対峙してもすぐに戦いは始まらない
後入場者であるイミ・レバインには部屋の間取り家具の配置を見る時間が30秒が与えられ
先入場者の櫻井裕章と対等の条件にする
先入場者たる櫻井は今も部屋を見回す事を許されているが
イミから目を外さない
イミがルールを守る保証がないから・・・・
72時間しか記憶が持たない櫻井は自分以外の言葉は100パーセントは信じない
『俺の相手は強いのか?』
ハゲ「お前のほうが強いよ」
《自分以外の言葉は信じない》
ハゲ「締め切り前30秒で大分配当落ちちまったよ」
「やっぱヤツら見る目があるなぁ」
男「でも鉄板だと思っているんだろ?ならかまわんだろ」
ハゲ「しかし低すぎるぜ」
司会「試合開始の合図は本来鳴るはずもない電話が鳴ったら!5秒前からご一緒にカウントダウンを始めましょう!!」
「5!」
「4!」
「3!」
「2!」
「1!」
トゥルルルルルルル
最初に動いたのは
ダシュッ!(速攻で動く)
櫻井裕章
すぐに間合いを詰めなければいけないわけがあった
イミ・レバインのほうが台所に近い
設定が学生とはいえ
台所には包丁がほぼ100パーセントあるから
だがイミは台所に向かわず
重心を低く構え
スウゥ
指を揃えた
フラ~フラ~(脱力した状態で構える)
進化し続ける実践格闘技クラヴ・マガが出した答えがこのーーーー
360度ディフェンス
手を使った遠距離からの攻撃はそのほとんどが円形動作である(パンチや掴み攻撃等)
前腕だけを動かし360度からの攻撃に反応する
受け方は相手の手首を狙って受ける
それは武器(刃物)を持たれた場合をも想定しているから
クラヴ・マガの特徴的な防御はそれだけではない
片手で受けるのと同時にもう片手ではーーーー
打つ
ドッ(櫻井に掌底を当てる)
バースティングである
ドサッ(ベッドに仰向けに戻される櫻井)
片方の手で攻撃を避け、片方の手で相手をしりぞける
距離を取る
ダッ(振り返るイミ)
イミは棚を捜す
最強の武器である銃が仕舞われている
可能性が一番高い棚の中を
『動くな!!』
櫻井の左腕は枕の下に入っている
『撃ち殺すぞ』
今回の戦いの設定はいじめ体験のある学生
治安の悪い西海岸在住・・・・何かにおびえて枕の下に銃を隠していても納得する設定ではあるがーーーー
ハゲ「悲しいな裕章・・・・戦っても覚えていない」
「何試合戦っても初心者だっていうのは・・・・」
この戦いの勝利条件は相手を動けなくする事・・・・つまり殺す事
司会「まあ・・・・なんというか・・・・」
銃を本当に持っているなら何も言わずに背中を死ぬまで撃てばいい
櫻井のブラフは脅しになっていなかった
観客「みんな気付いていないみたいだな」
「なんでイミが背中を見せて棚の中の銃を捜していたのかを」
「イミは背中越しに襲わせるつもりだったんだよ」
「引き付けて抜け目なく取っておいた武器を使うつもりだったんだ」
「ほら電話の横にあった物が」
「いつの間にかなくなっているだろ」
ドガッ(隠し持ったシャーペンをいきなり櫻井の顔に突き立てる)
グッグググッ(腕を掴み阻止する櫻井)
『ぐうっ』
イミ「サクライ・ユウショウよく今まで生きてこられたな」
「お前は今まで闘った中で最弱だ」
グググッグググッ(上から押さえつけようとするイミとそれをはね退けようとする櫻井)
『(嘘をつくな・・・・俺は強い)』
『(俺は強い!!)』
グチュッ(櫻井の左目下にシャーペンが少し突き刺さった)
観客「殺せ!!」
観客「殺せ!!!」
観客「殺せ!!!!」
司会「あぁっとベッドの弾力を利用して逃げ場を作り避けたようですね」
「ですがご安心ください!!」
「イミは櫻井の体を固定し左肩を制しています」
「逃げられません!!」
「逃がしません!!」
「さぁ次こそは突き刺していただきましょう!!」
「イミ見せてくれ!!私たちに近接格闘技クラヴ・マガを!!!」
ガリッ(イミのシャーペンを持つ指を噛みついた)
イミ「ぐおお」
ドン(イミを蹴る)
司会「あぁっ!!!!!噛みつきました櫻井!!脱出ぅぅ!!!!!」
「喉に突き刺してクジラの潮吹きのような血の噴水を皆様にお見せしたかったのですが」
「さすがS級櫻井もやります!!」
ブッ、ビチャ(肉片を吐き出す)
イミの小指の付け根からは白い骨が露出していたが
それでも武器になるシャーペンをイミは離さなかった
スーーーーッ(構える櫻井)
イミ「(重心が低い)」
「(空手じゃない・・・・詠春拳か?)」
櫻井は無意識に構えていた
自分の記憶にない構えを・・・・
呼吸
鼓動と
同じように
自分の意思とは関係なく体が動いていた
イミ「(・・・・この構え・・・・見た事がある・・・・・・・・)」
「!?」
「あぁ・・・・」
「お・・お前・・・・」
「円形闘技場のサクライ・ヒロアキか・・・・」
『・・・・・・・・・・・・昔の俺を・・・・知っているのか?』
【俺は強い】
『なあ・・・・』
『昔の俺は強かったか?』
イミ「(俺が見た時には)」
「(棒きれ一本持って)」
「(ライオンと戦っていた)」
「(もう人間相手じゃ賭けが成立しないという事だった)」
「・・・・・・」
「シラットのサクライ・ヒロアキ!!」
『そうか・・・・やっと一つわかったぜ・・・・俺のやっていた格闘技はーーーー』
【シラット】