登場人物
●鞍馬蘭子[鞍馬組組長]
●鞍馬雹吾[蘭子の弟の雹吾(ひょうご)]
●レオ[蘭子の片腕]
その女の持つ紫の毒に気付いた者は
周囲の人間を除けば
これが初めてだった
後に女の後見人となる
広域暴力団神保組六代目会長
神山秀樹である
神山「よう」
「鞍馬かよく来たな」
「まあ座れや」
蘭子の父「はっ・・・会長」
「今日はお目汚しとは思いますが」
「娘を挨拶にと思い連れて来ました」
ペコリ(頭を下げる蘭子)
鞍馬蘭子
16歳
神山「おーーー」
「大きくなったなー蘭子ちゃん」
女など飽くほど食い捨ててきた男である・・・
・・・・・・が
相性
絡みつく
魔力
そして毒の味への渇望が
男の目を
七色に染めた
2年後女は蛇だと知られる
蘭子「二人共」
「何か言いたげじゃないか」
レオ「・・・・・・」
雹吾「俺は・・・」
「こういうやり方は好かん」
「千代火組や他の奴らが黙ってないぞ」
蘭子「アタシが何したってのさ一体・・・」
「妙な想像働かせてんじゃないよスケベ」
「仮に想像通りだとしても・・・・・・二人共戦場を渡り歩いてたにしちゃ」
「随分甘ちゃんだねぇ」
「いいかい?・・・やり方にこだわる事と」
「目的の為に手段を選ばない事・・・・・・」
「私が」
「二つの区切りをどこでつけてるか」
「本当の意味で分かるのは私だけ・・・」
「何を喰うかは」
「私が決める事だよ・・・」
女が蛇だと分かったのは
18で鞍馬組の跡目として認められると同時に
強靭な二本の牙(※圧倒的暴力を持つ二人のこと)
をすでに生やしていたからであった
ノミ行為やショバ代など昔ながらのシノギしかもたない組織
構成員10名程度
吹けば飛ぶような3次団体
そんな弱小組織の女組長が
並居る幹部を追い越し広域暴力団のトップから若頭として
謎の盃(さかずき)を受けた・・・その事は
先代の死に乗じて鞍馬組を吸収しようとしていた連中のみならず
全国数万人の構成員の序列を踏みにじり
恨みを買うのに十分な理由となった
ゴッ(酒瓶で雹吾の頭を叩く)
千代火「ほぉ~」
「この俺の酒が飲めんてか・・・ほぉ~」
「この俺が先代の時代からお前んとこの面倒どんだけ見てやったかわかっとるんか?」
「女子供だからって大目に見てもらえるとでも思ったか?あー?」
「どんな手使ってオジキをたらし込んだかは想像はつくがよぉ~」
ツー(雹吾の額から血が垂れる)
千代火「お前らなんぞに何が出来る?あ~~~~?」
「ワシらより上の盃もろうてもお前らが弱小零細一家っていうのは何も変わらんのじゃ」
「やったってもええぞっおっ?このチンピラが」
「何やら海外で暴れ回っとったらしいけど」
「お前なんぞガキの頃ヘタ打って国外逃亡しとった負け犬だろーが」
「ヒョコヒョコ帰ってきやがって」
「そんなにお姉ちゃんに会いたかったんか?シスコン坊主」
「何やったら頭下げて頼み込んでみろよ」
「『やらして』姉ちゃんってよぉ~~」
「ダメか!?姉ちゃんは出世の為じゃねーと股は開かねーかっヒャッヒャッヒャッ」
安い挑発の裏に隠れる
狡猾な目の男
構成員千人を越える千代火組は組織きっての武闘派集団であり
千代火自身も組織の最高幹部の一人でもあった
到底闘える相手ではない
レオ「不徳の致すところ」
「・・・詫びを入れさせていただきます」
千代火「ケッ」
数週間後ーーー
彼とその護衛役は高層ビルの屋上から謎の投身自殺を図った
護衛の数は
鞍馬組の組員の数をはるかに上回っていた・・・・
千代火の葬式会場
訪れた二人の男に対して
受付の男「おいっ!!ちょっとそこのデカイの!!」
「葬式だぞ!!」
「白いスーツなんかで来やがって何考えていやがる!!」
レオ「・・・・・・・・・・・・・・」
「千代火組長には生前に」
「・・・・前もって詫びておきました」
牙達は
誰の命令も聞く事はなかった
蛇の意思
以外は
18の女の腹は敵意・恐怖・疑念・混乱という厄介なものまであっさりと消化し吸収する才があった
それは何でも呑み込む
蛇そのものだった
二本の牙は誘った・・・
蛇の見染めた獲物を食み
蛇の腹を常に肉で満たし続けた・・・