2001年宇宙の旅

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共同執筆者  アーサー・C ・クラーク  
監督     スタンリー・キュービック
脚本     スタンリー・キュービック
キャスト   キア・ヂュリア
        ゲイリー・ロックウッド
        ウイリアム・シルベスター
        ダグラス・レイン  ほか
          
     1968年作品  2時間32分
 
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 この映画は偉才 スタンリー・キュービック監督(写真右)(「博士の異常な愛情」「スパルタカス」)が世界の科学小説界をリードする作家 アーサー・C・クラーク(写真左)の完全な協力のもとに作り上げた SF史上、いや映画史上、不朽の金字塔と賞される映画です。

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 キュービック監督とアーサー・C・クラークは宇宙に関する沢山の報告書や写真を研究し、NASAをはじめ英米の主要な科学機関、大学とコンタクトをとり、更に各方面の専門家や大手企業の協力も仰ぎました。この映画で地球から宇宙ステーション、宇宙ステーションから月への快適な宇宙旅行や、さらに8億キロも彼方の木星へ向かう探索旅行が描かれますが、その間に出てくる物、例えば宇宙船、月基地などから人工重力や人工冬眠の装置、自由に会話できるコンピューター、宇宙服その他どんな些細なものに至るまで専門家の意見に基づいて製作し、従って各シーンの撮影は困難と多大な労力を極め、準備やリハーサルに多くの時間をかけ全巻撮影に2年の歳月を要しました。


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 ソビエトが世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げたのが、この映画が製作されるたった11年前だということ、そしてアポロによる月面着陸がまだ達成されていない時代だということは、この映画の映像を見たら信じられないことと思います。それ程までにこの映画に描かれた映像全ては、長い年月を経た今でも最先端であり、決してどの映画にも遅れを取る物ではないことが断言できます。
 
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 この映画は映画の歴史に残る傑作であると共に、人類の素晴らしい知恵と発展に感激させられ、この映画で描かれる広大な宇宙に比べれば我々の地球は小さな存在であり、その中でつまらぬ紛争を繰り広げる人間の愚かさをも訴える映画として、絶大な位置にあると思うのです。

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 「ストーリー」
 今から400万年前、地球には人類の祖先である猿人が群を作って住んでいた。彼等の頭上には大空が広がり、周囲には広大な原野が広がっていた。ある朝、彼等の前に忽然と現れた不思議なものがあった。黒くそびえ立つ記念碑のような物体、彼等はその黒曜石のような物体に興味を示し触れてみるのだった。彼等はその後の進化を示すようなある道具を見つける。それは地上に横たわったある獣の骸骨から抜き取った一本の骨に過ぎなかったが、それを握った彼等は他の猿人に襲われた時に役にたつのを知った。武器であった。ひとたび道具を見つけた人類は進歩の道を突き進む。猿人が空高く放り上げた一本の骨は、高く高く突き進み、宇宙に届く。(とても印象深いシーンです)
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 場面は2001年我々は既に月に基地や植民地を持ち、地球と月との間には宇宙ステーションを経由して旅客船が定期に行き交っている。宇宙船オリオン号は地球から宇宙ステーションを目指して飛んでいた。これには アメリカ航空宇宙局のフロイド博士が乗っていた。彼はある秘密の任務で月へ向かっているのである。アメリカのケープケネディ空港を飛び立ってから1時間で宇宙ステーションに着いた。この宇宙ステーションは赤道の上空を1800kmの高度で地球を回っている。ふたつの巨大な車輪のような形をしゆっくりと自転をしている。もともとここは無重力だが回転によって生じる遠心力によって重力感が与えられ、我々は地球上と同じ状態で居られる。フロイド博士はしばらく広いロビーで休憩し、他国の旅行者と話をしたり、テレビ電話で家族と話をしたりして過ごした後、今度は宇宙ステーションと月とを結ぶユアリーズ号に乗り、月に向かった。そして二日後には月のクラビウス火口にある月基地に到着した。

