ベートーヴェン:劇付随音楽「シュテファン王」序曲 Op.117
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調 Op.58
マーラー:交響曲第1番 ニ長調「巨人」
ピアノ:レイフ・オヴェ・アンスネス
管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団
指揮:エサ=ペッカ・サロネン
S22,000 A18,000 B14,000 C10,000 D7,000
(2013.2.8、東京・サントリーホール)
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当団は伝説的なEMIの録音プロデューサーであるウォーター・レッグ氏が創設した元々は録音用オーケストラ。彼の死後、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団と胡散臭く名乗っていた時代もありましたが、歴史は浅いものの晩年のクレンペラー、若き日のムーティ、不世出の名指揮者シノーポリを常任指揮者に迎えて来ましたし、最晩年のフルトヴェングラーによるR.シュトラウスの「4つの最後の歌」を世界初演していたり、カラヤンも幾つかの録音を残しているロンドンの名門オーケストラと言えるでしょう。もちろん、レッグ氏の手腕と人脈の為せた業ですが。(余談ですが、レッグ氏はマリア・カラスと並び20世紀の伝説的なソプラノ歌手シュヴァルツコップの夫君です。)
そんなオーケストラがいまや押しも押されぬ実力をもつ中堅指揮者サロネンを常任に迎えているあたり、やはりDNAといいますか、抜け目がありませんね(笑)
しかし、このオーケストラ、幾つかの録音を聴く限り、下手でもないけれど上手くもない、これと言った個性を感じない。さらに、来日公演も必ずしも常任格の指揮者が同行しているわけではなく、たとえば、マゼールとモーツァルトをやってみたり、インバルとマーラーチクルスをやってみたり、と器用で柔軟性に富み過ぎるあまり、商売魂が見栄隠れしてしまいネガティブなイメージを持っていました。だから、いつもはパス。が、今回は常任指揮者サロネンとの来日。普段の彼らの実力が分かりやすそうです。ライヴではどうでしょうか。初実演です。
一曲目のベートーヴェンの序曲。
編成は12-10-8-6-5。トランペットとティンパニは古楽器を使用。弦楽器もビブラート控えめ(←多分(笑))。
快活な作品ということもあり、オケも鳴りっぷりもよく、なかなか上出来。当夜は良い演奏会になる予感がしました。
舞台にピアノを配置してアンスネスとのコンチェルト。
たいへんスマートな演奏だったと思いますが、いかんせん陣取った座席が不向き過ぎ。
最近、バック席でピアノ協奏曲を聴くことに限界を感じ、当夜も半ば休憩モード。音が聴こえないのでやる気も出ません(笑)
たまには正面席で聴きたいものです(涙)
さて、休憩を挟みメインのマーラー1番。
クレンペラーやバルビローニ、シノーポリとのマーラー録音や前述のインバルとの東京でのチクルス…。ロンドンのオーケストラの中でも、もっともマーラーと深く関わってきたオーケストラを、サロネンがどのように味付けを施すのか?
同コンビとのマーラー9番の録音のようにサラサラとアクのないスッキリ過ぎる現代的な解釈から余り期待していなかったのですが、結論からいいますと、予想を裏切ってくれる大変なスリリングな理性を伴う爆演、力演でした。
第一楽章では、明晰な楽器の響き、後半の盛り上がりへのスリリングなまでのテンポの落とし方と圧倒的な爆発。第一楽章をこの作品のプロローグとしてサロネンが捉えているのでしょう。こうしたアプローチに感心し、そして、期待が高まり第二楽章。
この楽章冒頭のチェロへかなり鋭角的な音を要求していた気がします。そして、楽観的なテンポ。さらに、中間部では誰も聴いたことがないようなタメ、ティンパニの痛烈なまでの強打。どんどん聴き手を引き込む楽章後半の煽り。
第3楽章では思いの外、早いテンポ。メランコリックな、マーラー特有のごちゃ混ぜにしたメロディが全く感傷的にならず、凸凹をなくしてしまうかのよう。この楽章を聴くと、サロネンのマーラーの9番は私の好みではないなあ、とおもいましたが…
フィナーレ楽章では、それまでの楽章でサブリミナル的に見せていた、言わば仕込みをしていた具材を、強火にかけて一気に料理にしてしまうような、そんなあっという間の20分間でした。フィナーレコーダでの煽りに煽る加速度は、この作品のライヴを聴けたことの爽快さを味わうに打ってつけです。
欲を言えば、木管に色気がなかったり、トランペットがやや女々しく聴こえたり…とオケの能力に不満がないわけではありませんし、サロネンにももう少しエグさを引き出すよう歌わせてほしかったのですが…
それでもしかし、いままでに何度もこの作品のライヴに接して、やや飽食気味だったにも関わらず、素晴らしかったと思えるのですから、サロネン、恐るべし。圧倒的。
アンコールはクールダウンもかねてお得意のシベリウスから「悲しきワルツ」。
終演後は、SCC(←ソロカーテンコールの略です(笑))1回。わたしも、ブラボー!と叫びました。
正直、ベートーヴェン7番プロの好評な様子を聞いて、東京芸術劇場のシベリウス&ハルサイ・プロが一番アタリで、当夜のマーラー・プロが一番ハズレかとこの日のチケットしか買っていなかったことにかなり後悔していたのですが、素晴らしかったです。でも、やっぱり芸術劇場のハルサイ、行きたかったなあ涙
(岩国公演でのカーテンコール。ジャパンアーツHPより)
ただし、オケに関しては、なんともあまり感想を持ちませんでした。しかし、やはりパワーとレンジは外来オケのそれでした(笑)