偉大な生涯の物語


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製作監督 ジョージ・スチーブンス
キャスト マックス・フォン・シドー(イエス・キリスト)
     ドロシー・マクガイヤ(マリア)
     チャールトン・ヘストン(ヨヘネ)
     クロード・レインズ(ヘロデ王)
     ロディー・マクドウエル(マタイ)
     ビクター・ブオノ〔祭司長 ソラ)
     デビット・マッカラム(ユダ)
     テリー・サバラス(ポンテオ・ピラト)
     リチャード・コンテ(バラバ)
     キャロル・ベーカー(ベロニカ)
     シドニーポアチ江(シモン)
     ジョン・ウエイン(百人隊長)
     パット・ブーン(墓のそばの若者)
     
        
     1972年     3時間47分
 
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 「シェーン」や「ジャイアンツ」などのハリウッド・リアリズム派の第一人者を自他ともに許す巨匠 ジョージ・スティーブン監督がライフワークとして是非とも実現させたかった最高の作品、キリスト教を信奉する人々も、そうでない人もあらゆる国のあらゆる階層の人々に同じ大きな感動を持って受け入れられるキリストの人間ドラマを描いたものです。

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 彼はキリストの33歳の生涯を単なる聖書映画としてではなく、人間業を超えた奇跡の数々を視覚化し、神の道を現世に伝えるべく生まれて来た若者の人間的な孤独と苦悩にさいなまれる闘いの物語として描き留めたかったのです。彼の作業はまず、キリストおよびキリスト教に関して書かれた5万冊の資料の調査。それぞれ異なる30種類の聖書、6ヶ国に及ぶ翻訳版からキリストの言葉のひとつひとつを丹念に研究し、さらに世界の代表的な宗教家からの意見をもとにスティーブンスはビュリッツアー賞受賞作家で歴史家として著名なカール・サンドバーグらと脚本を書き下ろしました。


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 撮影地としては聖地パレスチナのキリストの歩んだ道をそのまま追おうとしたのですが、そこには2千年前の面影は既に跡形もなく、最後に選んだアメリカ南西部の広大な原野に2千年前の聖地の偉容を見いだしました。
 さらに難航したのはキリストを演じる俳優の選定でした。キリストに酷似の容姿を持っていても他の役柄で既に大衆に親しまれていてはいけないし、如何に卓越した演技力を持っていてもキリストのイメージを壊す人ではいけません。こうして世界中の候補者数百人を検討し、スティーブンスが白羽の矢を立てたのがマックス・フォン・シドーでした。
そうして出来あがったこの映画は創立20周年を祝賀する国連が大々的なワールド・プレミアを主催して話題を呼びましたがこれはハリウッド史上初のことでした。

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「ストーリー」
 処女マリアが神の子イエスを生んだのはユダヤのベツレヘム。貧しい旅の馬小屋でした。大工ヨセフとナザレの村を発ってようやく辿り着いたこの町の宿屋には部屋が無かったのです。星を頼りの長い旅の末、その馬小屋を探し当てた3人の東方の博士達は飼馬桶の中に安らかに眠る御子を伏し拝み、救い主の降臨を祝ったのですが、まもなくヨセフは身に迫る危険を感じて親子共々エジプトへ逃れたのです。
 ヨセフの不安は当たっていました。残忍な野心家ヘロデ王は予言されていた救世主の誕生を知って、耐えられぬ不安と恐れからベツレヘム近辺の2歳以下の幼児をことごとく殺せと部下に命じました。ヘロデ王の刺客が3人の博士の後をつけてイエスのもとへ迫っていました。結局 ヘロデ王はイエスの殺すことはできませんでしたが・・・・。 

