論文も無事に終わり,
完全に私は時間をもてあました.


「何をして過ごしたらいいのかわからない...」


それが素直な感想だった.




幸人に会うまで
私は何をして暮らしていたんだろう?






今日も,もしかしたら会えるかもしれない.
そうやっぱり期待して,
街を歩く.





すれ違ってもいいように
悲しくなるぐらいおしゃれをして...




どこを歩いても思い出がよぎる.





ここで初めて会ったんだとか,


ここで見た幸人の横顔素敵だったな...



とか.全部幸人がその風景の中にいる..


ちょくちょく顔を合わせる大地君はいつも

「樹里ちゃん♪」
そう言ってくれる.
大地君の笑顔はかわいい.



「別れたんだってね.」


「うん.」




「そっか,
でも,幸人とジュリアの間には
無駄なことなんてなかっただろうし,
気持ちは本物だっただろうしね.
次の候補に俺入れてね(笑)」




笑っていたけど,
涙が出そうだった.


サングラスをかけていて良かった....




でもどうして,大地君がジュリアって言ったんだろう?
聞きマチガイかな?

そう思っていたら質問するタイミングを逃して
また,遊ぼうって話して別れた.




それからしばらく歩いて
マッキーの店の近くを通った時,



「樹里ちゃん!!」
そう,呼び止められた.

「マッキー!!
久しぶりだね.」


「ちょっと,待ってて.
渡したいものあるから.」



この人は,幸人と会えるんだ.
その事実だけで,マッキーになりたかった.



しばらくして戻ってきたマッキーが手にしていたものは
1枚のディスクだった.




「これ,きっと,
店にじゃなくって
樹里ちゃんに渡したかったものだから.」




「ありがと.」




「近いうちにまた飲みにおいでよ.」


そう言われて別れた.
マッキーも何か言いたそうな顔をしてたけれど,
私もこれ以上話したら泣きそうだったから
笑顔のうちに別れた.











家について,


勇気がずっと出なくて.


かじかむ手を握り締めすぎて
つめが手のひらに痛かった.



やっと決意して
震える手でCDの再生ボタンを押した.








・・・流れてきたのは
導楽のStill In Love




会えないときほど会いたくなるよ
思い出すよ今でも君の笑顔
これからもこの先もまだずっと
続くと思っていたけれど

気が付けばいつも俺のそばに
巡り会えたのは君ひとり
くだらないことでけんかしたり
俺のわがままにも付き合ってくれたり
でも遊びに行くのはいつも友達って
傷つけちまうこともあったし

会えないときほど会いたくなるよ
もうやめとくよ君に頼る事
これからは自分でやるよ
きっともっと強くなるよ

会いたくてももう会わないよ
自分のため君のため全てのためにいつか
友達になれるその日まで
互いの道を進んでいくだけ











そのケースを抱きしめて,
大声をあげて泣いた.


それはもう,叫びに近かった.










本当に,
愛してた.

私自身が
こんなに壊れてしまうほどに...







何より,
この曲の歌詞が,
幸人の想いが,
胸に痛すぎた.






今ならわかるよ.


「待っててね.
待っててね..
いい子にしててね...」

って言った幸人の優しい声も




「お前,まだ
大学生とつるんでんの?」
って言われた時の
何も言わなかった気まずい苦笑いも




幸人の友達と
私が違うルートで知り合いだった時の
気にしてない素振りも,




仕事をやめて,
私に伝わった時の
困った笑顔も.




「一緒に実家に戻る??」
って聞いたとき,
酔ってるふりして,
本気だったことも.















不安,だったんだよね?


















それを,私は
自分の方が好きって,
不安って思い込んで,


学校もなんでもうまく行ってるふりして,
幸人がいなくても,やっていけるって,
オトコ友達だってたくさんいるんだって,
それで自分の安定を図ろうとした.
幸人の興味を引こうとした.











「一緒にいようか?」
って言ってくれた笑顔も,






いたずらして,
怒った私に
笑いをこらえながら謝る顔も.





「大丈夫?」
って私の事を心配してくれる顔も.




「いってらっしゃい.」
って眠い目をこすりながら送ってくれる顔も.




「樹里ちゃん,樹里ちゃん.」
って幸人の友達がかわいがってくれるのを
ちょっと自慢げに見守る顔も.


広い背中も
長いまつげも,
ヒゲも,
クセのある長い髪も
人をまっすぐ見つめる
綺麗な瞳も.













全部,全部







大好きだよ








って
その時言ってあげればよかった.







仕事もうまく行かなくなって,
音楽さえ,よりそえなくなったあなたに,
私の気持ちだけで,
責めたてた.





今なら,


わかることばっかりなのに...






でも,もう,
一人で進もうと決めたあなたには







伝える手段が
私にはないんだ....







だから
毎日,眠る前,
本当は眠れないけど,




幸人が本当に進みたい道に
すすめますように.



幸人を音楽が癒してくれますように.




もし,幸人が結婚したいって思う子がいたら
ちゃんとそのこと向き合えますように.



そして,
できることなら.
できればでいいです.


もう一度,
会わせてください.


笑顔で,
「樹里ちゃん,ジュリア~」
って名前を呼ばれたいです.



そんな願いをし続けて
朝を待ってる.




今の私に,
できることは,
そんなことしか
残されてないから.