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ネタバレしてない。はずです。


日本で先の戦争と言えば第二次世界大戦のことで、それは七十余年戦争のない時代が続いているということだから、幸せなことなのだ。

ということを山田洋次監督が仰っていた。


どうしても、体験していないから遠い話に感じてしまうところがあって、それじゃいけないと思うからできる限り読んだり観たりすると決めている。


このアニメは、かっこいい戦闘シーンがあるわけじゃない。

主人公は英雄じゃない。

声高に戦争反対って連呼してるわけじゃない。


主人公は、絵を描くことが大好きで、ぼーっとしていておっちょこちょいな、女の子。


すずは、全然わがまま言わないし、すれてなくて皮肉を言われても気付かない。

よく気がつく人からすると、イライラするかもしれないくらい。


生活の中で、多くの人があたりまえと思ってしまいがちな、ささやかな幸福を大事にしている女性なんです。


たったひとつ、たいせつがあれば、それで全部って思える人なんです。



戦時中だけど、女の子だからこんなこと思ってたかな、とか、もしかしたらばあちゃんもこんな風に…とか。


あの時、戦地に行ったお父さんも、無事を祈るお母さんも、お腹を空かせた子どもも、世の中の流れのまま毎日生きることに精一杯で。


生きていれば、可笑しくて笑うことだってある。


そう、戦時中だからずっと暗くて泣いているわけではなくて、そっか、こんな風にやっぱり普通に暮らしていたんだよなって。


遠くの、昔の、特別な一部の人の物語じゃないんだなって。


ここに描かれているのは、あなただけど私。



途中から最後までずっと涙が堪え切れなくて、悲しいんだけど愛おしい気持ちも同じくらいあって、もうずっとずっと、すず始めみんなを抱きしめたかった。


戦争ものっていう分類にはなるけど、今まで観たどれとも違う。


人の居場所は、誰かの胸の中にあるんだって思わせてくれた大事な作品。


この作品を生み出した全ての人に感謝している。


あの戦争を生き抜いた人に、生きていてよかったと思える瞬間がひとつ、ありますように。