しおり博覧会 Bookmark Exposition

しおり博覧会 Bookmark Exposition

コレクションのしおりを紹介

 ようやく、新型コロナウイルス感染の収束が見えてきたようです。我々にとっては初めての体験に感じ

られるのですが、歴史をひも解くと、天然痘やコレラ、スペイン風邪など、現在と似たような疫病の大流

行が幾度と見られてきました。

  上の栞は、「赤痢予防は清掃から」と題打たれた栞の表面と裏面です。発行者は不明。左の表面を見

ると、「こんなことは手おくれ うじをわかさすように」との標語とハエトリタタキをもって蠅退治をするネコ

が描かれています。「うじ」とはもちろんハエの幼虫ですが、衛生環境の改善により、今ではほとんど見

かけなくなり、ウジもボウフラも、そして挿絵に見るハエタタキも知らない世代が多くなりました。

 赤痢は明治30年代に全国的に大流行し、当時の総患者数は9万人、死者は2千人を超えるという状

況で、人口数が現在と比べるとかなり少ないことを考えると、現在の新型コロナ感染をはるかに上回る

大流行であったことがうかがえます。

 裏面を見ると、現在と全く同じように手洗いが推奨されています。手の洗い方により、赤痢菌の減少が

5段階で表示されています。黒い丸はシャーレの中の赤痢菌をコロニー(菌集落)の数が模式的に表さ

れており、これから考えると、保健所が出したものではないかと推察します。赤痢の流行は昭和20年代

にもありましたが、1960年代半ばから急速に減少しました。このことから、上の栞は昭和20年代から30

年代にかけてのものと思われます。

 手洗いや、ハエトリの奨励など、出来る限りの衛生環境の改善努力は、現在と全く同じですね。ちなみ

に私の幼少期の風景には、魚屋さんなどにぶら下げられた「天井吊り下げ型ハエトリ紙」や、食卓の上

に置かれた「蠅帳(はいちょう)」などが現れてきます。蝿帳は、現在でもキッチンパラソルとか卓上かや

として、わずかに生き残っています。どちらも昭和のドラマでは時々見かけるアイテムですが、現在で

はほとんどの人が知らない暮らしの道具になっています。

 1枚のしおりからいろいろなことが思い起こされます。人類とウイルスや細菌との戦いはなくなるという

ことはなくこれからも続くのでしょうね。