■近頃、酒はなんでも飲むようになってきやがったね。

昨晩だって、おめー、あれだよ。

西洋音楽っちゅーもんを聴きながら第三の麦酒モドキを呑んでいたんだけどよ。その酒に飽きたら冷やしといたポン酒をぐびぐびとやった。

これが美味い。

酒ってのは冷やすとなんでも美味いのかもしれねーな。

前に呑んでいたウイスキー角瓶の空いたヤツにそのポン酒を入れといて冷やしといたんだよ。もういつでも手軽に呑めるよ、これ。

そんとき聴いていたのがロベルト・シューマンっちゅうーさ、なんか崎陽軒みたいな名前のオッサンが書いた交響曲第二番(謝意ー指揮)だ。

これはえらいロマンチックに響いたねー。

ロマン派の曲を久々に聴いたからってのもあるが、酒とともに臓腑の隅々まで染みてきやがったよ。

そんですっかりいい酔い心地になっちまったぜ。

そのポン酒があっという間になくなっちまったから、今度はその瓶にソ連のKGBが密造したっていうウオッカを注ぎ足してね、それをやりだしたって寸法よ。

これがまた甘くて意外にもうまいんだ。おりゃーすっかり気にいっちまってさ、これもぐびぐびってやっちったね。

でもまあ、こりゃアルコールが濃いんだわ。

悪酔いしちゃあいけねーってんで、間にみずぅ飲みながらだったけどよ。

まあ、それもいいだろ。

そんで音楽に戻ると、昨日はその前にレイディオで庄司さやかとカシオーリとかいう若造たちがベートーヴェンのクロイツェル・ソナタをやってやがってさ。

おれが一番好きなヴァイオリン・ソナタのクロイツェルだよぉ。

それがあいつらおもろい演奏してやがんの。

なんちゅーか、テンポをじっくりととっててさ、現代的な寂しさのなかにじつに意味深い表現をしやがってね。いや、これにはつくづく感心したねぇ。

あんなクロイツェルは聴いたことがなかったぜ。

いやー、たまげた。

そうだ、それが発端だったんだ。

そんないいもん聴いた日にゃ酔わずにいられっかい!てんでさ、このとおり呑んじまったんだぁ。


しかし、いいね。

いい音楽を聴きぃながら美味い酒に酔うっちゅーのはさ。

これほど愉しいことがこの世にあるとは思えないね。

え?他にあるかい。

ねーだろ。そんなもんあるわけねーもの。

そうそう、そんで最後に聴いたソ連のチャイコフスキーの悲愴ってやつ。

またこれが陰険で暗い曲なんだけど、これがまたいいだよ。

悲しいけどあたたかい。酒によく合うっていう点でもこりゃいい。

それをフリッチャイっていうどっかの鳥の雛の頭みたいな指揮者がいてさ。そいつがやった第一楽章のデフォルメにはまいったね。

いきなしコーダで急ブレーキかけやがってさ。おどろいたのなんの。

まるでそこの角曲がったらいきなりばかでかいお化けに出会ったみたいでさ、めっさびっくりしたぜー。

でもよ、そこんとこが気に入って何度も繰り返し聴いちゃったよ。

そうこうしているうちにすっかり酔いがまわってきて、いきなし眠くなっちまったから、ばたんと布団に倒れてぐーぐーって、そんでおしまい。


そういう健全なミッドナイトの夜でした、ってこと。



じゃんじゃん!