確証があるわけではない。あくまで予感であるが、もう一人の僕が釣りに行けと勧めていた
この日は強風の予報。海も荒れているだろう
深夜に強風の中、波を被りながらの釣りになるのは分かっていた
だからこそ、行くのをためらってしまいそうになった
それでも自分の予感を信じ、ウエットでは流石に辛いので防寒着にウエーダー装備で磯へ向かった
磯へ立つとやはり風が強い
荒波が押し寄せてくるが、干潮間際で潮位が低く、足元を洗うほどではない
波打ち際にはイワシも打ち上がっており、ベイトがいることも確認出来た
小雨も降り、いかにもといった状況下
強風に煽られた波飛沫が顔を叩く
凍えるような寒さの中、胸に熱い闘志を燃やしつつ夜の磯マルゲームに挑んだ
サラシの向こう側、沖のブレイクを15センチのミノーでじっくり探り、ひたすらシーバスが回遊してくるのを待つ
開始1時間ほどで最初のバイト。着水地点からすぐにヒットしてきた
すかさずフッキングし、ゴリ巻きし寄せる
足元まで寄せると強烈なエラ洗い。間違いなくシーバスだ
サイズは70センチってところだろうか
しかし、足元に突っ込んだところでバレてしまった
ここ最近どうもシーバスをバラしてばかりだ
僕の磯でのファイトスタイルは根に巻かれないようにドラグを締め込み、ショートポンピングで魚に主導権を与えずにゴリ巻きするスタイルなのだが、なんだかハマっていない気がした
そんな気の弱さからか、丁寧なファイトをしようとドラグを緩めてしまった
バラしたことにより、少なからず心が冷めてしまっていた
回遊待ちの釣り。ひたすらキャストを繰り返すのに疲れてしまっていた
その疲れからか、瞳を閉じて釣りをしていた
気が緩み、一瞬の油断が生まれた
その瞬間ロッドに衝撃が走った
反射的にフッキングするとどっしりとした抵抗が
目を閉じた状態でのキャストで根に掛かったかと思ったが、その抵抗はやがて生体反応と変わった
とっさにラインを巻き取るが緩めたドラグが止まらない
ドラグを締めようとしたが、先ほどのバラシが頭から離れない
そんな心の弱さに付け込むかのように相手は根へと走り、やがて根に巻かれて動かなくなってしまった
ああ、なにやってんだ僕は
その手に握られているショアジギタックルは何のためにあるんだ
リールに巻いてあるPE3号と50ポンドのリーダーは何のために巻いてあるんだ
15センチのミノーにST-56番のフックはなんのためにセットしたんだ
その意味を弱い自分に問い詰めた
もう、迷わない
僕はドラグを締めた
ラインを伝ってかすかに生命反応があるのが分かる
そこでラインをフリーにし、魚が出るのを待つ
するとフリーにしたラインが走り出した
すかさずリールを巻くと海藻が切れる衝撃と共に根から外れた
その後も抵抗する相手に主導権を与えずゴリ巻きする
ドラグは全く出さない
相手も疲れているのだろう、最初のファイトほどの暴れ方をしない
そしてようやく足元まで寄せてきた
ランディングの為一段下の磯へ降りる
波が打ち寄せ非常に危険だ
波間には相手の影。必死で手を伸ばし、ようやく相手の口を掴んだ
その瞬間、波が襲いかかってきた
僕は波にのまれた
この日の装備はウエーダー。中に水が入ってくる
とっさに身を翻し、磯に喰らい付いた
ギリギリの所で深みにはまるのを防ぐことが出来た
だが、タックルを見るとリールがどこにもない
ラインを手繰ると海の中にあった
ロッドから外れたのかと思ったが
なんと折れてしまった
それだけ大きな衝撃だった
それでも、相手を離すことはなかった
不思議とそれほど大きいとは思わなかった
それよりも獲れたことの方に感動していた
まだまだ釣れそうな雰囲気であったがリールが壊れ、ウエーダーもびしょ濡れだったので磯を後にした
家に帰り、計測すると92センチ、5キロとなかなかのサイズ
様々な事が起こり、災難もあったがこの一本で救われたような気がした












