激闘続けた仮面ライダーアマゾンとゼロ大帝、半世紀経て“トモダチ”に…「悲惨な出来事続く今こそ愛を」
アマゾンは1974~75年に24話放送された。南米アマゾンの密林で育った青年が日本に渡り、古代インカ帝国の秘宝を巡って悪の組織と戦う。オオトカゲをモチーフにした姿や、敵にかみつき、切断する荒々しい戦い方は、従来のヒーロー像を一新させた。
岡崎さんは長崎市出身。歌手・水原弘氏の付き人を経て、71年に歌手デビューし、俳優として東映映画「不良番長」シリーズなどに出演した。「アマゾン」では日本語が分からずに来日した孤独な青年を熱演。変身前の捨て身のアクションや、少年・まさひこ(松田洋治さん)と心を通わせていくぼくとつな演技が支持された。
中田さんは、戦前に二枚目の映画俳優として活躍し、戦後は長崎県議を務めた中田弘二氏を父に持ち、妻は東映の第6期ニューフェイスで千葉真一の同期だった新井茂子さん。「名探偵明智小五郎シリーズ 怪人四十面相」(66年)や特撮ヒーロー番組「キャプテンウルトラ」(67年)に主演して脚光を浴び、キャリアを重ねる中で悪役に転向した。彫りの深いマスクと鋭い眼光を持ち味に、時代劇や刑事ドラマへの出演を重ねた。ドラマの第1話やメンバー交代などの主要回に多く登場したのは、悪役としての説得力が抜きんでていたからだ。
「伊豆の崖から落ちたり登ったり」
「スタントマンを使うよりも、役者の顔が見えた方がいい」とスタッフに懇願され、激しいアクションも自らこなした。「伊豆の崖から落ちたり登ったり。カーアクションでは衝突寸前でギリギリかわしたこともありました」
アマゾンでは作品の中盤から登場。ゼロ大帝は西洋風のよろいに仮面をつけた姿で、強烈な統率力と、残忍さを併せ持つ。中田さんは「主人公と相対する悪役は“裏の主役”だと思っています。正義の主役を食うくらいの覚悟で演じてきました」と語る。
アマゾンとゼロ大帝率いるガランダー帝国は毎週、激闘を繰り返したが、意外にも「共演シーンは最終回くらいしか記憶にない」と2人は声をそろえる。
命綱なしにジェットコースターの高い位置に上り、猛スピードで迫るコースターを寸前でかわすなど、ヒーローとして常に体を張った演技を要求された岡崎さん。「朝から晩までずっと過酷なロケが続き、無我夢中だった」と振り返る。対する中田さんは「基本はスタジオ内のアジトで部下に命令ばかりしていました」と苦笑。それでも「悪が強くないと主役が引き立たないので(番組を見る)子どもたちに合わせた演技は一切しなかった」と言い切る。
テレビ、映画・舞台で多忙極めた悪役
大病後の荒木さんから「ヒーローのイベントを一緒にやりたい」と求められ、「少しでも力になれるなら」と応じたところ、会場で世代を超えたファンの熱い思いを肌で感じた。
昭和のライダーたちが活躍する村枝賢一さんの人気漫画「仮面ライダーSPIRITS」を通じてアマゾンを好きになったファンも多く、「みんなの喜ぶ顔を見て、何年たっても色あせない、とてつもない番組に出ていたことに気づかされた。同時にヒーローを演じた責任も感じるようになった」。
「野蛮だけど心は美しい」強烈なインパクトでファンと交流
村枝さんは「見た目は野蛮だけど、心は美しい。従来のライダーは頼もしいヒーローだけど、アマゾンは都会でひとりぼっちで、何の力もないまさひこが助けてあげなければならなかった。強烈なインパクトと、独自の面白さがあった」と指摘。徹交会について、「子どもの頃のあこがれだった岡崎さんに『いい大人になったファンに会ってくれませんか』とお願いして設立しました。岡崎さんへの感謝と、当時熱狂した思いを、童心に返ってみんなで共有する会です」と説明する。
「言葉でなく心で少年と通じ合い、敵だったモグラ獣人を許して仲間にしたことなど、アマゾンには根底に愛があったから、子どもたちの共感を得たのでは」と語る岡崎さん。「立場の違いを超えて分かり合う理想の姿が描かれており、悲惨な出来事が続く今こそ、作品を見て愛を思い出してもらえたら」と力を込める。
中田さんは「子どものうちに勧善懲悪を理解することは大事だと思います。『それを理解してくれたら』と願いつつ、ゼロ大帝を思い切り演じました。50年後もファンがいてくれて本当にありがたい」とほほ笑み、2人そろってアマゾンが示す友情の印「トモダチ」を繰り出してくれた。