原作を読んだのは5年は前。

こんな人がいるのかと心から驚嘆した。

まず著者の山崎豊子先生。

関係者の証言に基づく事実を作品にしているわけだが、読み始めて数ページで再度「女性だよな?」と確認のため表紙と著者紹介欄を見た。

女性だから柔らかい文章と決めつけはできないけど、サバンナの匂いと象の息遣いが濃密に、三次元的に体感されてしまい、ひるんだほどの力強い筆致。

主人公・恩地元(おんちはじめ)の置かされる境遇は、窮地極まりなく、過去の出来事として見てもこちらが絶望してしまうよう。

さらにこの恩地その人は、作中で名前こそ変えられてはいるが、実在の人物がモデルであって、ゆえに描かれることはすべて脚色なしの「事実」。

尾巣鷹山に墜落した日航123便の航空史上最悪の事故は、有名すぎる事実。

作中では国民航空となってはいるが…

この原作が映画化された時、3時間強にはまとめられないだろうと全く観る気がしなかった。

幸いにもWOWOWで先日放送されたので観た。

テレビ画面でいいや、と。

思っていたのは間違いだった。

これほど丹念に、原作の意図に根幹が忠実に、人間の尊厳への問いを織り込んでいたとは。

静かに確かに語りかけられる問いに、応えていくのは残された者の使命。

受け止めること

について考えさせられる。