幸子さんは言った。
「他人に与えることは大事です。
でも、ただ与え続けるだけの人は―貧乏神に好かれてしまうのです。
お金持ちになるためには、他人に与えるだけではなく、
他人から受け取らなければなりません」
「勤太郎さんは『いい人』になろうとしていませんか?」
幸子さんの言葉にどきりとした。 幸子さんは続けた。
「『いい人』というのは、他人を喜ばせるのではなく、
他人から嫌われたくないという気持ちから
自分の欲求を抑えつけてしまう人です。
でも、そういう人が何かを手に入れることはありません。
なぜなら―自分の欲求を抑え続けることで、
どんどん『やる気』を失ってしまうからです」
幸子さんの言葉を否定することはできなかった。
借金を返すあてもなく、自分の将来に対する不安をずっと抱えたまま、
僕はどこまで松田を応援し続けることができるだろうか―。
黙って考え込む僕を励ますように、幸子さんは言った。
「勤太郎さん、自分が望んでいることは口に出してください。
そして、他人を喜ばせるのと同じくらい、
自分を喜ばせるようにしてください」
幸子さんは、震える口を動かし続けた。
「自分の欲求を口に出すと、他人の欲求とぶつかります。
いい人ではいられなくなります。
でもそうやって欲求をぶつけながら、
それでもお互いが喜べる道
を見つけていくこと ―
それが、成功するための秘訣なのです」
水野敬也著
「夢をかなえるゾウ2 ガネーシャと貧乏神」より
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