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 ユアリーズ号は地上の発着台に到着すると発着台はそのまま地下の巨大な気密室へ降りて行き、それにより乗客は宇宙服を着ないままで基地に入ることができる。このクラビウス基地は月の南極寄りにあるので、地球は沈むことなくいつも地上線の少し上空で満月の50倍の明るさで輝いている。フロイド博士は基地の科学者たちと会議を持った後、彼等と一緒にムーンバスで北方にあるティコ火口へ向かった。博士の秘密の任務というのはティコ火口で発見された不思議な物体を調査するためだった。博士達が火口でみたのは 例の黒曜石だった。
400万年前、人間がまだ地上に現れなかった頃に宇宙からここを訪れたものが、地球にも月にも、何かのメッセージとして残していったものに違いなかった。

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 黒い石板は木星の方向に絶えず強い電波を送っていた。宇宙のある生物がここにこの黒石板を建てた物で、電波が送られてくる先に彼等が居るというのがフロイド教授らの結論だった。そして14ヶ月後、黒石板の謎を解くために宇宙探索船ディスカバリー号が地球から8億キロ離れた木星に向かって飛び立った。
 
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 宇宙探索船ディスカバリー号は長さが210m、先端が球形でその上部に操縦室、乗務員の居室などがあり宇宙ステーションと同じように、ゆるやかに回転して重力感を作り出している。球体の下半分には数台の一人乗り宇宙艇が格納されている。宇宙艇は調査や修理のために船外に出る時に用いられ作業用のマジックハンドを持っている小型の宇宙船である。ディスカバリー号には5人の科学者が乗り込んでいた。このうち3人は人工冬眠カプセルの中で眠っており、船内で活動しているのは隊長のボウマン博士とプール博士の二人だった。彼等の他に最も活動的異な乗組員が居た。それはコンピューターのHAL9000だ。このコンピューターは自由に会話ができ、宇宙船の全ての機械を操作し、チェックするスーパーコンピューターで、いつしか思考力や感情までをも持つに至っていた。

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 順調に跳び続けていたある日、HALは恐ろしいことを考え始めていた。HALは船外のアンテナが故障と言いだし、部品を取り換えるように命じた。宇宙艇で船外に出て調査したボウマンはおかしいことに気づく。船内に戻ったボウマンはHALに聞こえないように密閉した部屋で話し合ったがHALは読唇術で彼等の会話を読みとり、危険な反抗にでた。
 HALは船外に出たプール博士をひとりおびき出して宇宙の深淵のなかで命綱を切ってしまった。仲間が流されるのを見たボウマン博士はすぐに宇宙艇で飛び出し後を追ったがこれも遅く、今度はボウマンをも船に戻れなくしようとした。無理矢理船内に戻ったボウマンは助けを呼ぼうと冬眠中の3人を起こそうとしたが彼等は既に死んでいた。

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 ボウマンはHALの電子頭脳室に入り、航行に必要な部分だけを残して他は全て停止させた。HALは単なる自動操縦装置となり、コンピューターに船を征服される寸前で助かった。一人残ったボウマンはそのまま航行を続けた。やがて地球の1000倍もある巨大な木星の軌道に入ったとき、木星が従えた衛星の空間にかの大きな黒曜石が浮いているのを見つけた。ボウマンはその光景に引き込まれて行くうちに突然、宇宙の急流に呑み込まれるのを感じ、恐ろしい速度で大星団のなかを突っ切り、全く違った異次元の空間に辿り着く。そこは優雅な家具や装飾を施した古風なつくりの部屋だった。ただ一人、ボウマンはあたりを見回す。その隣にはあの黒曜石の石板が立っていた。次第にボウマンは歳老いて行き、横たわってその石板に救いを求めた。そうすると彼の姿はは胎児の姿に変わった。その胎児は 宇宙を眺め、地球を眺めて、いつしか生まれ出るのをじっと待つのだった。「END」

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 この映画は単なるSFではありません。もしかすると限りなく実際に近い、人間の本質を描き出したものではないでしょうか?、壮大で他に類を見ない歴史的な映画です。