結婚してまだ日が浅いころ、母が入院した。

ショックでか、父の持病が悪化して父も違う病院に入院した。

 

母は自分の荷物などキチンと準備していたが

父に関しては私がせざるをえない。

突然あき家になってしまった実家の冷蔵庫の整理もしなければならなかった。

炊飯器に残ったご飯は炊飯器ごと持ち帰った。

 

ポストに不在連絡票が入っていた。

最寄りの郵便局に行く。顔見知りの局員もいるし、私が実家の娘ってことも知っている。

 

デモデモ。もはや身分証明書の名前(苗字)も住所も実家とは違う。

事情を説明しても、なかなか受け取り許可が出ない。

 

結局、実家で再配達待ちをして受け取った。

「指定の住所」に届けるのは問題ないみたいだ。受け取るのが誰であっても。

 

もはや、自分は実家とは関係ない人間なのだ、としみじみ思った。

 

後に義母が入院した。

「配偶者か血縁者でなければ」という場面もあったが義父や夫が対応できたからまだよかった。

 

義母の死後、当然様々な手続きがある。

病院でサインするのは日曜でもよかったけれど

お役所、銀行、すべて平日のみだ。

義父も夫も仕事がある。最後の入院から結構休みも取っているから休みにくい。

何より自分の仕事に支障が出てしまう。

動けるのは私一人。

 

委任状に戸籍謄本に住民票に、あらん限りの証明書を用意して事に当たった。

どうしようもないときは義母の姪に同行をお願いした。

 

「同居の長男の妻」には何の力もないのだ。

 

もう少し簡単な、デパートのカードの解約なんかは

私でもできたが、手続きに来た人の欄、その他に丸された。

 

その他なんだ、義母にとっての私は。

「女三界に家なし」の言葉がよぎった。

 

夫のときは配偶者だから簡単だった。

 

弟のときは血縁者だから、時に母の委任状が必要でもなんとかなった。

 

夫も弟も若かったから、関係者も同情してくれた。いたわってくれた。

 

義父の介護認定を受けるとき。

やはり実子でないとできないのだろう、と思い込んでいて相談に行った。

 

「実子じゃなくてもいいんですよ。普段の状況がわかる人なら近所の人でも構いません」

 

そりゃあそうかもしれない。

遠方の何も知らない実子が申請しても質問に的確に答えられるとは思えないもの。

 

な〜んかご都合主義だよなあと思った。

ようはお役所などが責任を持たなくていいシステムなんだな。

介護の世界には未だに「嫁」という言葉が生きている。様々な理不尽さとともに。