米国のイラン・北朝鮮の核問題に関する姿勢とイスラエル・インドに対する姿勢の違いはその最たるものと考えられる。イラン・北朝鮮は所謂「悪の枢軸国家」であるとの反論があるかも知れないが、核兵器の恐ろしさはどの国が扱っても同様に危険であるし、イスラエルやインドも平和な民主国家とは言いがたい。


この問題はさておき、最近のニュースを拾いながら、小泉政権の外交・防衛の矛盾点を指摘したい。

1. 首相の靖国神社参拝

首相を始めとする政府関係者は、「首相の靖国参拝に反対しているのは中国・韓国だけだ。」と言うが、マレーシアやシンガポールの首脳が公然と不快感を表しているし、タイやインドネシアも言葉には出さぬが大変困惑していることを私は良く知っている。

また、首相がその拠り所とする米国でもこのことは支持されていない。http://www.asahi.com/politics/update/0430/003.html

(「左翼の朝日」の記事だと言う若者が出てくるかも知れないが、最近の朝日の右傾化は読売も驚いているようだ。)

対米追従に徹する政権の言動とは大いに矛盾する点である。イラクなどの海外派兵の日本による肩代わりを狙うブッシュ政権は言葉を濁すであろうが、米国の指導部・知識層がこのことに危惧を抱いているのは明らかである。

2. 首相のエチオピア訪問

 http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20060501k0000m010059000c.html

 テレビニュースでも報じられていて、小泉首相が会談後の記者会見で「日本は核を持たないし今後も持つ意図がない。国際社会で武力行使もしない。現在の5常任理事国とは違う立場で平和の定着を支援していく」と言っているのを聞いた。

 これも憲法改正など日米同盟の下で、海外派兵を容易にしようとする言動とは大いに矛盾する。

 また、国連安保理の常任理事国入りを望むなら、遠いアフリカの輸出入がそれぞれ100億円にも満たない国で札びらを切って悦に入るより、アジアの支持を得る方が余程重要なのではなかろうか。

何れにしても、効率的な「小さな政府」を目指す政府首脳のやることではない。

3. 米軍再編への経済的・人的負担

BBCのニュース(http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/4955418.stm )によれば、米国のアフガン・イラクでの戦費は8,110億ドル(91兆円)に到達すると予想されるとのことだ。戦費や人員の削減はブッシュ政権の大きな課題である。従って、米国政府は海外派兵に就いて、日本に戦費や人員の負担を求めており、将来的に更に強く負担を求めてくることは火を見るより明らかである。

米軍再編費用(一説には3兆円。米国議会へのポーズだとの指摘もあるが、日本政府が国内での根回しをする前に、フローレス国防次官が本音を漏らしたと言うのが、事実に近いのではないか)の負担合意を見ても、800兆円の借金を抱えた国の目ざす「小さな政府」とは大いに矛盾する。


まだ、指摘したいことはたくさんあるが、こうした矛盾は国際的な信頼を醸成しないばかりか、外交カードとして他国に利用され、結果的に自分の首を絞めることになる。それが、大増税や言論規制や徴兵などと言った形で跳ね返ってくる恐れが大いにあるのだから、日本国民も「支持率50%」などと言わず、もっと賢くなる不可欠である。

山口実