終わらざる夏/浅田次郎
集英社文庫で上・中・下巻
戦後70年の節目の年。
東京大空襲や広島・長崎への原爆投下。特攻隊のこと、人間魚雷回天…
硫黄島、レイテ島、満州、シベリア抑留…
日本内外での戦闘の記録や傷跡は、色んな書物や映像があるけど、この本で初めて知ったのは、占守(シュムシュ)島。
巻頭に地図が載ってるけど、読みながらえーとって何度かその地図を見返して確認したほどに、私の人生に馴染みのない場所だった。
1945年8月15日正午の玉音放送。
無条件降伏から3日経過した日本に、戦闘を仕掛けてきたある国。
その日に至るまでの経緯が、登場人物それぞれの背景の細やかな描写からドキュメントのように綴られている。
フィクションだけど、限りなくノンフィクションじゃないか。
日本に生まれる。
今、世界的に見てこれほど幸運なこともないんじゃないかと思う。
生まれても5才まで生きる可能性が低いとか、よもや空爆がとか、粛清とか、そういう意味では。
だけど、それは何の苦労もなくもたらされた偶然ではなく、奇跡の賜物なのだと思い知る。
二度と、戦争をしない。
ずっと、戦後と言えるように。
先日の天皇・皇后両陛下のペリリュー島訪問。
英霊への慰めと、並々ならぬ決意表明だと感じた。
まだまだ、知らないことが多すぎる。
知らなければならない悲しみが多すぎる。
国のために死ぬことが、この上ない誉れと教え込まれたあの時代の若者を、知って、忘れないこと。
二度も死なせてはいけない。
生きて帰ってきた人にも、それぞれの苦悩と無念があること。
過去の過ちは消せないけど、人間は過去から学ぶことが出来るはず。
豆タンクや、大屋准尉や、鬼熊軍曹、片岡二等兵が、死ぬことの意味を教えてくれるから、本当に生きることの意味を、必死で考えて見つけなければ。
平和をかみしめて、生きていく。
カムイ、ウンクレ(神、我らを造りたもう)。