長塚京三 できるか、できないか、見極めの境地へ
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フランスで大学在学中の１９７４年に「パリの中国人」でデビューして以降、さまざまなキャラクターに成りきってきた。
「役に近づくことが“役作り”となっていますが、僕は逆に、役を自分に近付けることが役作りだと思っています。正直言って、まったく別の人格には、なかなかなれるもんじゃないしね。どっちにしろ、僕はこの声だし、この顔だし、こういう動き方しかできないわけだから、役を自分のほうに引っ張ってくるしかないんですよ」
教師、警官、医師、社長…、善人から悪役まで、次々に舞い込むオファーを難なくこなす秘訣は、そういうことだったのか。
とはいえ、手当たり次第に仕事を受けているわけではない。どんな役を選択するかは自分自身の判断。「この作品は面白くなる、という勘が一番かな」と笑いつつ、「でも、外れることもあるため、勘にばかり頼ってはいられません。結局は巡り合いの運だったりする。とはいえ、運がいいだけの役者というのも相当辛いですが」と、また笑顔。
運だけで成果は残せない。期待に応えるには力量が必要だ。
「若いときは、努力という名のがむしゃらさや強引さ、自分が頑張れば何とかなるんじゃないかという思いで立ち向かっていました。でも、若さの勢いだけでは、どうにもならないことが出てくるんですよ。それで冷めた目というか、なぜか冷静に自分を判断できるようになった」
「できないものはできないし、限られた時間のなかで成果を上げるには、できるかできないかをきちんと見極めることが大事だと思うようになった。それからですかね、いろんなことが見え、いろんなこと分かってきたのは。芝居は自分１人ではできません。助け、助けられ、お互い様なんですよ」
最新主演ドラマ「法廷家族」（ＢＳ朝日）では裁判官を演じる。妻に家庭を任せて仕事に打ち込んできたが、妻の死後、子供たちから「母さんがいたから、この家庭はコミュニケーションが成り立っていたの」と言われ、家庭内で遭難状態になってしまう役柄だ。
「一生懸命仕事をしているから実生活に疎いというお父さん、家のことはお母さん任せで何も分からないお父さんなど、世の中はそんなお父さんばっかりですよ。でも、僕は思うんですよ。家族は父親を責めるけど、じゃぁ子供や妻はきちんとお父さんのことを見ているのかと。挨拶ひとつにしたって、相手に気持ちをちゃんと振り向けていないと、そこから家族は崩れていきます。人生において、家族は一番の核。共通の話題がないから、と目をそらすのではなく、きちんとお互いを見なくてはいけない。結局、一番身近な家族を大切に思えない人は、どこへいっても、いつになってもダメだと思いますよ」
世のお父さんの気持ちを見事に代弁してくれる。
「父親というのは、非常に理解されにくいものです。特に仕事に関しては、子供や家族のためにやっているのに、そこの部分をわかってもらえない。でも、それでいいやではなく、仕事とは、人生とは、こういうものなんだと、見せるべきところはきちんと見せ、お父さん自身も元気になってほしい。お父さんが元気でないとしようがないからね」
家族の関係も「助け、助けられ、お互い様」が理想なのだ。（ペン・安保有希子 カメラ・小野淳一）
■ながつか・きょうぞう １９４５年７月６日、東京都生まれ、６５歳。７４年にフランス映画「パリの中国人」でデビューして以降、映画、舞台、ドラマ、ＣＭなど、幅広いジャンルで活躍中。日本アカデミー賞や毎日映画コンクールなど、受賞歴も多数。４月２７日からＢＳ朝日で放送される本格ホームドラマ「家族法廷」（毎週水曜午後１０時）で主演。
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フランスで大学在学中の１９７４年に「パリの中国人」でデビューして以降、さまざまなキャラクターに成りきってきた。
「役に近づくことが“役作り”となっていますが、僕は逆に、役を自分に近付けることが役作りだと思っています。正直言って、まったく別の人格には、なかなかなれるもんじゃないしね。どっちにしろ、僕はこの声だし、この顔だし、こういう動き方しかできないわけだから、役を自分のほうに引っ張ってくるしかないんですよ」
教師、警官、医師、社長…、善人から悪役まで、次々に舞い込むオファーを難なくこなす秘訣は、そういうことだったのか。
とはいえ、手当たり次第に仕事を受けているわけではない。どんな役を選択するかは自分自身の判断。「この作品は面白くなる、という勘が一番かな」と笑いつつ、「でも、外れることもあるため、勘にばかり頼ってはいられません。結局は巡り合いの運だったりする。とはいえ、運がいいだけの役者というのも相当辛いですが」と、また笑顔。
運だけで成果は残せない。期待に応えるには力量が必要だ。
「若いときは、努力という名のがむしゃらさや強引さ、自分が頑張れば何とかなるんじゃないかという思いで立ち向かっていました。でも、若さの勢いだけでは、どうにもならないことが出てくるんですよ。それで冷めた目というか、なぜか冷静に自分を判断できるようになった」
「できないものはできないし、限られた時間のなかで成果を上げるには、できるかできないかをきちんと見極めることが大事だと思うようになった。それからですかね、いろんなことが見え、いろんなこと分かってきたのは。芝居は自分１人ではできません。助け、助けられ、お互い様なんですよ」
最新主演ドラマ「法廷家族」（ＢＳ朝日）では裁判官を演じる。妻に家庭を任せて仕事に打ち込んできたが、妻の死後、子供たちから「母さんがいたから、この家庭はコミュニケーションが成り立っていたの」と言われ、家庭内で遭難状態になってしまう役柄だ。
「一生懸命仕事をしているから実生活に疎いというお父さん、家のことはお母さん任せで何も分からないお父さんなど、世の中はそんなお父さんばっかりですよ。でも、僕は思うんですよ。家族は父親を責めるけど、じゃぁ子供や妻はきちんとお父さんのことを見ているのかと。挨拶ひとつにしたって、相手に気持ちをちゃんと振り向けていないと、そこから家族は崩れていきます。人生において、家族は一番の核。共通の話題がないから、と目をそらすのではなく、きちんとお互いを見なくてはいけない。結局、一番身近な家族を大切に思えない人は、どこへいっても、いつになってもダメだと思いますよ」
世のお父さんの気持ちを見事に代弁してくれる。
「父親というのは、非常に理解されにくいものです。特に仕事に関しては、子供や家族のためにやっているのに、そこの部分をわかってもらえない。でも、それでいいやではなく、仕事とは、人生とは、こういうものなんだと、見せるべきところはきちんと見せ、お父さん自身も元気になってほしい。お父さんが元気でないとしようがないからね」
家族の関係も「助け、助けられ、お互い様」が理想なのだ。（ペン・安保有希子 カメラ・小野淳一）
■ながつか・きょうぞう １９４５年７月６日、東京都生まれ、６５歳。７４年にフランス映画「パリの中国人」でデビューして以降、映画、舞台、ドラマ、ＣＭなど、幅広いジャンルで活躍中。日本アカデミー賞や毎日映画コンクールなど、受賞歴も多数。４月２７日からＢＳ朝日で放送される本格ホームドラマ「家族法廷」（毎週水曜午後１０時）で主演。
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