■昨日はベートーヴェンのピアノ・ソナタ第32番(作品111)を何回も聴いた。

ウィルヘルム・バックハウスとマウリツィオ・ポリーニの演奏で。

この2楽章では、厳粛な静けさのなかのつぶやきから、徐々に高揚していってついにはジャズを思わせる軽快でリズミカルな展開になる。


ベートーヴェンは、最後のピアノソナタでなぜこのような展開にしたのか?

それがずっと気になっていて考えていた。


ベートーヴェン書簡集(岩波)を見てみると、この時期に平行して『ミサ・ソレムニス』も作曲していることがわかった。

よくベートーヴェンは複数の作品を平行して作曲する。

有名なところでは交響曲『運命』と『田園』。

相反するものを同時につくりだすからこそ、それぞれの作品が深みを増す。

より真剣に、より明るい作品になる。

これもバランスの特性だと思う。

ユーモアあふれる冗談的な考えがないと、反対の真剣な思考も浅くなってしまう。

僕はベートーヴェンの作曲技法から、いつのころからか、そのことを意識している。

平坦で真面目ばかりでは、なんに面白みも新しい発見などはない。

人生もそれと同じ。


後期ピアノ・ソナタではソナタ形式にとらわれず自由に作曲したという。

このジャス風な展開は大いに意表をつくものだが、ベートーヴェンの自由な精神を表していると思う。

ベートーヴェンのこういうところがいい。


双生児である『ミサ・ソレムニス』はまだ聴いたことがないので、今度聴いてみようと思う。