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■ブラームス作曲ピアノ協奏曲第1番、レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック、piano グレン・グールド(ソニークラシカル)。
「WHO’S BOSS?」というちょっとしたスキャンダルスな記事が1962年のニューヨークの新聞に載った。
指揮者とソリストの解釈の違いによるトラブル。
意見交換などをしても最終的にお互いの主張が食い違った場合、どちらかが譲歩しなくてはならないことは多いだろう。

この演奏開始直前に指揮者バーンスタインが聴衆に説明する。
「ボスは(指揮者と独奏者の)どっちでしょう?」
食い違いはテンポによるものだ。グールドが楽譜を丹念に研究した結果から見出したテンポは当時非常に遅いものだった。
バーンスタインはこのテンポを嫌った。
そこで両者とも納得しない状態で本番当日を迎える。
グールドはドタキャンの常習犯だったから、この日ももしかして?・・と演奏者、スタッフに不安が高まる。
しかし、バーンスタインが折れる形で演奏は実現したのだ。
その理由は、バーンスタインがグールドを大変尊敬していたからだ。
音楽性もさることながら、その人間性も・・。
そのバーンスタインの聴衆への説明もこのCDに収録されている。
ときおり笑いが起きるくらい、聴衆もこの出来事を楽しんでいる様子だ。
バーンスタインの語りはプロ級だ。
■そして演奏(CDではモノラル)が始まる。
聴いてみるとそんなに遅くは感じない。
しかし丁寧で確信に満ちた足取りで曲は進む。
確かに、かなり説得力に満ちた演奏だ。
一度聴くと途中で止められない。
やはりグールドは並外れた才能の持ち主なのか。

僕がこの曲で最も好きな箇所は第1楽章の最初にピアノが弾きだすところ。
若きブラームスの青春時代独自の淡くてとてつもなく熱い心の想いが、苦しそうに表現されている。
ここを聴くと、かつて経験したことがあるかのような楽しくも息苦しいような想いが錯綜するのだ。
ここでのグールドの演奏は今まで聴いたことがない表現だ。
淡々としている。が、何か深いものがあるのだ。
その他、強弱のつけ方も面白い。
もちろん単に奇をてらうだけではないことは分かる。
それに、ニューヨーク・フィルの上手さに驚く。
自信を持って堂々と演奏を繰り広げている。
バーンスタインの棒の下で各人が伸び伸びとプレーしている。
最近のニューヨーク・フィルは聴いていないが、このときの同フィルは確かに黄金時代だった。