前回はプロムの準備についてお伝えしましたが、今回はプロム当日についてレポートします。
プロム会場に向かう前、学校の広場での写真会にて:
卒業式が日曜日だったのですが、木曜日の昼まで期末試験があり、プロムは木曜日の夕方から夜にかけて行われたので、その日は皆大忙しでした。私もジェンダー研究の論文発表会/座談会が昼過ぎまでありました(プロムのためにダイエットに励む女子が多かったのですが、アンドーバーの先生方は本当に私たちに美味しく高カロリーな食べ物を与えるのが大好きなので、私はプロムの数時間前まで座談会にてシナモンロールやクロワッサンを食べていました:卒業へ向かって(3) 最後の授業と食べ物たち)
女子の大多数が試験終了後ヘアサロンに行き、素敵な髪型にしてもらったりお化粧をしてもらったりしていました。私は普段の髪型のままでしたが、同じく自分でやっていた親友と共に寮の部屋で支度をしました。プロムでは髪のセットやお化粧はプロに頼みますが、他のイベントでは女子も男子も何人かのグループで身支度をして、女子は互いのおめかしを手伝います。パーティー自体よりも準備の方が楽しいのでは、と思ってしまうくらい女子にとって準備過程は盛り上がります。
プロムや他の年二回行われるフォーマルダンスパーティーの場合、男子が女子が準備している寮に迎えに行きます。アベックであってもなくても、ほとんどのコンビが男女共に同じ友達を共有しているので、大きなグループでドレスアップした写真を撮り、皆一緒に寮から会場へ向かいます。他のフォーマルなパーティーでは男子がお花のブーケを持って相手に渡すのですが、プロムではその代わりに女子はお花のリスレット、男子はお揃いのお花のブローチを付けます。
同じ寮に住む親しい友人2人と、男子が来るのを待っていました。友人のひとりはアンドーバーではなく、近くのボーディングに通う故郷の同じ友達を誘ったのですが、何と彼は渋滞にはまってしまい、もう少しで会場行きのバスに乗り遅れるところでした。幸い、バスに向かって整列して歩いている途中に飛び込んで間に合いました。こういったハプニングがあるため、同じ学校の人を選ぶ生徒がほとんどです。
私の寮は坂の下にあるので、ヒールを履いている私たち女子にはとても辛かったです。。。
会場に向かう1時間程前に、キャンパスの中心に位置する食堂の前の広場に軽食と写真のために集まりました。プロムに行く学生だけではなく、卒業式に合わせて来た家族や先生、下級生が見物をし、写真を撮ったり、談笑したりしていました。多くの生徒にとっては私たち最高学年とは最後のお別れだったので、楽しいお祝いムードの中にも、心做しか寂しそうな顔が上級生と下級生共に見られました。
プロムは「プロムナード」の略で、Promenadeを直訳すると「散歩」という意味です。Prom は現代ではダンスパーティーを指しますが、アンドーバーでは文字通り、食堂からバスまでの数百メートル、二人ずつ腕を組んで練り歩きます。およそ200組の正装をしたティーンエイジャーが初夏のアンドーバーをたくさんの人に見守られながら歩く、本当に素敵な光景です。
しかし、整列が始まっても親友の相手がまだタクシーで移動中で、私たちは見つけられるように最後尾で一緒に待っていたので、あたふたしていて知らぬうちにバスに着いていた、という感じでした。また、私はドレスをプロムの2週間ほど前に購入したのですが、アンラッキーなことに実際歩いてみると異様に丈が長いことが発覚し、一番背の高いヒールを履いても動くたびに裾を引っ掛けてずっこけてしまいました。数百メートル歩いただけでも、転ばないように気をつけていたらバスにたどり着いた頃はすでに汗だくでした。
YouTubeに学校が撮って下さった公式ビデオがあるのですが、これまた運の悪いことに、私が諦めてドレスのスカートを床からすくいあげ、グイッと持ち上げる姿がカメラに収められていました。1組ほんの5秒くらいしか映っていないのにも拘らず、私はそんな有様で、後ろに歩いていた親友はちょうど相手が到着して列に飛び込んだ所で、親友は携帯電話を手に、相手は汗だくと私たちにとってはしっちゃかめっちゃかなプロムナードになってしまいました。プロムなど、大事なイベントにロングドレスで挑む方には事前に長さ、歩きやすさを確認することをお勧めします。
2年目で住んでいた寮の先生が、歩き始める前に写真を撮って下さいました:
会場はアンドーバーから1時間ほどの所にあるボストン市内のホテルのボールルームで、8台のバスで向かいました。
会場に着くとボールルームが開くまで数十分立って待っていたのですが、何も食べていなかったので、倒れそうなくらいお腹が空いていた私は、裾を自分で踏みながら、また他の人に無意識に踏まれながら、「ミニハンバーガーを配っている人がいる」や「チーズがテーブルに置いてある」という風の便りと食べ物の香りを辿って友人と彷徨いました。やっとチーズを見つけた時には、こんなに美味しい食べ物はこれまで食べたことがない、と思うくらい幸せでした。
