1981年に放送されたロボットアニメ「太陽の牙ダグラム」と「六神合体ゴッドマーズ」は、いずれも大きなムーブメントを起こした名作。
しかしながら、当時関東圏に住んでいた子供たちのなかで、最初から最後まで両作品を見たことがある方は、あまりいないのは?。
実は、両番組とも金曜日の18時から放送されていた上に、家庭用ビデオデッキの普及も低く、どちらかしか見ることができない状態。
当時の子供たちを困らせた番組の組み合わせを振り返りましょう。
「六神合体ゴッドマーズ」は故・横山光輝先生の原作「マーズ」を大胆にアレンジした作品で、主人公の超能力者マーズこと明神タケルがTVアニメ史上初となる六体合体のロボット「ゴッドマーズ」に乗り込み、全宇宙の支配を狙うズール皇帝など数々の悪と戦う物語。
特に物語序盤に繰り広げられたタケルと双子の兄であるマーグの骨肉の争いは、多くの人、特に女性ファンの心をわしづかみにしました。
「太陽の牙ダグラム」は地球の植民地として搾取される惑星デロイアで巻き起こった独立運動をテーマに、命がけで戦う若者たちと、政治的謀略渦巻く大人たちの両面から描いた作品。
第1話冒頭に破壊されたダグラムを登場させて主人公たちの敗北を暗示するなど、後に「装甲騎兵ボトムズ方など数々の名作アニメを手掛けた高橋良輔監督の手腕が光る作品。
実のところ、両作品は同じ曜日・時間帯の放送ではありましたが、放送開始日は「ゴッドマーズ」が10月2日、「ダグラム」が23日だったため継続視聴者を最初につかんだ「ゴッドマーズ」が有利だったと思われます。
特に当時はTVが一家に1台の時代だったため、姉や妹がいた男子も「ゴッドマーズ」派になった可能性が高かったのではないでしょうか。
おそらく「ダグラム」側も不利を実感していたのでしょう。
20話以降は放送時間を17:55に早め、「ゴッドマーズ」より早く番組を始めて子供たちを引き付けようとしていました。
対する「ゴッドマーズ」側も1982年4月から放送時間を17:30へと移行しており、激しいつばぜり合いが繰り広げられていたことがうかがえます。
なお、そのような状況ながら両番組とも放送が延長されるほどの人気を獲得し、1980年代前半のロボットアニメがどれほどの存在感を持っていたのかを示しています。
もし最初から放送時間がずれていたら、どうなっていたのかは興味深いところですね。
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裏番組の争いは1970年代から80年代にかけては珍しいものではありませんでしたが、1983年にもアニメの歴史に刻まれる名作が激突した事例が。
それは金曜夕方の「装甲騎兵ボトムズ」と「魔法の天使クリィミーマミ」。
「装甲騎兵ボトムズ」は「ダグラム」同様に高橋良輔監督が手掛けたロボットアニメで、不死の異能を持つ男、キリコ・キュービィが仲間たちとともに送る闘いの日々を描いた作品。
本作に登場するロボット、アーマードトルーパー(以下、AT)は基本的に使い捨ての兵器で、キリコが愛機「スコープドッグ」を次々に乗り捨てていく光景や、ローラーダッシュを用いた斬新な戦闘シーンは、現代のアニメにも大きな影響を与えています。
「魔法の天使クリィミーマミ」は、スタジオぴえろが制作した魔法少女アニメで、当時としては初めて芸能界を舞台としており、主人公の森沢優が魔法の力でクリィミーマミに変身し、アイドルとして活躍する姿を描きました。
優が日常生活を送りつつ、「魔法」という虚構で芸能界のような現実味のある世界を生きる姿は、当時のアイドルブームも相まって、多くの少年少女の心をとらえた傑作として今なお人気の高い作品。
現代では数多く制作されている、アイドルを主人公としたアニメの先駆けでしょう。
両番組には明確な違いがあります。言うまでもなく、「ボトムズ」は男の子向け、「クリィミーマミ」は女の子向けという点。
ではなぜ、裏番組として激突することになったのか。
その理由としては、当時は現代と比較すると一家庭当たりの子供の数が多く、兄弟姉妹同士のチャンネル争いが勃発しやすかった点が挙げられます。
要するに、姉がいる家庭の男の子は「ボトムズ」を見るのが極めて困難で、弟が姉とのチャンネル争いに勝てるわけがないのです。
現代のようにテレビだけでなくパソコンやスマホで配信を見ることができるようになったのは、アニメの社会的な人気につながる大きな要因となってます。
名作は大人になってから見てもやはり面白いものですが、子供のころに見ていたら、どれだけの感動を得られたのか? 今となっては知ることすらできないのは、少々寂しい気がします。