私とコーヒーとの出会いは、缶コーヒーから始まったと言っても過言ではない。

 

もっと幼少期の頃からコーヒーという飲み物があったことはもちろん知ってはいたが、実際にコーヒーを口にするようになったのはあの頃が初めてだったように感じる。

あの頃というのは、思春期真っ只中の中学生の頃である。

街中で見かける、缶コーヒー片手に一服する”オトナ”の大人達に、たまらなくシブさを感じ憧れを胸に抱いたことをよく覚えている。また、あの頃は今よりも、缶コーヒーの”CM”が沢山放送されていたようにも記憶している。街中で缶コーヒーを飲む”オトナ”に憧れを抱くのと同様に、CMで見る俳優にも同様の憧れを抱くようになったのだ。

 

「缶コーヒーをカッコよく飲める男になりたい。」

 

こんな感じで、コーヒーを飲み始めるきっかけが生まれたのであった。

そして、ある日を境に突然、私は缶コーヒーのデザインに見惚れてしまい缶コーヒーの”缶”を収集することになるのであった。

 

自宅の食器棚に陳列、保管しているコーヒーの空き缶。こちらの写真はほんの一部で、正確に数えてはいないが総数で200本程となりそうだ。

 

 

さて、そんなわけで今回は、憧れから始まった缶コーヒーであったが実際には、コーヒーの味ではなくて缶の”デザイン”に興味を持ってしまったお話の始まりである。

 

そして今回、第一話は一番最初に収集した缶コーヒーの缶を紹介したいと思う。

200数本収集した缶コーヒーではあるが、一番最初に収集した缶ははっきりと覚えている。この缶のデザインが、すべての始まりなのであった。

アサヒ スーパーJ.O.トウキョウシティブレンド   1994年   CMには泉谷しげるが出演し、名台詞「東京って、甘くねぇよなっ。甘くねぇよなっ。」を力強くコメントした。

 

 

私の缶コーヒーの収集方法をここでご紹介したいと思う。

中学3年生の頃より始めた缶コーヒー収集は基本、自動販売機での購入であった。これが非常に大変だったのである。何が大変かというと、”ガコンッ”と落ちてくる際なのか、運搬中なのかわからないが、ヘコんだりしたキズ物が出てくることがたまにあるのである。保存するにはやっぱりキレイな缶に拘りを持っていたので、キズ物が出てしまったときはもう一本買う時もあった。

ならば店頭で買えばいいじゃないか、とふつうは思うだろうが…、当時の私の近所にはコンビニなんてなかったし、中学生の自分が缶コーヒーを一本だけ買いにスーパーや酒屋へ行くという行為自体が、思春期の私にはなんか”こそばゆくて”恥ずかしくて出来なかった。”オトナ”の第一歩が踏み出せない何とも言えない時期の思い出である。

 

 

さて、やっとこそさ手に入れた無傷の缶コーヒーは、その場では飲まずに自宅へ持ち帰る。そして、プルタブからは飲まずに上下逆さにし、底に小さな穴をあけて“チューチュー“吸うのである。

こちらがその写真である。

中学3年生の美術の授業で使用するために購入した、”ニードル”という千枚通しに似た道具で底に穴をあけていた。賞味期限は”19941017"、1994年10月17日と記されている。

 

 

それにしても、なぜ私がここまで完璧に近い形で缶コーヒーの缶を収集しようと思ったのか?

それはもうとにかく、このデザインである。飲み物であるコーヒーの味を、この小さな缶にデザインで表し伝えなければいけないのである。試しに飲んでみればもちろん良いのだが、それにしたってきっかけが必要である。様々な味覚を持った人達にまず訴えかけるのが、この缶のデザインとなる。この缶コーヒー特有のショート缶表面積を使い、如何に味を伝えるかが勝負となっているのだ。ましてや、自動販売機では表面しか見ることができないので、これは本当に顔が勝負のデザイン合戦場である。だからこそ、私は試行錯誤して作り上げた缶コーヒーのデザインに惚れてしまったのだろう。

そして、デザインと味のマッチングにコーヒーへの愛が生まれていったのかもしれない。

 

今から28年前の出来事から始まった、缶コーヒー収集。今後もご紹介していきたいと思う。