ボールルームの中に入ると、暗い照明の下、派手に飾られた無数の丸テーブルとその向こうに踊り場がありました。1テーブル12人で、事前に申し込んだグループで座ります。相手探しの時ほどではありませんでしたが、誰がどのテーブルに座るかについて仲間内で少しごたごたもありました。プロムという一大イベントを皆出来るだけ楽しい時間にしたいという気持ちが溢れてしまったのでしょう。
ホテルのフルコースディナーはファンシーでしたが、お味はアンドーバーの食堂が勝るかな、という感じでした。ですが、気の知れた仲間たちと思う存分しゃべり、ふざけ合い、お腹を抱えて笑いました。
テーブルの上の黄色い"2013"は、実はパイナップルでできています。Edible Arrangements というアメリカでは有名なフルーツのギフトバスケットのお店のフルーツブーケが全テーブルに置いてありました。私のテーブルは皆グルメ・フルーツ愛好家・空腹だったので、何十個ものイチゴ、ぶどう、ラズベリーが大食い選手権なのかと思うくらいの早さで、席についてから5分も経たないうちになくなりました。フルーツブーケのベースがスポンジの代わりにケール(アメリカでは健康食品や青汁の材料として人気ですが、生では苦くて食べられません。。。)の葉っぱが重なっていたのですが、ひょうきんな友人たちがベースまで食べてしまい、素敵なフルーツブーケは跡形も無くなってしまいました。
ディナーが終わって音楽が流れ始め、皆が席を立ってダンスフロアへ向かう中、友人たちはテーブルに座ったまま空席の隣りのテーブルを見つめ、手がつけられていないフルーツブーケを食べて良いものか真剣に語り合っていました(結局善心と道理が勝りましたが)。
ダンスは、最近ヒットしているポップな曲をバンドが生演奏しました(毎年来て下さるバンドのボーカリストはアンドーバーの文学の先生のご子息なので、縁故採用という批判もありますが、とても才能ある方々だと思いました)。ダンスフロアは少し狭く、ぎゅうぎゅう詰めでした。ダンスパーティーではアベックではない限り、多くの人が友達のグループで大きな円になってそれぞれ踊っています。
アンドーバーでは毎週末様々なテーマのダンスパーティーが開催されていたのですが、私は11,12年生では学業や課外活動が忙しく、ほとんど参加できませんでした。しかし、10年生の頃によく一緒に踊っていた仲間たちに高校生活最後のパーティーで「再会」し、昔流行っていてよく聴いていた音楽がかかると時間があたかも巻き戻ったように、その頃のように踊り狂い、互いのダンスのセンスの無さ、可笑しさに笑い合いました。
学業に専念し過ぎて、最後の2年間は多くの社交的な行事への誘いを断り続けていました。「友人と遊ぶ」というと、10年生の時は友人の寮で映画を観たり、パーティーに行ったりすることでした。以降その言葉は、友人と一緒に町のスターバックスや町営図書館に行って一日中勉強したり、友人と寮でデリバリーのご飯を食べたり、図書館の "Silent Study Room" (静かに勉強する部屋)で何時間も勉強した後に食堂でお茶を飲んでおしゃべりして休憩することを意味しました(私だけでなく、同級生の多くも同じような経験だったと思います)。しかし、一切悔いはありません。アンドーバーは学校の活動や学問だけではなく、華やかなイベントなどその外の環境も重要な一部であり、もう少しバランスを取れたら良かったな、と考えることも度々あります。それでも、だからこそ得ることができた物事を考える時間や、友人と夜中まで寮の部屋で語り合った時間があったからこそ、今の自分があるといっても過言ではないと思います。
アンドーバーでは、「睡眠、社交、成績。その3つの中から2つだけを選ばなくてはいけない。」という言い伝え(?)があります。確かにその3つを両立させるのは不可能ですが、ほとんどの生徒には3、4年間も長い時間があるので、やるときはやる、踊り狂うときは踊り狂う、と学年や状況に沿ってメリハリをつけることも重要だと思います。
プロムは12時頃に終わり、バスでキャンパスに帰った後は"After Prom"として1時過ぎまで食堂でピザとパンケーキを食べることができました。ロングドレスやタキシードでおめかししているティーンエイジャーたちが、疲れと空腹を癒すために姿勢もドレスに汚れがつくことも関係なくピザを食べているのはとても面白い光景でした。
寮へ帰ると、皆ヒールを玄関で脱ぎ捨て、寮母の部屋でサイン・インをすると、裸足でそれぞれの部屋に戻って行きました。
プロムの最中で友人たちと撮ったお茶目な写真を何回見ても、その時の将来についての会話や、変な踊り、慣れない靴による足の疲れ、プロムナードで歩いている途中で「ドレスの中に足が入って抜けない!(裾を踏んで破り、足が穴の中にすっぽり入ってしまった)」と叫び、その後夜が進むにつれてどんどん破れて広がっていったビリビリの裾、そして食い荒らされたフルーツバスケットを思い出し、笑ってしまいます。そのひとつひとつが、くだらなくても、大事な思い出です。
本当に楽しい夜でした。