フオリサローネ2024 その5

二日目は、在宅勤務でしたが、初日同様、17時半にはすっぱりと仕事を辞めて、自宅から比較的近い展示会場に、急ぎ足で行ってきました。
展示は、大学のように夜中までオープンしている会場もあるのですが、ほとんどは18時とか19時に閉まってしまうので、急ぎ足で向かいます。



サローネ全体で、複数の展示にかかわっていらっしゃると思われるNendoですが、Nendoとしての出展があり、会場になっている場所は、これまで行ったことのない地域だったので、さらに興味がありました。

後付けで知ったのですが、その会場は、パオラ・レンティという大メーカーさんの、新しいショールームだったんです。
門外漢だし不勉強で、まったく知らなかったんですけど、Paola Lentiって、1990年代半ばに、カーペット系の織物から始まった、どっちかというと職人技系の会社で、その後製品の幅を拡大するとともに、世界企業になって行った、ということです。
とてもイタリア的な会社と言ってよさそう。ファッションでも、イタリアのデザイナーさんは生地や糸の勉強もしているという話を聞いたことがありますが、要は、根っこは職人なんですよね。

今回は、Nendoが、このパオラ・レンティとのコラボもしているし、Nendoとしてのスペースで展示もしている、というものでした。



Nendo: Whispers of nature
c/o Paola Lenti Milano
Via G.Bovio 28, Milano

ミラノ市内北部の、再開発地域です。
ミラノに住みだした当初、だから30年以上前のことですが、この辺りをわらに北上したあたりに住んでいたので、この一帯がある通りは、毎日通勤で通っていたんです。うろ覚えですが、当時は製薬会社だったり、古い建物が並んでいただけの通りだったと思います。こんな煙突があるということは、工場もあったのでしょうね。 



それが再開発で様変わり。モダンなアパートなども建っていましたが、きっと不動産価値も上がったことでしょう。

ということで、知らない地域を訪ねるのも楽しく、私視点では、このイベントの醍醐味でもあります。

前置き長っ、笑。

先に言ってしまうと、今回それなりに回ったものの、面白いと感じる展示が少なく、たまたま出会った人との情報交換的なおしゃべりをしていて、何がよかったか、という話になっても、とんと思い浮かばない、という感じだったんですが、そんな中で、この展示は、面白いと思えた数少ない一つです。
いや、そんな風に言ってしまうと、どんなに面白い派手な展示だったんだろう、と思われてしまうかもしれないのですが、実は、とてもガチな、デザイン会社による提案的な正当王道展示です、笑。
でもね、デザイン会社の立ち位置だったり、技術やアイディア、思想の見せ方、売り方、という意味で、勉強になったというか、イベントの意義を理解でき立っているか、そういうところが面白かったんです。
門外漢の私が、そんなことを理解しても、なんにもならないんだけどね、ハハハ。

「雲の曖昧さ、光と影の関係、雨に打たれる感覚、そういった、しばしば見逃してしまう自然からのささやきを感じることから生まれたコレクション。」と記されていました。



Translucent shelves in the form of hazy clouds
「遠くから見ると、雲は白い塊だが、飛行機や山の天辺での雲は、活動をしており、霧や半透明の風景を生み出すものとなる。「量」と「霧」の中間にある雲の曖昧さを「半透明の集合」として解釈し、4つの棚をデザインしました。

ステンレスパンチングメタルを使用し、厚みと穴の量のバランスを素材感を感じられるよう設​​計しました。通常、パンチングメタルが重なる部分にはモアレパター(干渉縞)が現れ、視覚的なノイズが発生します。モアレの影響を最小限に抑えるため、デジタルシミュレーションの結果に基づいて、バックパネルのミシン目配列方向を30度回転させました。」



分かりにくいと思いますが、薄いメタル板に、細かく穴が開いている素材で、目の詰まった網みたいな感じですかね。それを四角く立方体のようにして、各所に引っ込みがあって棚になっている様相です。
ものを置くため、というより、置くものも含めたオブジェ的なインテリアですね。ものを置ける場所は少ないとはいえ、ぎっしり置いてしまったら、光が遮られちゃうわけだしね。



Textile patterns born from the "dip".

