フオリサローネ2024 その16

Varedoの町にあるアルコーヴァ主催展示会、もう一つの会場に向かいます。バガッティヴァルセッキ邸からは、徒歩で10分ほどでしたでしょうか。ひたすらまっすぐ、イタリア国鉄の線路を超えた先の道沿いですが…。
遠目から、やばい雰囲気満載。



列の先頭が見えないくらい、行列ができていました。

実は、上の写真は、すでに結構進んだところ。この右側はすでにお屋敷の敷地なんですが、並びだした当初は、この道をお屋敷の敷地に沿って、手前に曲がった道の中ほどでした。
どうしようかと思いつつ、まだ16時半過ぎだったこともあり、入場最終時間18時までには入れるだろうと思い、とりあえず並んだのです。バガッティヴァルセッキ邸も、少し並びましたが、サクサクと入れたので、正直、並びだした段階では、高をくくっておりました。

ところがどっこいで、この行列、全然進まなかったんです。角を曲がって、お屋敷の鉄柵を通過できたのが、なんと17時58分!つまり、1時間半近く並び、そして見学できるギリギリ最終時間に滑り込み、となってしまったのです。
幸い、なんという偶然か、私の前に日本人女子が並んでいて、途中からおしゃべりできたので、なんとなく時間が過ぎていったんですが、それがなかったら、最後まで持たなかったかもしれないです。

なんでこれほどバガッティヴァルセッキ邸と違うかというと、こちらのお屋敷は、国の重要文化財指定かなんかがあるそうで、お屋敷が破損などしたら大変なことになるため、同時にお屋敷内に滞留できる人数に厳しい制限があるとのことで、一人出たら一人入る、みたいなカウントが、相当厳重に実施されていたようです。



Villa Borsani, Varedo

こちらの会場は、ボルサーニ邸です。バガッティヴァルセッキ邸とは異なり、20世紀の建築で、いわゆるモデルニスモというスタイルで建てられた邸宅となっています。わたし、建築には詳しくなくて、漠然とした知識しかないんですけれど、19世紀末から20世紀初頭に流行したスタイル、クラシックとモダンの融合とか、曲線とか、そういったものを多用したスタイルらしくて、アール・ヌーボーとかアール・デコの系譜になるのかな。装飾性をかなり排除したミニマルな感じだったり、今見るとレトロ感が強い大正建築、みたいな印象です。
イメージとして、東京の庭園美術館などを彷彿としました。

この邸宅のもともとの所有者は、その名のまんま、ボルサーニさんなんですが、Osvaldo Borsaniさんご本人が建築家で、自ら設計して施工したんだそうです。そして、邸宅内には、当時の最先端のアーティストによるインテリアが満載、ということで、その中には、私ですら知っているルーチョ・フォンターナとか、アーノルド・ポモドーロとか…。

そういった細かい点は、見学後に知るところとなったため、笑、見学時には建物本来の造作などは、あまり注意してみていなくて、しまった!となっていますが、でも1時間半も並んだ後なので、仕方ないです。

そして、本来の姿を知りませんので、例えば、上の写真のお庭に立っている変なオブジェが、もともとあるものなのか、今回のイベントの出展なのかすら、区別つかず…。いただいたパンフレットに記載がないので、もともと置かれているものだとは思います。
それなりの名のある、当時のコンテンポラリー・アート作品ということになりますね。



これらの変なオブジェも、きっとオリジナル。
きっと、このお屋敷にアーティストを招待して、特定の場所に置くためのオブジェを、その場でイメージしてもらったとか、本物のお金持ちにしかできないことをやったんではないか、と想像します。だからきっと、変なオブジェだけど、場の雰囲気にしっくり溶け込んでいるんでしょうよ。

例えば南仏アンティーブの、ピカソ美術館になっているグリマルディ城なんか、彷彿とします。あれは、お金持ちではなくて、国が太っ腹だったというお話みたいだけど…。



お屋敷に入るとすぐ吹き抜けの階段。モダンですよねぇ。強化プラスティック素材なんですかね。きっとそういうものが最先端ではやっていたんでしょうよ。
内部でも、もともとあるのか、今回の出展なのか、にわかには判断しかねるものが…。



