オレと同じ時期に移植を予定していた女性ブロガーさんの話を紹介します


2023.03

シャント手術の話が夫婦の中で出た時に、たまたま読んだニュースがあった。


お笑いコンビ・東京ダイナマイトハチミツ二郎が都内で腎移植の手術をした

ドナーは母親、しかし、手術は失敗に終わった


との内容。

その話の流れから、移植の話になった。


わたしは移植なんてはじめから考えてもいなかったので

それまで移植について夫婦できちんと話したことがなかったのだけれど

この時、はじめてニュースの話からの流れで話をした。

すると

移植は夫婦でもドナーになれる、ということをはじめて知った旦那は

「それなら、俺のをやる」

と、その場ですぐにわたしに告げた。


わたしの方が面食らった。

何の躊躇いもなく言えること?

意味わかってるのかな?


その後、何度もその話になったが

旦那の気持ちは変わっていなかったし

それによって逆に自分の体調が悪くなるかもしれない、ということも無い

と信じて疑わない姿勢だった。

その後、旦那は自分自身でも腎移植について調べたらしく色々と情報を獲ていた。

良い情報も、悪い情報も。

そのうえでドナーとなる意思は変わらなかった。


きっかけとなったニュースのお笑い芸人さんが、なぜ失敗に終わったのか

詳しい経緯は載っていなかったのでわからない。

ここ最近の生体腎移植は、成功率の方が高いらしいので

なぜ失敗に終わってしまったのかがわからないのが不安ではあるけれど

旦那の申し出には感謝しきれない。

そして、心のどこかで

自分は成功して元気になれるのではないか?という希望が

この時、わたしの中に湧いてしまった。


あまりにおめでたすぎる、安易すぎる

と、言われてしまえばそれまでだが

1度、希望を抱いてしまった気持ちは、もう元には戻せない。

あとは、進むのみ。



担当医に相談をしよう。

腎臓外科を予約しよう。

これが、2023.04の時のこと。




とりあえず、移植の話が進む。

血液検査の結果、初っぱなでダメ、では、なかった。


この結果を知った時

本当は物凄く嬉しくて嬉しくて

その場で泣きたくなるくらいホッとした。


旦那に

神様、仏様、御先祖様に

みんなに感謝の気持ちでいっぱいだった。


でも、手放しで喜べなかった。


旦那の身体は大丈夫なんだろうか?

という不安。


外科の先生は

もちろん、健康体でなければドナーにはなれないので大丈夫

と、言っている。

でも、術後の感染症、腹壁瘢痕ヘルニアなど起こりうるし

ラーメンが大好きで、ダメって言ってもおつゆを飲み干してるし

しょっぱい味付けが大好きだし

お酒だって毎日飲んでいるし、たばこも吸う。

大丈夫かな、少しは我慢するようになるかな、それが苦にならないかな

そう考えてならない。


でも

本人も何故か最初から変わらずの強き発言。

1つになったところでなにも変わらない

俺は大丈夫

と言う。



旦那は、少し変わった人、だと思う。

何かを信じると真っ直ぐにがむしゃらに進む。手に入れるまで諦めないし、そのための努力も怠らない。

たとえそれが、わたしから見ると

間違えてない?という方向性だったとしても

本人がそれを信じたらもう周りの人の意見は聞かないし、やめない。


学生時代はスポーツを盛んにやっていたらしいが

結婚する頃は何もやっていなかった。

それが、40を過ぎた頃からマラソンを始めた。

走りはじめてから、膝を壊したり腰を痛めたりもした。

でも、止めなかった。

休養をして、治すと、また始めた。

ここ例年、年に幾つかの大きなマラソン大会に出たりしている。

わたしなら、怪我をした時点で諦める。


走るのって楽しい?

と、訊いたことがある。


辛いよ

と、言う。


辛いけど、出来なかったことが出来るようになることは嬉しいし

このくらいの負荷をかけないと身体は鍛えられていかない

ぬるい運動じゃ、いつまでたっても体力なんてつかない

とも言った。



「俺は、体力もあるし気力もある

    腎臓は2個あるんだから

    もし、1つ目の腎臓が合わなかったら

    もうひとつある方の腎臓もあげるつもりでいる

      俺の腎臓がひとつもなくなって透析になっても

      俺は大丈夫だし、強く生きられる

      だから絶対に身体を治そう

      俺の腎臓をちゃんと受け止めてくれ

      あとはお前の受け入れ体制次第だよ~(笑)」



最後は笑いながら。

もちろん、こんなことは出来ないしあり得ないことだけれど、旦那の気持ちを聞いて涙が溢れた。

こんな気持ちのこもった臓器をわたしにくれるのか、と思った。


血液の相性とか

臓器の相性とか

そういったものは必ず付きまとうし、どうにも出来ないものだと思うけれど

旦那のこの思いをわたしがきちんと受け止めれば

うまくいくんじゃないかな、と最近は考えている。


ありがとう。


まだ手術が決まったわけでもないし

成功するって決まっているわけでもないけれど

その気持ちが

成功させてくれるような気がする。

元気になりたい。

元気にならなくちゃ。


そして2023.11 現在

腎移植のための検査は、まだまだ続いている。

また家族みんなで旅行に行く日を夢見て。




腎臓外科外来

わたしの方は、胃カメラも大腸がんの方も問題なし。

スムーズに進んでいて、そろそろクロスマッチです、というところまできた。


けれど

旦那の腎臓内科の方で問題が。

先日の、心エコーの結果、心臓弁膜に異常あり。


循環器科で再検査となったけれど

かなり高い確率で、ドナー中止となりそう。


というか、ドナー以前に

旦那自身が心臓弁膜症の手術が必要になるかもしれなくて。


体を動かすことが好きで

学生時代は水泳

ここ10年くらいはマラソン

今月もトレイル(山)マラソンに行ってきたばかり。


「全く変わりないです」

と、旦那本人は言っているが

エコーがしっかりと撮している異常な弁膜。


あんなに元気な旦那なのに、そんな異常があっただなんて

まさに青天の霹靂。


循環器科のお医者さんが言うには

今は良くても、高齢になった時に突然、心不全を起こす可能性が高い。

早めの処置が必要。


わたしの移植の話は、これでストップ。

わたしには兄弟姉妹もいない。

母はもう高齢で手術が出来る年齢ではない。


旦那のことも

自分のことも

どうなってしまうのか、不安にかられてしまう。


けれど

なるべく考えない。

「無になって」という言葉が頭に響いた。

わたしも「無になって透析に通おう」と。


いまを大切に

今日を大切に

まだ生きてるし、すごく元気、2人とも。


毎日に感謝をして

家族にみんなに感謝をして

やるべきことをちゃんとして

自暴自棄にならないように

今朝も、仏壇の父の前に座って手を合わせる。




どんなに医療が進歩しても限界はあるのです


オレが移植できたのは本当に奇跡なんです


移植実績数の陰には、手術さえ出来なかった人がたくさんいるのです





女性ブロガーさんへ

本来ならリブログとも考えましたが、この様な形でご紹介させていただきました。ご賢察のほど、何卒よろしくお願い申し上げます