Pond dipping
「池や沼の植物が水や泥を吸うと、水に浸かった部分が変色します。「自然界の死」のように。
糸を均一に染めたり、さまざまな種類の織りを使用してさまざまなパターンを生成したり、プリントを使用して色を転写したりする現代のテキスタイル手法とは異なり、私たちのプロジェクトは、「浸す」という単純な行為によってテキスタイルパターンを作成することを目指しています。
まず、糸を円筒形の管に巻き付け、糸巻きの半分を黒い染料に浸します。この糸を緯糸に織り込むことでストライプ柄が生まれました。異なるサイズのボビンで同じプロセスを繰り返すと、染料の周波数と緯糸の周波数が徐々に変化し、異なるテキスタイルデザインが生成されることがわかりました。さらに、異なる角度や2箇所に浸すことで、市松模様やグラデーションなど、全く新しい表情が生まれます。
歴史的に日本には「絣織り」と呼ばれる織物の伝統があり、染色中に糸を部分的に覆い、織ったときに色あせた効果を生み出しました。この綿密な計画に基づいた伝統的な染色工程に比べ、浸漬角度とボビンの厚みだけで発色する当社の染色工程は、さらに原始的な手法と言えます。結果として生じるテクスチャは、「自然のパターン」に関連して解釈することができます。」

長くてすみません。でも、せっかくだから…。

これね、見たときなんだか分からなかった。で、そこにいらした方、日本人だから関係者だろうと思って尋ねたんです。
ちゃんと説明版あるけど、読むの面倒だしね、日本語でお話聞く方がいいじゃん、笑。で、上のような、これは説明版を訳したものですが、そういったお話を伺うことが出来て、感心した次第です。





糸巻の太さや長さで、織物のパターンが変わるし、染色部分によって変わる。



こういうのって、きっとパソコンでもシミュレーションできちゃうと思うけど、まずは発想だよね。発想がなければ、シミュレーションも何もないもんね。
すっごく面白いと思いました。
パターンって好きなんですよ。でも数学的センスがゼロどころかマイナスな自分には手に負えない世界っていうのがあって、逆に惹かれるっていうか。



Crystallizing the moment of a rain shower.

Passing rain.
「雨は数滴落ち、やがて土砂降りになります。これが通り雨の性質です。雨粒の表情の変化、空の色や光、音や匂いを通して、私たちは時間の流れを感じます。これらの短い瞬間を、一連の5つのボウルを通して表現します。
細い線として現れる「雨筋」を、直径2mmの鏡面仕上げのステンレス棒で表現しました。ロッドはアルミニウムのボウルに接続され、鏡面のベースに落ちます。ボウルへの接続が斜めになっているため、溶接では十分な強度が得られません。ネジと接着剤を併用して接続を固定し、ネジを隠すためにボウルの内層を挿入しました。板が歪まない程度の温度で裏面から下地を溶接し、表面は雨を反射する鏡面仕上げになっています。
5つの鉢の中で「初期の雨粒」を表現した鉢は支柱の数が最も少なく、最も製作が難しい鉢です。
降りしきる雨を「静止画」で撮るような行為を通じて、時間の経過をオブジェに閉じ込めるデザインです。」

ちょっとね、ごちゃごちゃうるさいっちゃうるさいけどね、笑。
でも、インダストリアル・デザインって、実用である必要もあるから、強度とか安全とか、そういう部分が最も大変なのかなって想像できる解説かもね。



めっちゃ緻密。当たり前だけどさ。
この仕事は、粘着質が美徳な世界かもしれんな、とふと思いました、笑。苦手じゃん!

後は端折って、パオラ・レンティとのコラボへ。



Hana-arashi

これはおそらく、パオラ・レンティの布を使ったNendoによるインスタレーションということだと思います。そこに、その素材で作られたらしいものが展示されていました。



広げてくっつけて、なんか色々形を変えて、多目的に使える家具的なものだったようです。



その後は、ガチのショールームとなっていて、あちこちで商談、名刺のやり取りが。立派な写真満載のカタログを、自分の趣味目的でもらいたかったけど、ください、という勇気はさすがになかった~。
パオラ・レンティ、見学中は知らなかったけど、すごさは十分わかりました。ってことは、Nendo、すごいよね。



そうそう、お話した方はNendoの方で、このショールームで出展できるのは光栄なことですとおっしゃっていました。
これまでもフオリサローネで拝見してるけれど、Nendoの方にお会いしたのは初めてだったのですが、実際に、人数が来ているのは今回初めてのようなことおっしゃっていたから、ラッキーだったかもね。

自分は何度も言うように門外漢で、現代アート好きから建築やインテリアへの興味につながっているだけなので、おこがましくはあるけれど、出展されているデザイナーさんたちとお話できるのも、このイベントの魅力なんですよ。だって、普段の生活で、デザイナーさんとかかわることなんてないわけで、本当に自分の知らない世界に生きている人と、わずかでも触れ合うっていうか、かかわるっていうか、すごく刺激になります。

実際、しばらくお休みしていた手仕事を、再開しています!

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