つづき・・

●アークヒルズ内のイングリッシュバー(夕)

ボブと与太郎、話しながらテーブルに帰ってくる。

それぞれの手には黒ビールの入ったグラスをもっている。

ボブ「ろいくーなルービーなんて久々だけど、まいうーだよな」

与太郎「なんやそれ?なに言うてのかわからんわ」

テーブルにつく二人。

ボブ、ふとテーブルの下をみる。

ボブ「あれ!カバン、ないぞ」

与太郎も慌ててテーブル下を見る。

与太郎「あ!ほんまや!」

ボブ「盗られたか?」

与太郎「(険しい表情で)マジ?」

ボブと与太郎、キョロキョロとまわりを見渡す。

みんな陽気にくっちゃべっている。

ボブ、隣のテーブルにいるロッシーニと目があう。

ロッシーニ、ぎこちなく微笑む。

ボブ「あれぇ、ロッシーニじゃん」

与太郎「え?誰それ?」

ボブ「なんやオマエ、ロッシーニも知らんのか?有名な作曲家じゃん。(ロッシーニに向かって)ねー!」

ロッシーニ「(威厳たっぷりに)さよう」

与太郎「へー、スゲーな。これが作曲家ってヤツか。オレはじめて見たわ」

ロッシーニ、得意気に与太郎に微笑む。

ボブ「あ、で、ロッシーニさあ、ここにあったオレ等のカバン知んない?」

ロッシーニ「さ、さあ‥」

慌てて赤ワインを飲むロッシーニ。

ボブ、怪訝な表情でロッシーニを見る。

ボブ「ふーん、そっか。ま、盗られてもいいか。どうせ大したもん入ってなかったし」

与太郎「え?そうなの?」

ボブ「うん。オレってさ、よく酔っぱらってモノとか無くしちゃうからさ、基本的にカバンにはなんも入れないんだ。まあ、つまらん資料だけは入っていたけど」

与太郎「ああそうなんや!オレもや。オレも1ヶ月に一回はカバンなくすから、チョウ安物のカバンしか持ってないんや」

ボブと与太郎、ゲラゲラ笑う。

ロッシーニ、自分のテーブルの下を気にする。ロッシーニの足元には大きなボストンバックが置いてある。

与太郎「あ、そんでロッシーニさんはどんな曲書いてはるんですか?」

ロッシーニ「え、えーと。そうじゃな。みんなが知っている曲といえば、『ウィリアム・テル』・・かな」

与太郎「ああ!それね!知ってる知ってる。ひょうきん族でながれてたヤツやろ」

ロッシーニ「ひょうきん・・?」

ボブ「むかしさ、あったんだよ。そういうテレビがさ、ロッシーニは見てないの?」

ロッシーニ「たぶん、その頃はまだイタリアにいたからね」

与太郎「あ、ロッシーニはイタリア人なんだ」

ロッシーニ「(威厳たっぷりに)さよう」

ボブ「でも日本語うまいよね!さすがロッシーニだよ」

ロッシーニ、照れて頭をかく。

ボブ「あとさ、まだ有名な曲があるじゃん」

与太郎「へー、どんなん?」

ボブ「(ロッシーニに向かって)ね」

ボブ、ロッシーニを見ながらルービーを飲む。

ロッシーニ「なんでしたっけ?『アルジェのイタリア女』かな・・」

ボブ「違う違う!ほら、どろぼう・・」

ボブ、ロッシーニをニヤリと見つめる。

与太郎「え?泥棒?」

ロッシーニ、ボブから目を離さすに、ゴクリとツバを呑む。


つづく・・・