いけども、これが最後にはどうなったんだろう、と想像するのも楽しかったり。
右側のは、おそらく船?その作品は、違う会場での展示で、今回見られなかったけど、もしかするとね。



展示ケースの向こう側に焦点あっちゃったみたいで、ブレブレ…笑。
こんな作品も、同様に大型の作品を想定していると思うけれど、ここに来るまででも、大量の手稿があったに違いありません。
手稿によれば、葉の数まで計算しているようだし、すっごい緻密。
ゲージツカやるのも大変なことだろうなぁって思います。



見る方は、勝手に好きなように見ればよいけど、やる方は、それなりにすべてに意味付けしていくわけだろうし、そーゆーのって絶対できないよなぁって凡人の私は思います。
そういう距離感から、手稿っていうのは、とても面白いですね。



1998年10月、宇宙のことを考えていたのね。
ちょこちょこと、イタリア語が入ってくるのも興味深いんだけど、やっぱり日本語なんだなっていうのも、同時に興味深いです。

ということで、この会場では、作品というより、アーティストを感じることに主眼を置いた展示になっていたのだと思います。



建物の由来を知ることができたのもよかったし、会期ギリに行けてよかった展覧会でした。もちろん、こちらも無料です。ビルディングさまさま。

さて、来週から夏休みということで、明日より早速旅に出ます。目的地まで片道千キロ、結構大変そうだし、これから準備ですが、まぁ何とかなるだろう。
ということで、今更ニュースでもありませんが、しばらくお休みとなります。
皆様も、熱中症に気を付けて、どうぞ良い夏休みを。

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