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『いつかパラソルの下で』 森絵都 著

調子に乗って、もうちょっと更新。


森 絵都
いつかパラソルの下で

柏原野々は雑貨店で働く28歳の独身女性。厳格な父の教育に嫌気がさし、成人を機に家を飛び出した。そんな父も死に49日の法要を迎えようとしていた頃、生前父と関係があったという女性から連絡が入る……。


ロードノベルというのでしょうか。
厳格で遠い存在だった亡き父の姿を求め、彼の故郷・佐渡へ兄・妹とともに旅に出た野々。おぼろげながら父の新たな一面を目にすることで、3人の心境も少しづつ変わっていく。


子供にとって、親は壁のような存在。
外の雨や風から身を守ってくれる強く逞しく優しいものではあるけれど、魅力的な世界に足を踏み出すことを阻む障害ともなる壁。幼い頃は果てしなく感じられたその高さも、成長するにしたがって超えられる高さになる。

厳格でサイボーグのように思えた父親も、自分たちと同じように小さなことに思い悩み、誤りをおかす人間であって。野々たちは彼を同じ目線で理解することで、父親という壁を越え、子供から大人になっていく。



ストーリーに清々しさを覚えました。


父親の姿を求める3人の兄妹はそれぞれコンプレックスを抱え、その原因を少なからず父親の教育に求めていました。
けれど、そんなことを言っているうちは成長なんてできないし、コンプレックスからも逃れられないわけで。自分自身のこととしてしっかりと受け止めなくてはいけないんです。親のせいにして逃げてちゃダメなんです。もういい年齢なんだから、大人にならなきゃいけないんです。


父親自身の抱える『出生の悩み』の正体や、野々の抱える問題は、本人にとっては大変なものであっても、客観的にみれば小さなもの。問題の本質はもっと別なところにあるわけで、そんなものにこだわっていても何も始まらない。


3人の兄妹の心境変化がなんとも前向きで、3人が手に入れる将来が大変明るいもので、非常に清々しい読後感なのです。


素直にポジティブな気持ちになれる作品です。倦怠感に襲われたときに読むと、効果がありそう。

約三十の嘘


久々にログインしてみると、アメブロの管理ページはかなり新しくなっていました。仰天です。どうしたんだろう、頑張っちゃって。



角川エンタテインメント
約三十の嘘 特別版

大阪発・札幌行きの豪華寝台特急トワイライト・エクスプレスに、6人の詐欺師が乗り込んだ。3年前、ある事件から解散していたチームが、札幌での大仕事のために再集結したのだ。しかし新参者や3年前の事件の元凶となったメンバーも参加したため、チームの雰囲気はギクシャク。それでも札幌での仕事を成功させた6人は、同じ特急で帰路につく。ところが車中で迎えた翌朝、事件が起きる。現金7000万の入ったトランクが、忽然と消えていたのだ…。 (Gagaオフィシャル)



ストーリー展開以上に、構成や音楽、美術に惹かれました。


長く支持されてきた戯曲が原作。構成はその影響をふんだんに受けているようです。
詐欺師一行の偽高級ダウン販売ツアーにまつわる人間模様、ということですが販売のシーンは無し。『行き』と『帰り』のみ。舞台はすべてトワイライト・エクスプレス車内。
こういう構成はいかにも舞台演劇といったかんじ。舞台を見た経験が少ない私としては、新鮮でした。実際に映像として描かれない部分の残し方が絶妙。行きと帰りで人間関係がだいぶ変わっていたり、3年前の出来事が各メンバーに残したものが徐々に見えてきたり。


トワイライト・エクスプレスの車内がまたものすごくステキなかんじ。
広くない部屋に、すっきりしたベッド、高級感漂う食堂車。鉄道特有の振動や窓の外の景色の変化も心地いい。こんな電車、乗ってみたい!
とはいっても、もちろん部屋は映画用に作られたもので、振動や窓の外の光の変化はほとんどスタッフが手動(!)で作り出したものだとか。


けれどこの作品で何よりも輝いていたのは音楽でしょう。
でしゃばらないのに存在感はしっかり。カッコイイ。気持ち良い。これだけでお腹いっぱいになりそう。
音楽はクレイジーケンバンド。こんなにも雰囲気のある音を作る人たちだったとは知りませんでした。



