
■ミヒャエル・ハネケ監督はじっと人間の様を見続ける。
どんな苦しい状況でも決して目をそらさず、“人間の行動”を見続ける。
たとえば冒頭のコンサートシーン。
舞台では教え子がシューベルトの即興曲を弾いているが、キャメラは観客だけを撮る。
そのなかにまだ身体の自由がきいて、とても幸福そうな主人公の老夫婦を見つける。
舞台がフランスのアパルトメンだから絵になるが、これが日本だったら息苦しすぎて観ていられない。
エマニュエル・リバの演技はこれが映画であることつい忘れてしまうほどの迫真をもっていた。
淡々としたなかにも濃厚なドラマが色濃く渦巻いている。そういう演出がとてもすごい。
人が歳をとるというのは、さも悲しいことだ。
それを無理くりに肯定的にとらえようとする風潮が日本にはあるが、それこそが現実から目を背けていることになる。
ここ数日はあの老夫婦のことが頭から消えないことだろう。
パルムドール受賞は当然ともいえる作品だった。