棒で戸締まり
日本では昔、錠前が使われたのは商家の蔵や武家の御金蔵などで、普通の家屋の戸締まりにはつっかえ棒が使われていた。
引き戸を内側から固定するこの棒は心張り棒や用心棒と呼ばれ、いざという時の武器でもあったことから、護衛役の腕の立つ浪人「用心棒」の語源にもなっている。
この心張り棒は外部からの侵入を完全に防げたわけはなく、蹴破れば簡単に突破できる程度のもの。
それでも十分だったのは、商家は戸のそばからずらっと奉公人が寝ていたから、その他の庶民の家は盗むほどのお金が無く入っても物音ですぐ気付くから。
また、夜は町ごとの木戸は閉められ木戸番や辻番が警備していたというのもある。
心張り棒はその仕組みから分かるように、在宅の時しか使えない戸締まり手段。
外へ出掛ける時は、商家や武家は必ず誰かが残っているし、長屋など個人宅は隣近所の人が面倒を見てくれる。
錠前・鍵に頼らない、人々の目や耳こそが当時の防犯手段だったというわけである