「部屋とワイシャツとわたし」じゃないですよ。
皇帝という曲がこんなにもおもしろく素晴らしい曲であったのは知らなかった。
むしろなんだか物足りない。
なにせ協奏曲というジャンルはソリストとオーケストラの駆け引き、ときに闘い、葛藤から生じる濃厚なドラマ、こういう構図を意識している。
ところが皇帝にはそんなシーンは少ない。葛藤というよりむしろお互いを補強しあっている、助け合っている。友好関係なのだから激しさを期待していては肩透かしをくらう。
それが彼らの演奏を聴いていて見る目がかわった。
ウィーン・フィルというオケは、文字通り一体だ。
管楽器(木管と金管ともに)はどこも融合しあっていて、各楽器のつなぎめが分からないほどだ。
それがホルンでも同じで、木管からいつホルンに変わったのだろう?と感嘆して聴いていた。
はっきり言って協奏曲だけのプログラムには不安があった。
重厚な交響曲がないからものたりないんじゃないか、と。
しかしそんな心配は皇帝の一楽章を聴き終ったときにはふっとんでいた。
いつもながらのウィーンならではの弦のやわらかさ、輝かしさ、これはこのオケだけの色彩だ。
それにブッフビンダーのベートーヴェンへの解釈と演奏技術。
なにがどうなっているのかわからんぐらいすばらしかった(笑)
メジャーなピアノ・ソナタだけを集めたアルバムを以前聴いたときに、このピアニストの安定性の高い実力とこれぞ正当な解釈!といえる演奏に瞬時に気に入ってしまったものだ。
それにしてもベートーヴェンという作曲家は精神性の高い曲を書いた。
聴いているだけで、一歩も二歩も自分が精神的に高くなったような気がするのだ。
彼等の演奏ではそれがはっきりと実感できた。
なんとも言えぬ高揚とした気分のまま、一緒に行ったお友達とイングリッシュバーにいき、ルービーと音楽の会話でたのしいひと時をすごした。
これだからウィーンはやめられない!