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■映画というのは天候が重要だ。

小1のときに映画館で観た“ジョーズ”はあのとおりのパニックサスペンス映画だけど、晴れたシーンが多いせいで、あかるく活発的な雰囲気が全体を覆っていた。そのために子供ながらにアメリカ社会の良き雰囲気を感じとれたものだ(スピルバーグはわざとそういう雰囲気が出したいがために晴れるタイミングで撮影したのではないだろうか)

その正反対がこの“ウィンターズ・ボーン”だった。
空はつねに厚い雲が覆って太陽の光がとどかないから、画面は薄暗い。
まれに晴れのシーンがあるが晴天ということではなく、か細い冬の光程度しかとどかない。

そのなかで17歳の女の子リーの苦闘を観客は見つめる。

実にリアリティにとんだ演出だ。
細部までもアメリカ郊外の貧しい暮らしぶりが描かれている。途中、これは映画なのか?と見誤ってしまう瞬間があったほどの現実感。

主人公の強靭さ、凄まじさも凄いけど、周囲のキャラクターのどれもが相当濃厚。クセものぞろいだ。

なまはんかなシーンはない。
主人公の17歳の女の子ったって“女の子”という甘ちゃんなワードはそぐわない。17歳の人間というべきだ(なんかヘンか)。

まあそんなことはどうでもいい。
この映画は誰もが抱えている魂の底をストレートに描き、暗く希望がないようだけど、その実人同士の結びつきが強い。
厳しい言葉のやりとりをするがどこかで信頼関係は壊れない。日本のように淡白で無表情な関係じゃない。そこに温かみがあり観客の共感がうまれる。

ラスト近くで響きわたるチェンソーの轟音が耳から離れない。
あそこでチェンソーを使うのがいかにもアメリカらしい。残酷で合理的。
日本だったらもっとなまなましい方法になって後味が悪くなるだろう。

こんな映画をもっと観たいものだ。