
■はオレ
□はオノチン
ともに就職して5年目の“オレ”とオノチンは比較的仲がいい。
久しぶりに会社がえりの道すがら、缶ビールを片手にもち、歩きながらくっちゃべっている。
■「昔さ、オノチンさ、死んじゃいたいときがあったって言ってたじゃん。アレって最近分かるような気がするわ」
□「いきなりくるね。なんで?なんかあった?」
■「いや、とくに深刻なことがあったわけじゃないんだが、なんかこの先、ずっと生きていても面白いことなんかなくて、このままグレーな生活しかないのかな、と思ったりするんだ。そうすっと、生きていても死んでも同じことじゃないかと思ってさ。」
□「なんだよそれ。なんか空しいのか?」
■「うーん、なんだろう。年齢のせいもあるかもしれないけど、近頃さ、なにごとにも情熱が湧いてこないというかね。どこかつまらないんだよね。そんで、よく新聞の人生相談とか見てみるんだけど、どうもその回答が違うんだよな。けっこうある回答としてさ、『本とか読んで広い知識を身につけて自分を磨くといい』みたいなこと書いてあるんだよ。でも、それってちょっと違う気がしてならない。そんな簡単じゃないもの。本読んだって人生が変わるくらい物凄い衝撃を受けるとも限らないしさ。それに、なんだか通り一辺倒だなってね。読んだことある?人生相談のコーナー。」
□「いやー、オレはあんまりないなー。でも、よく言われるよね。生きる意味を見つけるために読書とか芸術とか。でも、それはどうもピンとこないよな。そんなこと言われていきなり古典の本とか読んでも意味わかんないで辛いだけだと思うし。音楽聴いても退屈なだけだろうな。」
■「そうなんだよ。ちょっとズレてる。かといって、何が有効だと思う?こうして酒飲んでるときは悩みも深刻でなくてさ、気分は上向きじゃん。反対に酒の魔力がなくなったときの落ち込みようは酷いよ、最近。オレってビョーキかな?」
□「まあ、それほどじゃないだろう。そんなことはみんなあると思うぜ。とくにこの季節はさ。それよりもう入ってないだろ?あそこのコンビニでもう1本買おうぜ。」
2人は缶の底に残ったビールをぐっと飲んで、ampmでサントリーモルツ350mmlを買って出てきた。さっそく缶をあけ「んじゃ、かんぱーい!」と缶をならす。
つづく・・・