蹴る ★4.0
電動車椅子サッカー という
重度の障害を持った人々が果敢に挑むスポーツ。
そのスポーツに携わる選手達の6年間を撮影し、120分に圧縮した映画。
DVDレンタルやネット配信もされないと思いますので、
予告だけ載せておきます。
(2つ目の動画はヒヤッするかも)
予告編:
蹴る特集&インタビュー:
映画完成に拍手。
2時間もありがとう。
中村和彦監督には心から感謝しています。
久しぶりにパンフレットも買いました。
端的に申し上げると「力強い」。
生きるという行為だけで圧倒される。
と同時に「複雑な気分」にもさせられる。
当事者達は、きっと
「競技やりたいからやってるだけですが…何か?」
とおっしゃられるかもしれませんが、
いやいや、既にドクターストップかかってるのに無視ですか!?
っていうくらい、皆さん自らの「命」に対して開き直ってるように感じる(苦笑)
健常者の一般的なサッカー と
障害者の電動車椅子サッカー
では、「試合と死合」ぐらいの命のかけ方が違う。
受け身が取れない為、転倒しただけでもハラハラもの
明日生きれるか…
今日生きれるか…
試合中死ぬか…
食事、食べ物を飲み込むのすら苦痛…
毎日毎日、嫌でも脳裏をかすめる「死」…
それでも競技に取り込む彼らは、いったい何者だろうか…
ただの「選手」か…
「超人者」か…
「狂人者」か…
いずれにしても、
ひたむきに競技に打ち込む姿は、
敵/味方関係なく心の底から応援する自分がいました。
この映画では、主軸で動く主人公が2人。
一人が、女性の永岡真理 選手。
レントゲン画像で背骨がぐにゃりと曲がっている。(SMA = 脊髄性筋萎縮症)
脊椎の運動神経細胞が減る為、自律では体を支えれない状態。
脇の下に全体重を預けれる支えを取り付けた電動車椅子で競技に挑んでいる。
(皆さんそれぞれで、自分に合った特注品仕様になっている。)
そしてもう一人が、呼吸器をつけた男性 東武範 選手。
筋ジストロフィー症 を抱えている方。W杯出場者の切れ者。
どちらの方も選手としてもめっぽう強い。
そして、また面白いのが、それぞれで恋愛事情があったりするという一面も
ドキュメンタリーとして描かれている。
(意外にも皆さん恋愛されているそうです)
永岡真理 選手の方は、北沢洋平 選手(筋ジストロフィー症)の方とお付き合いしている。
ただ、デートにしてもヘルパーさんがそれぞれでいる状態。
「彼氏/彼女/ヘルパー2名」という環境でのデート。
こういう羨ましい一面でも、
別に誰が悪いというわけでもないが、複雑な気持ちになってしまいます。
(と同時に、久しぶりにラブストーリー観てリア充爆発しろと思ったことは内緒ww🤣)
個人的に感動したのは、三上勇輝 選手。
障害レベルは、先に二人より軽いと診断されてますが、
それでも脳性麻痺。
しかし、その症状を感じさせないくらいにめちゃめちゃ饒舌。
本当に脳性麻痺なのか!?と疑いたくなるほど。
更には韓流スター張りの顔のルック。
笑いも取るムードメーカーでもあるなど、
障害者であることすら忘れさせてくれる名選手でした。
決して編集は優しくない。
登場人物が多いので、登場人物を理解していないと最初の方は「一体誰の主軸の話なのか」
良く分からないものとなってしまっている。
しかし、6年という撮影時間だからこそ、
監督の想いが詰まっている編集とも受け止めれる作品。
身近に障害者の方がいなければ、
2時間鑑賞することによって、
彼らの見え方/受け止めた方が、
映画を観る前と観た後では変わってくると思います。
事前知識:
1度しか見ない方は、以下の競技ルールを覚えておいた方が良いです。
・2on1
「同一チームの競技者2名と相手競技者が
ボールの半径3m以内におり、
競技者二人目がプレーに干渉してはいけない。」
つまり、2対1でボールを取りに行くのは反則。
1対1でなければならない。
このルールを見ずにこの映画の試合を見ると、
さっきまで機敏に動いていた選手が、
スローな動作になっていることが多いことに直面する。
パンフレットを買って、このルールを知り、この競技の難しさを痛感しました。
是非、機会のある方は映画館で…
(と言っても、全国で大阪の十三、第七藝術劇場 の1館のみが上映……してたが、既に終わったかも
他は上映会イベント等々で監督が飛びまくってます。)
<雑談>
偶然たまたま見つけた当映画のポスター。
「今見とかないと一生見ないだろうな。」という自負の感覚。
大手映画館が毛嫌いするようなド直球の障害者達が主役のノンフィクション映画。
珍しく「見に行かねば…」という琴線に触れた。
本来、大手映画館こそが先頭を切って
日の当たりにくい作品を上映すべきだと考えるが、
今日の映画業界は……といった状況。
まだまだ…まだまだ……
意外にもたくさんの人が見られていたことが、何故か嬉しかった。
車いすの方はもちろん、親子で見に来られていた方もいた。
(手術のシーンもあったので、子供にはきついかもしれませんが、泣き声は聞こえませんでした。)
いつもと違うお客さんで当映画を観るのは、不思議な一体感を感じる瞬間でした。