眠れない。


今、何時だ?

真っ暗な部屋でぼんやりと光るデジタル時計を見ると、「02:20」の表示。


…何か飲むか。


俺はベッドを抜け出してプライベートキッチンにあるカウンターバーに向かった。

シンと静まり返ったキッチンの明かりをつける。グラスに氷とカットしたライムを放り込み、ドライ・ジンを注ぐ。グラスの中で氷が重なる音が、やけに大きく感じられた。


ベッドルームに戻ってひと口飲んだ。
「不味い。でも、何もないよりマシか…」

ため息と一緒に言葉が漏れた。全然眠れる気がしない…。ふと、サイドテーブルの上のモバイルに目をやるとチカチカと光っている。メール…?一体誰がと思ったが、すぐにBeckieからだと気づく。昼間電話で話したときに、後でメールすると言っていたから。

Beckieからのメールには写真が添付されていた。そこには、釣ったばかりの大きな魚を自慢げに抱えて、満面の笑みで写るあいつの姿があった。相当寒いんだろう、鼻が真っ赤だ。おまけに、しっかり雪焼けしている。


「美人が台無しだな…」


どれくらいの間、モバイルの画面を眺めていたんだろう。ジンが入ったグラスの中で、カランと揺れる氷の音がした。よく見ると、メールにはメッセージがあった。


          『luvya!!』 


…まったく、こんな暗号みたいなメッセージを送りつけやがって。

普通に「I love you」って送れないのか。そんなことを考えながら、俺はずっとモバイルの画面を眺めていた。


こんなふうに、文字として残るのもいいものだな。


いつだったか、Beckieがプリプリしながら口を尖らせて俺に言ってきた。
「ギルって、メールも電話もあんまりくれないよね。メール苦手だったらテキストメッセージでもいいのに。モバイルに全然着信がないと、けっこう寂しいんだよ」


今ならおまえの気持ちが少しはわかる。

俺はテキストメッセージの画面を開いて文字を入力し始めた。正直、本当に苦手なんだ、こういうの。だって照れくさいから。言わなくても、伝わるだろ。俺がどんなにおまえを想っているか。


でも、言った方が伝わるよな。
言わなきゃわからないときだって、あるよな。


きっと、無理に飲んだジンがまわって酔ってるんだ。
そうじゃなきゃ、こんなことしない。
普段の俺なら、絶対しない。
でも、これでおまえの笑顔が増えるなら、たまには送ってやってもいいぜ。



          『 i luv u 』