ストーリーは、あまりインパクトのあるものではありません。
ごく普通の人たちの心の動き。どんでん返しはいくつかありますが、度肝を抜かれる、といった種類のものではなく。ミステリーだと思って見ると、がっかりするかも。
けれど私はこの雰囲気の映画には強いインパクトはいらないんじゃないかと思います。柔らかな日差しが入り、のんびりした田園風景をバックに進む寝台特急にキナくささは似合わないか、と。



とても気持ちのいい時間を過ごせました。

のんびり過ごしたい休日の午後によく合う作品だと思います。

『続いばらぎじゃなくていばらき』 青木智也 著

青木 智也
続 いばらぎじゃなくていばらき―極私的「茨城の地域活性化論」

楽しかったです。

最近多いウェブ発信書籍。内容は地元自嘲系ネタ。
ブログは特に茨城の人に人気らしいですが、茨城に縁がない埼玉在住の私でも楽しめました。これはネタ自体が面白かったこともさることながら、埼玉も茨城も大きくくくれば北関東ということで共有するものが多かったことが原因かも。地元にヤンキーが多いとか、近隣の地域に妙なコンプレックスを抱えていたりとか。


内容が軽かったこともあり、短時間で読めました。リフレッシュしたいときにいいかも。

『小春日和』 野中 柊 著

野中 柊
小春日和

70年代。双子が主人公のハートフルな物語。
小春と日和。映画好きの母の影響で、タップダンスを習い始めた幼い双子姉妹に、CM出演のチャンスが舞いこんできて…。70年代の逗子を舞台にしたハートフルな物語。

以上、オフィシャルな紹介文を借用。



あたたかな作品でした。


主人公の双子を優しく見守る大人たちと、彼らの中で素直に育った二人。彼らの日常が双子の妹・日和の視点で描かれます。
家や学校での出来事とタップダンスで構成される小学生の生活は、珍しいものではないけれど楽しく輝かしいもの。辛いことや困難がないわけではないのだけれど、そんなものは感じられない。


登場人物がみんな善良で愛にあふれる好人物。作品に描かれる世界は幸せそのもの。私も幸せな気分になれました。



ただ、オチはどこにあるんですか?何を伝えたいんですか?


ストーリーに抑揚がなかったような気がします。
作品を通して大きな出来事は何も起こりません。タップダンスでCM出演という出来事も、彼女たちの本質を揺るがすようなものではなかったわけで。幸せな日々が坦々と続く、というだけで終わってしまいました。


この点に物足りなさを感じました。

『SPEED』 金城一紀 著

金城 一紀
SPEED
家庭教師だった彩子さんの突然の死。本当の死因を知りたいと彼女の身辺を調べていた佳
奈子の身も、危険にさらされる。たまたま出会ったゾンビーズのメンバーとともに、佳奈
子は強大な敵に立ち向かう。
レボリューションvol.3、ダディ・フライ・ダディに続く、ゾンビーズシリーズ第三弾。
今度の主役は女子高生。

楽しかったー!

テンポよく進む痛快なストーリー。物語をささえるメッセージ。
どことなく少年マンガっぽさをかんじるのは、この2点によるところが大きいと思いま
す。


自分と仲間を信じろ

これがゾンビーズシリーズを通して私が感じ取ったメッセージでした。
世間でまかり通る常識や慣行をそのまま受け入れるのではなく自分の感覚を大切にする。
仲間が困っていたら見返りをもとめず全力で協力する。欲しいものが手に入らないとき指
をくわえて眺めているのではなく出来る限りの努力をする。
ゾンビーズの姿は、自分と仲間を信じて行動すれば出来ないことなんて何もない、と読者
に教えてくれます。


“強大な敵”の考えや行動があまりに幼稚で隙だらけだったり、ゾンビーズはやることな
すこと上手くいったり、前面にだされるメッセージが鼻についたり、気になるところはあ
ります。
けれど物語の展開の早さや文章の読みやすさによって、立ち止まることなくラストまで読
めました。


読みやすさといい、メッセージといい、ゾンビーズシリーズは小中学生に是非読んでもら
いたい本です。推薦図書とかには指定されてないのかな。

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