
それ以外はと言うと、じつはそれほどでもなかった。
犯人は誰だ?といったサスペンス作品としてそれほど重きを置いていないように見える。
では一体なにを主眼において観てゆけばよいのか、焦点が定まらないまま、幾多の出演者が登場し、その整理につかれる。
映像はたしかにいい。フィンチャー監督らしいダークでモノトーンな世界で物語がすすんでいく。
冒頭のクレジットは多少やリすぎ感が否めないが、音楽は最高。
昔見たプロレスで悪役が登場するときのテーマ曲のアレンジで、この映画にあっている。メタルチックでクール。毎朝これを聴きながら出勤しているくらい気に入っている。
クライマックスシーンは、秀逸だった(以下、若干ネタバレあり)。
フィンチャー監督の十八番ともいる人間の狂気がリアル感をもって描かれた。
ミカエル(ダニエル・クレイグ)が絶体絶命の危機におちいったシーン。
犯人は少しも慌てることなく連綿と死にゆく人へのセリフをはく。
このセリフが怖い。そうか、犯罪者にとらえられた人間はそうやって希望をうしなってゆくのだな、ってのがよくわかるから怖いのだ。
その後のリスベットのセリフもいい。
「殺してもいい?」
マーラは今年のアカデミー主演女優賞にノミネートされているのをみてもうなずけるのだが、ほんとにいい演技をしている。
幼いころから心を病み、つねに精神的に不安定で、人とうちとけず、タトゥーとメタルな格好で己の身を守り、ほそぼそとしか暮らせない。あの目つきとあの態度。
しかしハッキングの腕前と捜査能力は桁外れに高い。
ミカエルとはじめて心を通じあう“ともだち”となるが、そこには恋愛感情もまじっている。
ラストシーン。ここも印象的だった。
女性編集者と仲むつまじく歩くミカエルを下からみつけるリスベットは衝撃をうける。
あれはあれでよかった、でも、ここを違った味付けにかえてもいい。
ミカエルが一人でオフィスから出てくる。
リスベットは下の道からそれを確認し、物音か何かで自分の存在を知らせる。
振りかえるミカエルに向かって、無造作にプレゼントを投げつける。
かろうじて受けとるミカエル。瞬時、見つめあう二人。
その間に耐えられなくなり、リスベットは突然バイクに乗って走りだす。
ミカエルはプレゼントの中身を見て、矢も立っていられず、急いでリスベットを車で追いかける。
でも、こうしちゃうと、安直になって、ほろ苦さがなくなってしまうな。
“セブン”のときもしょうだが、フィンチャー監督作品には、なにかひじょうに冷たいものを観てしまった、という特殊な気持ちになる。