えっと、読んで吐かないようご注意です駄作ですすいません。。。できれば感想をくれるとありがたいです。
題:優しい嘘。
病室の隅に、いつも立っている女の子。
彼女は生きてない、此処に居ちゃいけない人間。
俺しか見えないみたいで、他の連中は呑気に過ごしている。
でも、俺はそのコのこと見えるけど、さわれない。
多分このコは、地縛霊、ってやつ。
この病室にとりついた、幽霊。
その子は俺をじっと見つめて、たまににこっ、って笑う。
案外かわいいんだ。
髪は肩にかかるくらいで切り揃えてあって、一般的なパジャマを纏っている。
『ねぇ。』
「ん?」
その子がいきなり話しかけてきた。
『そろそろ名前、教えてあげようか?』
「うん。」
俺の隣で立ち膝して、そっと囁く。
『チエ。』
確かにそう聞こえた。
「俺はね、」
『雄、でしょ? 知ってるよ私はー。私雄大好きだもん。嘘つかないとことか。あっ!優しい嘘なら許せるんだけどね!』
「あぁマジで?」
もし彼女が、チエが生きていて、俺の隣に居たならば、本当のカップルのように見えただろう。
でも現在の俺は、ただ独り言を言っているようにしか見えないだろう。
「ねぇ、チエ。なんで死んだの?」
『ズバッと聞くんだね。』
「まぁ…ここは病院だし、だいたい想像つくけども。」
『…そう…だね。そーゆーふうに考えるのが妥当だよね。』
チエは下を向いて笑った。
「違うの?」
チエは俺の問いに答えず、俺のベッドの上に座った。
『私、生きてるときに雄と出逢いたかったなぁ。』
そんなことを言って、恋人はいるのかとたずねてくる。
「いないよ。こんなんだし。」
俺は昔から病弱で、入院と退院を繰り返していた。
こんなに呑気に喋っているが、これでも俺、末期だから。
もうすぐ多分、死ぬから。
本当だったら、技術が進歩しているから、治る確率の方が高い。
でも俺の場合は、発見が遅すぎた。もう手遅れらしい。
治る確率は、一割にも満たない、って。
俺は別にね、死んでもいいからさ、いいんだよね。チエと同じ場所に立てるし。
「雄君、明日、なんだけど。」
看護婦が静かに病室に入り込んでくる。
「あぁ…大丈夫。ちゃんと出来ます。」
手術の話だ。
なんで手術前日なのに、両親がいないかというと、俺に関心がないからだ。
昔から、いや、昔は可愛がられていたかもしれない。
でも、いつからか、病弱な俺が邪魔だとも言うように、俺から離れていった。
…邪魔ならば、最初から産まないでくれればこっちも楽だったよ母さん。俺は自分から病弱に産まれたかったわけじゃない。あんたの責任じゃないか。
当然、病院には滅多に来ない。
それどころか、俺が入院している間に引っ越して、手紙すら送れない。
俺もそんな親に次第に呆れて、どうでもよくなっていった。
「…本当に大丈夫?」
「うん、大丈夫。」
「…そっか…。頑張ろうね!」
看護婦は出ていった。
演技はもうちょっとうまくやるもんだぜご婦人。
あんた、もし手術が成功しても、この先俺が死ぬことに代わりはないの、わかってんだろ。
その顔は…そうだよ。
『…私、あの人、嫌い。』
「え?」
『嫌い。大嫌い。スゴく嫌い。あんなヤツと喋んないで。』
チエは俺の服の袖を掴み、揺する動作をする。実際には出来ていない。
「チエが…生きてるときから、居たの?」
チエは黙って俺の目を見つめていた。
「さっきから…言ってくんないとわかんないよチエ。」
『…私、アイツに殺されたの。』
「…え?」
信じ難い言葉がチエから飛び出した。
「…なんで?」
『…かつて、アイツは、医者と付き合ってた。
その医者は、なぜか、私のこと可愛がってくれてね? ある日、告白されちゃったの。
確かに若い医者だったよ…?でも、そんな気全然なかったから断った。
当然だよね。私はただの患者だし。』
