久しぶりに聞いた声は柔らかく、相変わらず独特の響きを持つ。

とと姉ちゃんのオープニングは、朝8時の老若男女に耳馴染みよく届いただろう。

サビ前の、青い花にふぅーと息を吹きかける常子。

見れば見るほど常子の人生と相まって感情移入して、続けて聞いてもなぜかいつも新鮮に聞けた。



真夏の通り雨。

誰が聞いてもお母さんへの歌と捉えるだろう。
美しい大和言葉と、静かでいて重厚感あるピアノ。



アルバムタイトルは、フランス語で気配などの意味があるらしい。
全体から伝わる、きっと生涯彼女に寄り添うであろう、母の影。

誰もが通る道ではあるけれど、あまりに早過ぎた。



だけど、失ったものばかりではない。

自らが母親になったことで、睡眠時間やおしゃれや一人の時間の代わりに得たものは、かけがえのない宝物だろうと強く思う。


母を亡くし、母になり、命をつなぐ。

わずかな期間で起こったことが、人生観や生み出すものに影響しないはずはなく、今回の作品は日本中が待望していたと言っても過言ではないはず。


なぜだろう。こんなにも痛々しく溢れ出ているのに、悲壮感がなく、だから下手な同情が起きなくて、いわゆる色眼鏡がかからない。

純粋に 音楽 を受け取った、そんな気分。


最初の曲、道、で一番お母さんに言いたいことが綴られているのかな、と感じる。


私の心の中にあなたがいる
いつ如何なる時も
一人で歩いたつもりの道でも
始まりはあなただった


物理的に会えなくても、きっと一番近いところにいるのだろう。
娘の心の中に。
子育て中だし、今がもしかしたら最も母を必要としているかもしれないけど、彼女は悩んでもがいて、それでもひかりを見いだして歩み続けると信じている。

最強の味方が出来たしね。


学術優秀、多言語を理解出来て、感受性も豊か。
経済的にも成功しすぎているけど、彼女はきっと自然体で過ごしたい女性です。

常子が求めたささやかな幸せを、毎日大事に暮らしてゆける女性で、母です。