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■黒澤作品『夢』のなかに“赤富士”というエピソードがある。
今回の原発事故の報道を聞くたんびにこの“赤富士”をおもいだす。

“夢”は黒澤明監督が実際に見た夢を映像化したもので、7話くらいのオムニバス作品だ。
“赤富士”は正直なところあまり印象には残っていない。
その他の“狐の嫁入り”やゴッホの話、帰還兵の話、ラストの明るい葬儀のエピソード等ははっきり覚えているのに、“赤富士”の印象はうすい。

この“赤富士”は、6基の原発(福島第一原発と同じ数!)がなんらかの事故で爆発し、その連鎖で富士山までもが大爆発をおこす。真っ赤に燃えあがる富士山。
人々がパニックになりながら逃げ惑うというストーリー。(でもいったいどこへ?)
(たしか放射能汚染で奇形した植物とか鬼も登場したような覚えがあるが、定かでない)。

これを観た当時、こんなことがほんとうに起こるわけがない、とぼくは信じきっていた。
原発は安全な設備だと、なんの根拠もなく信じさせられていから、黒澤さんは心配性だなー、っておもっていた。

でもそれがたんなる夢(フィクション)じゃなくなってきている。
いまこの瞬間、ニッポンの原発は事故を起こし、放射能が漏れ出ている。
天国にいる黒沢明はどんなおもいで見ているだろうか。

“30Km”圏内にいる人達の悲痛なおもいは想像すらできない。
それと“30km”圏”外の人々は、“夢”のように逃げまどわないにしろ恐々としている。
唯一の情報源である政府・東電関係者の発表を信じるしかない。


でも、どうもひっかかるのだ。その言葉、言い方に。

「ただちに健康に影響を及ぼす数値ではありません」

この繰り返し。なんとか大学の教授にしても同じフレーズ。
これがどうも信用ならないのは僕が天邪鬼だからだろうか。
“ただちに”ではなく“長期的に”接するとどうなるのか。

このフレーズは、駄々っ子をただなだめているのと同じで、かえって嫌疑は深まる。
正直で密な情報を提供しないかぎりは我々の不安がふえ、醜い風評は行き交い、当地の産業が大打撃をこうむるはめになる。


風評や噂は卑劣なものだけど、どんな人間社会にもかならず存在する現象だ。

根拠のない人づての噂に惑わされないようにするしかない。