チエは泣きそうになりながら、話した。悲劇を。
『私は、断ったのに…勝手に、って言ったらあれだけど…勝手に好きになられて、告白されたのに、看護婦に恨まれて、この病室の、そこの窓から…突き落とされた。』
チエは窓を見ずに指差した。
『私は自殺とみなされた。
違うって訴えてもさ、私の声が聞こえる人なんて、いなかった。』
「…チエ…。」
『だから私は、アイツが嫌い。
頑張れば生きれたのに、アイツは私の人生を奪ったの。本当だったら、私だって恋したり部活したりしてたのに。アイツはそれを奪ったの。
そんなやつ…好きになれるはず、ないよね?』
俺は頷いた。
さわれないけど、チエの肩を抱くフリをした。
「仇…討ってあげよっか?」
『…へ?』
俺の声は、びっくりするほど冷たかった。
『…やめてよ。そんなことしてもなにもならない。なにも解決しない。』
「ホントにそう思ってる?チエ。」
『雄、なに言ってるの?』
「俺だったら、俺がチエだったら、って、俺なりに考えた。
アイツに人生終わらせられて、でも、自分もアイツの人生をめちゃくちゃにしてしまったわけじゃん。
たとえ、自分が悪くないとしても。
だからさ、俺は、お前の力になりたい。
お前の本心って、言葉に出来ないものがあると思うから。
だから…やるよ。俺は。」
『やめてよ…お願いだから。お願いだから…。』
チエは必死に俺を引き留めようとした。でも、結局彼女は幽霊。俺に触ることなんて出来ない。
俺は重い体を引きずって、あの看護婦を見つけ出して屋上まで連れてきた。
「…雄君?どうしたの?」
ちょっと期待してるような話しぶりだ。
「俺、大事な話があるんだ。」
「…なに?」
「看護婦さんに死んでほしいんだけど。」
そう言って突き飛ばそうとする。
けど、足が滑って、俺まで落下していった。
ほんの数十センチしか違わなかったのに、看護婦は木がクッション代わりになったらしく、死にはしなかった。
一方俺の方は、見事にコンクリートに激突して、見るも無惨な死体に早変わりした。
もはやそれは、人のかたちをしてはいなかった。
ただの肉塊。
血が吹き飛んで、脳ミソとか飛び散って、ホント、酷い。
でも俺は、嬉しかった。
これでチエと同じ場所に立てるし。
看護婦は死ななかったけど、一生治らない後遺症ができて、晴れて障害者の仲間入り。
木の枝で負った顔の深い傷のおかげで、誰からも愛されることはない。
復讐は、完了したんだ。
でもなんか、後味が悪い。
なんなんだろう。この感じは。
『…ごめんね雄。』
目の前には、チエが立ってた。
『チエ。』
俺はチエを抱き締めた。
やっと、さわれた。
ジャラ、と、嫌な音がした。
俺の足には枷がついてて、その先には長い長い鎖が繋がっている。
『…あぁ…。』
なんとなく、理解は出来てたんだ。
もう、お別れ、なんだね。せっかく隣に立てたのに。
『行かないで…やだよ…ねぇ…雄…行かないで…』
俺の後ろには、漆黒のマントを纏った死神がいる。
俺は罪をおかした。
だから、往くべきとこへ、往かなきゃならない。
『チエ…ありがとう。今まで、ありがとう。』
『ねぇ…雄?雄!ねぇ!』
そんな泣くなよ…
ただ、会えなくなるだけだろ?
『雄…。』
チエは泣き崩れた。
『地縛霊なんか、勿体ないよ。』
『え…?』
『俺の中にチエはいて、チエの中に俺がいるだろ?いつでも会える。病院じゃなくても、会える。』
『…うん。うん…』
チエは笑ってくれた。優しく笑ってくれた。
『その笑顔、好き。大好き。 じゃあ、またね…。』
俺は真っ暗闇の中に連れていかれた。
もう二度と会えないなんてわかってたけど、最後くらい、嘘をつきたかった…
''私雄大好きだもん。嘘つかないとことか。あっ!優しい嘘なら許せるんだけどね!''
親愛なるチエ…
俺は優しい嘘をつけていましたか?