私は一族の本家の一人娘の一人孫。

おじいちゃんは兄弟が多く、その子供たちも兄弟が多く、なんだかんだで冠婚葬祭で集まるとなかなかな人数になった。

我が家は長男家として、それを取り仕切ってきた。

母はあてにならず、家族行事に顔を出すことなどまるでなく
私はいつもおじいちゃんとおばあちゃんに連れられて、そこに参加していた。

本家の跡取り。
けして大きくはないが立派な持ち家もあった。

それを全て継ぐのは私しかいなかった。

いくら、夢をおって上京したとはいえ
私に実家を捨てる覚悟はできなかった。

だけど、私が恋をしたのは
何百年も続く由緒正しいお寺さんの跡取り息子だった。

そして、彼には高校時代から付き合っているという彼女さんがいた。

彼の友人は口を揃えて言った。

彼は彼女に一途すぎる。
あんなにイケメンで、モテモテなのに絶対に浮気をしない…と。


私が恋をした相手は、彼女に一途な人だった。

苦しかったけれど、こんなにも完璧な人だ
恋人がいて当たり前だし
なによりその彼女を一途に愛している彼を更に好きになった。

手の届かない光の中にいる彼は、私にとって神様に似た存在だった。

その頃の私には彼を幸せにできる自身もなく
ただただ遠巻きに彼の幸せを祈っていた。