二輪中型免許を取得した私が最初に乗ったバイクは、”カワサキ ゼファー400”だった。ネイキッドタイプのバイクが昔から好きで、エンジンの姿形が見えてライトは丸形、二人乗り用のタンデムシートにリアショックは二本が好きだった。そんな思いから、最初に選んだバイクはゼファーとなったわけだ。最高速とかゼロヨンタイムとかは、私の選択肢の中でさほど重要視される事柄ではなかった。

 

私の製品への導入のきっかけは”性能”よりも”外観“となることがほとんどだ。いや、ほぼきっかけは”外観”が優先となっている。ただ、”外観”から見える開発目的やターゲットは、何となく人の心に十分伝わってくるものであると感じている。そして、時には例外ということもあるがその例外がまた面白いのであって、それを批判対象とすることは残念で愚かな行為だと私は考える。もし、”外観”から感じることができないのなら、調べて研究してみることにしている。それでも解らなければ、直接教えてもらうことに行動を移す。そう、実際にその製品に教わるのだ。自身で体験し、その”外観”の性能や目的を体感する。

 

ゼファーに乗りいろいろ走り回った。思い出もたくさんできた。私が感じた”外観”通りの性能で、エンジンや吸排気系はノーマルのままなので決して速くはなかった。だが、だがである。速く走っている感じは、ライダーである私に十分伝わってきた。向かい風というよりも、不思議だが常に追い風を体感できるバイクだった。

 

しかし、そんなゼファーと走りに出掛けたある日、突然に出会ってしまったのである。CB750Fの”外観”に。

立ち寄った公衆トイレの駐車場で、用を済ませた私がトイレから出ると、ゼファーの隣にCB750Fが並んでいた。明らかにゼファーよりでかい。細く長いガソリンタンクから横方向にはみ出している空冷エンジン。幅が広く段差がない大きいシート。リアタイヤはゼファーと同じ18インチだが細い、だが細いのだがTT100GPのタイヤパターンが武骨で溝が深く存在感が強い。戦闘機みたいな十字の線が入ったスピードメーターとタコメーターには、走り出していないのにスピード感が伝わってきた。そして、何よりも衝撃を受けたのがフロント周りだった。ゼファーのフロント17インチに対してCB750Fは19インチでやはり細く圧倒的な存在感が伝わってきた。細くシュッとしていたフロントフォークのインナーチューブがスリムで、いわゆる蝶ネクタイを締めているように並んだ2個のホーンと左右のウインカーが紳士的に見えた。

 

この衝撃なCB750Fとの出会いから、本屋や古本屋を駆けずり回り書物を読みあさった。それだけでは埒があかず、行きつけのバイク屋の主人にCB750Fについてさんざん話を聞いた。そして、主人もあまりの私のしつこさに「今は底値だし、もともと良いバイクなんだからとりあえず乗ってみたらいいよ。」と、すすめてくれた。

決心した私は大型二輪免許を取得する為に教習所へ通い、CB750Fはバイク屋の主人にお願いして業者オークションで仕入れてもらう段取りを組んだ。そして、それから半年後ゼファーを下取りにこちらの写真のCB750FBを25万円で購入することになった。

 

当時の写真が残っていたので、写真をカメラで撮りアップしてみた。

1981年式  ホンダ  CB750FB   空冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒748.7cc   最高出力51.5kw(70PS)/9000rpm   最大トルク58.8N・m(6.0kgf・m)/7500rpm

 

それまで全く知識の無かった日本のバイクの歴史について、このCB750FBを通じて学ぶきっかけを手に入れた。ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ、この4台バイクメーカーが1969年の衝撃的な「CB750FOUR」「ナナハン」の誕生により、各社様々な戦略を企画していった。私はどんどんと、CB750FBより前の1970年の時代にのめり込んでいくわけだ。

 

行きつけのバイク屋で、納車日の写真。

 

 

さて、CB750FBは実に優越感に浸れるバイクだった。そして何より私は、フロント19インチの乗り味から安心感を得てしまうのである。ハンドルは純正のセパレートタイプハンドルだがそこまで前傾姿勢にはならない、だが身長170cmの私には少し遠く感じた。しかし、フロントがリアより少し上がっている車体姿勢は、重心がリア寄りになりちょこっと猫背で乗るとアスファルトからの恐怖心を取り除いてくれた。峠道では脇を絞りリア重視で自然とガニ股になる姿勢が好きになった。腰高な重心感が腰回りに伝わり、コーナーではケツでリアタイヤを押し込んで回る感じだ。

 

全長×全幅×全高 2190×795×1125mm    タイヤサイズ 前3.25H19 後4.00H18

 

 

さて、このCB750FBをきっかけにFBよりちょっと前の1970年代のバイク史にのめり込んでいくわけだが…。そう、私は原点回帰の方向に進み私のバイク感が、金属とオイルの匂いにあふれていたそのころのバイクに漂着していくのであった。

結局、このCB750FBは6年後に「カワサキ 650RS-W3」の下取りとなってしまうわけだが、この先の続きについてはまた今度記事にしたいと思う。

 

ホイールベース 1515mm    シート高 805mm    乾燥車両重量 227kg   燃料タンク容量 20L