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 毛の皮をまといイチゴと野蜜を食べて生きる禁欲の人ヨハネは、ローマの圧制に苦しめられた民衆に天国の到来を告げました。彼の言葉は村から村へ町から町へと伝わり。彼の洗礼を受けるためにヨルダン河畔に人々は群をなして集まりました。
その中にイエスもいたのです。ヨハネは自分の目の前に現れたイエスを見たとたん不思議な感動に打たれ、この人こそ待ち望まれた救い主だとすぐに悟ったのです。ヘロデ王の息子が王位についたころ、イエスの御名を讃えるヨハネに我慢がならず、彼を捕らえて土牢に閉じこめてしまいます。イエスは12人の使徒を選び伝道をを開始しました。その使徒は職業も性格もさまざまでしたが、皆イエスを知り人生を変えたものばかりでした。
なかでもマタイは無慈悲な収税所の長、ローマの手先としてユダヤ人に嫌われていましたが、イエスに命じられて後に従ったのが彼の人生の再出発になりました。

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 四方八方へ足を伸ばして伝道の道すがら、イエスが起こした奇跡は数えられないほどでした。歩けない人の足を立たせ、盲人の目を開かせ、中風やらい病患者など不治の病をもたちどころに癒して見せました。行く先々に千も万もの病人が群がり集まって治療を乞いました。イエスが人間にされた奇跡中最高のものは 死者の復活 それは最も感動的な ラザロの復活です。ラザロはベタニアの村の富豪でした。病で命を落としイエスが村に着いた時にはすでに4日間も墓の中に寝かされたままでした。ラザロの妹 マルタとマリアの嘆きや願いを聞くと、イエスはひとり墓地に入り天なる父への祈りを繰り返しました。白い布に覆われたラザロが墓の中から歩み出てきたのはそれからまもなくでした。

 
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 人々のすさまじい熱狂の中。イエスはエルサレムに入城しました。一方 イエスに集まる人々の信望を見て心安からぬ思いに焦ったのは祭司や長老や学者たちでした。権威をかさにきて民衆の心を欲しいままにしていた彼等にとって新しい神の道を説くイエスの存在は邪教以外の何者でもありませんでした。12人の使徒の中でもイエスへの不信の気持ちを抑えきれなかったのがユダでした。期待や希望を裏切られたと思い信頼感を失っていったのかもしれません。わずか金貨30枚の報酬でイエスを祭司長へ売ってしまいます。しかしユダはイエスが捕らえられて法廷へ引かれるのを見たとき自らの裏切り行為の恐ろしさに打ち震えて・・・・・。
 捕らえられる前日イエスは弟子達に囲まれて最後の晩餐を取りながら、あなたがたの一人が私を裏切っていると静かに語り、暗黙のうちにユダに悔悟を求めるのでした。翌日宗教裁判の法廷に引き出されイエスは涜神罪による死刑を宣告されるのです。

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 刑場へ向かう時が来ました。鞭打たれ、いばらの冠を被され、重い十字架を担がされてイエスはよろめきながら歩いたのでした。いばらに刺されて額や頬に血を流しながらイエスはゴルゴダの丘へと歩き続けました。若い女ベロニカは汗と血潮に汚れた主の顔を優しく拭いて変わらぬ讃美の思いを白い指先に溢れさせました。クレネのシモンもイエスとともに十字架を背負い重さを分け合った一人でした。
 イエスは衣服を剥がされ両手首に釘を打ち込まれてその十字架はすでに処刑を待っていた二人の強盗の間に立てられました。その姿を見て母マリアやイエスに使えてきた女達の悲しみと祈りの声が溢れました。イエスが息絶えたときすさまじい雷鳴と共に豪雨になり、暗黒が地の全面を覆いました。この奇跡を目の当たりにしたローマの百人隊長は初めて言いしれぬ恐れに身を震わせたのでした。
 
 
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 イエスの死体は十字架から外され、香料と亜麻布に包まれて新しい墓に納められました。その墓は大きな石で戸口を締められ兵士たちによって封印され番をされていましたが、ある朝大きな石の扉が除かれ、忽然として死体は消え去っていました。
人間の力をもってしては神の子を封じ込めることはできません。予言通り イエスは死の三日目に再び甦って、復活の奇跡を成し遂げたのでした。
 

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 キリストを描いた映画や聖書の物語を題材にした映画は数多くあります。また、これからも描かれてゆくに違い有りませんがこの「偉大な生涯の物語」に匹敵するスケールや内容のものは無いと言えるでしょう。

パンフレット 昭和47年4月発行  東宝株式会社 事業部