現実の日本にはあんなふうな淡い幸福につつまれた人々はほとんどいない。
愛する人の死という不幸を描いているが、どこか現実ばなれした安心さとあかるさのためか、あまり共感できなかった。

快活で美しく思いやりのある人々に囲まれたあのような環境はまさに“映画だけの理想郷”であり、日頃我々が暮らす社会とは大きな溝がある。
これが違和感として終始あたまの片隅にあった。
小津さんの“東京物語”のオマージュとしての意識が強いからこう感じたのだろうか。

現代の日本社会を悩ます問題を提起するのでなく、観客にいっときの夢を見させるのが狙いだとしたら成功している。

が、空虚な家族間、孤独な社会といったテーマを本気で考えてもらいたいのだとしたら、あまりにもゆるすぎて俺には伝わらないどころか反発すらおぼえる。

あんな素敵な人たちに囲まれたしあわせな生活は、しょせん映画のなかだけにしかいない、と。