フオリサローネの記録に時間がかかってしまって、随分と前に訪ねた展覧会の記録などが疎かになってしまいました。毎度の言い訳ですが、このブログ、基本は自分のための備忘なので、そこはそれ、展覧会が終了してようとお構いなく、笑、記録していきます。



タイガー立石 Tiger Tateishi
Galleria Tommaso Calabro - Casa Grondona

どこで知ったのだろう?と若干不思議でもあるのですが、この方の絵は知っておりました。でも、どういう方かなどは全く知らず、ただ、こういう絵のヒト、という漠然としたイメージがあっただけです。

展示の中に、これを見つけたとき、あ!と声が出てしまいました。



「こどものとも」は、今でもあるのでしょうか。福音館書店が発行している子供向けの絵本のシリーズ。確か毎月一冊お家に届くようなシステムがあったんですよね。それがいつからかは知りませんが、少なくとも弟の時代は契約していたはずで、我が家には絵本が溢れていたんですよ。
それで、弟の時代に、絵本を見ていたのかなぁ、と思って一瞬納得したのですが、こどものともとのコラボは、80年代みたいなので、そうでもないようでした、笑。
もしかして、学生時代にアルバイトした幼稚園で見たとか、誰かのお家で見たとか、そういうことかなぁ。いずれにしても、まず間違いなく「こどものとも」で邂逅しているはず。



現代の美術において、絵画って、ただそれだけでは新味もないし、例えば、毎度おなじみのベネチア・ビエンナーレでも、絵画があってもすいっと通り過ぎちゃうことが多いわけですが、そういう中で、ふと目が留まってしまうような作品っていうのがあって、それがこういうやつ、っていう例みたいな作品。

勿論個人の好き嫌いが大きいとは思うんだけど、このマットな質感、緻密さ、独特のシュールさ、そういうものが、私には琴線に触れます。好きです!



元々具象はみませんが、シュール系は好きみたいで、こういう、なんだか分からんがストーリー性があり、謎がある絵は楽しいですよねぇ。



とにかく色彩が派手で良きです。

彼は、なんと10年以上、ミラノにお住まいだったんだそうです。私が来た頃には、すでにいらっしゃらなかったようなので滞在はかぶってはいないのですが、ギリ80年代最初にいたことで、80年代くくりではかぶっています。

なんかね、ミラノだって今とは全然違っていたはずで、いや、もう自分は生きるのに精いっぱいで、俯瞰的な視点を持つ余裕なんかなかったんだけどもね、それでも当時がとっても田舎の都会に過ぎなかったことは知ってるんです。
例えば、事件のニュースで写ったりする当時の写真なんか見ると、クルマのスタイルが全然違うとかね、視覚部分で大きく違うんだよね。そりゃそうよねぇ、40年前とかだもんねぇ。

古臭い、というのもあるとは思うけど、美しいものが沢山残っていた時代でもあったかもしれない。そして、それはミラノだけではなくて、イタリアの他の年にしても、欧州全体にしても。

以下、現地にあった解説文。

「タイガー立石 ”私は、画家でにもイラストレーターにも漫画家にもされたくない。私が望むのは、常にアナーキストであること。”

画家、漫画家、イラストレーター、陶芸家、と多面な日本人芸術家タイガー立石(1941-1998)は、1969年から1981年に、ミラノで生活し仕事をした。これは、イタリアにおける彼の最初の個人展覧会で、ミラノのTommaso Calabro画廊が新規にオープンしたスペースのこけら落としの展覧会でもある。
一つのスタイルや方向性にくくるのは困難なアーティストである立石は、多面的で想像力豊かなアーティストであり、そして、ポップアート、アンチアート、キュビズム、シュルレアリスム、形而上学など、彼が最も魅了された西洋の芸術運動からのインスピレーションをもとに、アジア文化のシンボルを混合宇宙の中で再精緻化し、統合する才能があった。

彼のイタリア時代は、絵画においては最も多作だった。70年代に、この芸術家は、あふれるミラノの文化シーンに独自の次元を切り開き、当時の最も重要な芸術的人物の何人か、主にエットーレ・ソットサスの非常に人気のある共同制作者となり、1971 年から 1974 年までそのスタジオで働いていました。
この展覧会は、60年代末から70年代にかけて制作された、紙に描かれた絵画や作品のセレクションでタイガー立石に敬意を表します。「Tiger Pinxit」と署名された図面や、最初の珍しいリトグラフから、有名な「挿絵」絵画まで、シュルレアリスム、SF、コミックなど、アーティストの大きな情熱が集結した現代のイメージとアイコンの万華鏡となっている。」



しっかりと働いていたようなので、お金に困ることもなく、きっとあちこち回られて、多くの作品やアーティストご本人との出会いなどもあったのだろうと想像します。



現代のオーバーツーリズムの世界からは信じられないけれど、80年代のイタリアは、観光客も少なくて、並ぶなんてことはなかったのだよなぁ。その代わり、観光地化されていなくて、訪問困難だったりということはあったかもしれない。



こういったインスピレーションも、今のヒトであふれかえっているピサでは持ちにくいのでは、と思っちゃう。

それにしても面白いなぁ。これ、という対象があると、ひたすらこねくり回しちゃうタイプなのかな。こねくり回しているうちに、何か見えてきちゃう、みたいな、笑。



ということで、どの絵も細部まで面白くて、じっくりと食いついてしまいました。展示点数は、多くなかったのだけど、辞去するまでには、私には珍しく、結構な時間がたっていましたよ。絵画は、すっと通り過ぎるタイプだからさ、普段、笑。

こういうすごい書き込みの絵が、絵本サイズに凝縮されるんだから、密度や圧が高まって、ますます迫力が出るのかもね。

ところで、今回会場になったギャラリー、なかなか構えがすごいんです。



カテドラルから、トラムで運河の方向に南下する位置なんですが、立派なお屋敷です。
その大玄関を入った中庭に面した小さな扉なんですが…。



外扉(木目のやつ)は開いているけど、ベルを押してね、とかなっていて、展覧会の看板すらないし、ちょっと~、めっちゃくちゃ入りにくいんですけど、涙…。
一応、建物の玄関口に引き返して、門番さんに、あそこ入れるんですかね?とこそこそ確認したりして、笑。
だってこれ、どう見ても一般人相手というより、売り専門ギャラリーぽいですよね。

まぁ意を決してベルをならしたら、なんのことはない、中扉も軽く開いていたんですけどね、笑。そして、ニコニコ、どうぞって歓待してくださいましたけどね、いや、緊張しました。

これね、一度やっとくと、遠慮なく入ることが出来るけど、こういう場所に最初に訪問するのは、マジ緊張する。そういう意味で、いまだ訪問したことのないギャラリーっていくつかあるんです…。
一般向けの展覧会なら、お願いだからそれらしくして、と強く思います…。

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