
映画を観るにしても借りていた“第九地区”の続きのあのグロテスクな映像は、なんだか気持ち悪くなりそうで気乗りしない(そうは言ってもこの映画、なかなか新しいアイデアが多くおもしろいのだ)。
そこで、ふと、黒澤さんかたけしさんの映画が観たくなり、ディスクをあさると目にとまったのが“椿三十郎”。
これだな。
さっそくマシーンにディスクを入れて再生ボタンを押す。NHKのを録画したもので、解説につづき本編が始まる。
(クレジットはとばした)古寺に集まった若侍達の緊迫した面持ちから映画は始まる。
若大将も青大将もまだまだ“青く”貫禄がない。若侍にはうってづけといったところだ。素人のような緊張感もうかがえる。
そこに貫禄たっぷりの三船敏郎があくびをしながらゆうゆうと登場する。
空気が一変する。ここが実にかっこいい。これほど頼もしいキャラクターは、どの映画を探してみてもそうは見当たらない。
そして敵方の侍集団に古寺を包囲され万事休すといった場面で、三十郎のアイデアが活きる。
扉がばらっと開いて、のっそりと三十郎がでてくる。寝入りを起こされて機嫌がことさら悪いと言い張る。
ずかずか入り込む敵の侍を強力な腕で外におっぽり出す。
そして階段を降りるシーン。ここがすごい。
威厳、威圧、貫禄たっぷりにスっスっと降りていくが、これを見た侍どもは怖気づく。階段を降り姿を見ただけで「こいつは只者じゃない!相当な遣い手だ!」と分かるような動きなのだ。
それに音楽。
ここで流れるのは武満作品のような、どこか背筋が寒くなるような、この世のものじゃない出来事を見ているかのような“寒い”音楽なのだ。
その直後に炸裂する三十郎の刀さばき。エピソードによると三船さんは息をしないで一気に斬りまくるらしい。その迫力たるや!!鳥肌が立つほど爽快でかっこいい!
この映画は、TV画面で観ていても緊迫感が伝わる。
思えばこの映画を中二のときに観て、すっかりクロサワさんに夢中になったものだ。
このとき一緒に中一になった娘も歯磨きしながら見ていたが、ときおり歯磨きが止まってしまい場面に引きつけられていた。
そうだろう。こういう映画を若いうちから見せて本物を教えていくことが必要だ。
そうなると今のTVでは満足できなくなるかもしれないが、それこそがまともなのだ。