先ほど電車の人身事故現場に居合わせてしまいました。

瞬間を目撃したわけじゃ無いんです。
電車が駅に入ってくるのと同時に、バンッという音と、キャー!という女性の驚いた声が響いたので、他の人と同様に僕も音のした方向に目を向けました。
ちょっと遠いのと人がたくさんいたのでわかりづらかったんですが、黒い物体が落ちているのが見えました。あれが人だったかどうかはちょっとわかりません。
電車は僕の位置を少し過ぎた辺りでストップしました。駅の真ん中くらいでした。
僕は人がぶつかったであろう電車の顔部分を見ましたが、血みたいなものは付いていませんでした。車掌さんがとっさにブレーキしたので衝撃も少なかったんだろうと思いました。しかし電車はそのあと洗浄されたようで、水が滴っているのを発見しました。

駅員が現場に集まっていきましたが、何が行われているのかはわかりませんでした。人がたくさんいて見えなかったし、近付いて見に行くのは気が引けました。

程なくして救急車のサイレンが聞こえ、やってきた医者が駅員に「お客さんを外に出せ!」と怒鳴りました。その時僕は自分が邪魔な野次馬だということに気付きました。でも僕は他の人と同様にその場を動きませんでした。事故現場に居合わせているということに興奮を覚え、少しでもその場に残っていたいと思いました。

でも動きが無くなり、振替乗車券の配布が始まると多くの人が立ち去り出しました。彼らは単に、他の移動方法に迷っていただけなのかもしれません。
僕もエスカレーターを降りて改札に向かいましたが、混雑していたのでしばらく待機することにしました。

するとエスカレーターから駅員さんが、人を担いで降りてきました。その人はうめき声をあげ、苦しそうにうなだれていました。
彼らは僕の目の前を通り、去っていきました。
僕は自分が恥ずかしくなり、振替乗車券をもらってその場をあとにしました。