Kiki Gotiとキャプションがあったので、今回の出展作ですが、全体として、階段の造作と共通するようなテイストで、見事にしっくりしていました。事前に展示のスペースの雰囲気を見て、マッチするような作品作りをしたのかもしれませんねぇ。



Ryuichi Kozeki / RKDS

最初に名札に気付いたので、行列を一緒に並んだ同行者に、「日本人の方みたいですねぇ」と言ったところ、「はい!日本人ですよ!」と、部屋の中から声がして…、デザイナーさんご本人でした、笑。
アルコーヴァでの出展は、今回三回目とおっしゃっていたので、ご本人の手ごたえも、アルコーヴァ側の利点もある作品を提供し続いているということなんだと思います。一見、普通に使えそうな灯り作品ですが、お話を伺って、面白いコンセプトをお持ちだと思いました。



たまごの形にこだわって、実際は卵の形で販売して、購入者が、明りの傘部分と、基部の部分の間を壊して、最終的な感性をするデザインを目指した、というようなことをおっしゃっていました。ちゃんとメモを取ったりしなかったので、正確に覚えてないんですけれど。
分かりますかね。
よく見ると、傘の下のところ、そして、基部の周囲が、でこぼこしているんです。そして、その部分をつなぐと、確かにたまご型のフォルムが浮かび上がるんですよ。
話を聞かなかったら、絶対分からないけどね。面白いですよね。

なかなか、押しが強くて、海外でもガンガンやっていけそうなイメージの方でした。自分のアイディアや作品をもって、世界に飛び出すアーティストさん、尊敬します。



バスルームを飾っていた、めちゃかわいいガラス作品。
これは、多分、バガッティヴァルセッキ邸の水回りにもあった、同じトルコのスタジオの作品と思います。



バスルーム自体は結構、今でもありそうな普通な感じで、ただ、壁のタイルにレトロ感があるくらい。全然マッチしてない様子もあるんだけど、かわいいモノはかわいい、ってとこでしょうか、笑。



通路に唐突に置いてあった椅子。
真鍮っぽい素材で、座り心地はめっちゃ悪そうですが、なぜか分かりませんが、好きな現代アーティスト、ミンモ・パラディ―を彷彿とするイメージで、好みです。



入り口の方で、壁面が一面大きなガラス張りとなっているリビングは、もうありものなのか、出展作品なのか、訳が分かりませんが、すべてが素敵でした。



元々レトロやアンティークなインテリアが好きなので、すべてがしっくりします。
どの作品も、現代のものであっても、やはりこういう場になじむようなインテリアとなっている様子で、違和感がないのはすごいですね。



文字通りの自分の城に住まい、時代のトップを走るアーティストを招いて美術談義の日々…。成功者の世界ですねぇ。でも嫌味じゃなくて、ただ美しいだけ、という。

奥まった場所に台所があり、置かれていた食器などは、これまたレトロで、マジ欲しい、というテイストでした。



それにしても、台所はすごく狭くて、これで、お招きの人々をおもてなしするような料理ができたのだろうか?と思うような、使い勝手が悪そうな仕様だったのが、驚きました。
イタリアのヒトのお屋敷なんだし、食を侮るはずはないのだけど、ちょっと謎の作りだったなぁ。



とってつけたように展示スペースにされている場所もありました。地下室は、展示も変なもので、割愛。

とまぁ、若干時間がかかりすぎて、最後は端折ってしまいましたが、アルコーヴァの展示は、行ってよかったと思います。そして、思わぬ行列で時間を食うことになっちゃいましたが、それでもお屋敷を二つも訪問できて満足でした。

この後、週末があったので、市内を回る選択もあったのですが、ある意味、ここで満足できたので、今回のフオリサローネはアルコーヴァでしめ、となりました。
自分の見学した内容としては、若干低調、特筆すべきイベントにかけるきらいがあったものの、それでもやはり見ていると、何かしら刺激もされるし、インスパイアもあるし、ミラノにいる限りは、見学して損はない、というところです。
が、今後、オーバーツーリズム的に見学者が増えていくようなら、厳しくなっていくかもしれませんね。

お付き合いありがとうございました。
次回から平常運転です。

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