先ほど、ニュース動画で、小澤征爾さんがお亡くなりになったことを知りました。晩年は闘病で、辛い日々だったと思います。ご冥福をお祈りします。

でね、そういえば、って思い出したことがあって、しみじみしつつ笑っちゃった。



もうふた昔以上も昔のことになりますけれど、スカラ座にはまっていた時代がありました。劇場にはまるっていうのも変だけど、今思うと、ほんとそんな感じ。
スカラ座は、ミラノの誇るオペラ劇場で、オペラ劇場としては世界でもトップクラスの劇場だと思います。
私が通っている当時は、リッカルド・ムーティという、バリバリ独裁政権的な指揮者がブイブイ言わしていて、なかなか素晴らしい時代だったんですよねぇ。彼が一番輝いていた時代なんじゃないのかなぁ。

で、そのスカラ座ですが、クラシック音楽には全く造詣がなかったんだけど、ミラノにいるからには、やはりオペラの一つも見ないとダメなんじゃないの、という非常にミーハーな気持ちで、まずは、毎シーズン、テレビ生中継もある初日に行こうじゃないか!から始まったんですよねぇ。

そこから、オペラは勿論、バレエ、オーケストラ、はては歌まで、一番通っているときは、週に二日三日、行ってた感じです。同じ演目のオペラを、歌手違いで見るとかね、そんなことやってました。

音楽の造詣ないし、正直、いいとか悪いとかもよく分からなかったけど、でも、オペラは総合芸術とはよく言ったもんで、音楽だけじゃなくて、舞台や衣装、演技や演出なんかも楽しめるから、なかなかにはまっちゃったわけです。もちろん、いつだって天井桟敷の安い席だったけどもね。
前置き、長いね、笑。

オペラは指揮者のあこがれというし、そしてそれだけのレベルの劇場だから、指揮者は綺羅星のごとくで、当時の名だたる指揮者のほとんどを聴くことが出来たんですよねぇ。もちろん、一番多く聞いたのは、ホームのリッカルド・ムーティだけど、バレンボイム、ゲルギエフ、チョンミュンファン(ちょっと違う気がする、笑)、メータ、もう名前すら思い出せないけど、クラシック好きなら誰でも知っている指揮者、ほとんど網羅って感じで、当然小澤さんも。

何を振ったかも覚えてないけど、今夜見に行くっていう日だったと思うんです。
スカラ座至近のアーケードの中ほどで、立ち止まっている日本人らしき三人が目に留まって、よく見たら、そのひとりが小澤さん!!!
他お二方はたまたまミラノに来ていた日本人観光客で、サインをお願いしていたんです。普段なら、知らん顔して通り過ぎるタイプだけど、なんとなく、今夜聴きに行くんだし、記念になるかもなぁ、とふらふらっと近付いてしまって。

笑っちゃったのは、そのお二人のファン。
その日に小澤さんの公演があるのは知らなかったようで、偶然に大喜びしていて、サインが欲しいけど、紙がない!もう、これでお願いします!と差し出したのが、なんとパスポートだったんですよ~笑。
小澤さん、苦笑されて、それはいくら何でもまずいでしょう、とおっしゃったんですが、「いえ!大丈夫です!お願いします!」って、何が大丈夫なんだよ!と、心の中で突っ込んだな。小澤さん、押し切られて、サインなさってました。
私は、普通に手帳にいただき、今夜楽しみにしてます、とお別れしました。とても穏やかで寡黙で、でも感じの良い物腰の方でした。

考えたら、リハの帰りとかだったのかもねぇ。おひとりで歩いてらして、小柄だし、あのお二人がいなかったら、私は気付かなかったかもしれないし、気付いても声をおかけする勇気はなかったんじゃないかな。いや、いいんですけどね、別にそれで。サインだって、すぐにどっか行っちゃったし、笑。
でも、そのときも、その夜のオペラも、とても高揚したし、そして20数年たって、再び楽しい気持ちになって…。ほんの一瞬の一期一会が、記憶の中で生き続けるもんなんですね。

当時の色々が思い出されて、切ない気持ちにもなりつつ、あの時の方、日本に帰国した際、大丈夫だったのかなぁ、っておかしみを感じます。ひと悶着あったとしても、それだけに、あの方にとっても、きっと忘れられない一期一会だったろうなぁ。

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